大会・イベントの開催権(ライセンス)契約:許諾の範囲、変更権の限度、終了後の使用停止

開催権の契約は、本部の名称やルールを使って開催者が自分の責任で大会を開く許諾の契約です。何を貸すか、どこまで貸すか、貸した側がどこまで変えられるかを、先に書きます。

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「マニュアルの改訂に異議を述べない」と書いても、費用や負担が一方的に変えられる契約は、優越的地位の濫用の面で説明が難しくなります。

このページの要点

  • 許諾の対象を名称・ルール・素材・対象素材の条件・データの五つに分け、非独占・譲渡不能・転貸禁止を条文にする(商標法31条、著作権法63条)。
  • 地域・期間・開催の回数・更新の通知期限は一枚の表にして、数字のずれを確かめる。回数が未達のときの効果も書く。
  • 本部の変更権は性質で分ける。運営ルールは広く、金銭の条件や景品の水準は事前通知と解約権つきにする(独占禁止法2条9項5号)。
  • 終了後は、使用の停止の期限、アカウントの扱い、成績と名簿の帰属を決める。目的の条を許諾の構造に合わせ、受託と読めないようにする。

結論:開催権の契約は「何を貸すか」「どこまで貸すか」「貸した側がどこまで変えられるか」の三つを先に書く

大会やイベントの名称、運営のルール、告知の素材、運営のやり方を持つ側(このページでは「本部」と呼びます)が、各地の店舗・教室・団体(同じく「開催者」)に、自分たちの大会を開くことを認める。ここで結ばれる契約の中心は、大会を開く権利の許諾です。本部が許すのは名称やルールなどの使用であり、開催者は自分の会場と自分の費用で大会を開いて、見返りに開催の対価を払います。会場を借りる契約でも、運営を頼む契約でもなく、「本部のものを使って、開催者が自分の責任で開く」という構造を、契約書の冒頭から末尾まで一貫して書けているかが出来を分けます。

書く順番は三つです。第一に、許諾する対象の棚卸し。名称、ルールブック、素材、ノウハウ、それに本部自身が上位の権利者から借りているものを、種類ごとに分けて書きます。第二に、許諾の範囲。地域、期間、開催の回数、非独占か独占か、他人に使わせてよいか。第三に、本部が後から変えられる範囲と、開催者が抜けられる場面です。大会の運営は市場の変化やルールの更新に合わせて直す必要があるため、本部に一定の裁量を残すのは自然です。しかし、費用もルールも景品の内容も本部が一方的に変えられ、開催者は異議を述べられないという書き方になると、契約の釣り合いが崩れ、独占禁止法の面でも説明が難しくなります。

参加者に向けた規約(参加資格、処分、映像の許諾、賞品の線引き)は、ゲーム・カード大会の大会規約のページと発表会・大会の参加規約のページで扱っています。このページは、本部と開催者という事業者どうしの契約に限ります。運営を人に任せる契約はイベント運営の業務委託のページ、教室の技術と名称を支部に使わせる契約は講師・スタッフとの契約のページ、催しの場所を出展者に貸す契約は出展規約のページで扱うので、ここでは境目だけを確かめます。

開催権の契約と、近い契約の違い
契約大会(催し)を開く責任者お金の主な流れ中心になる論点
開催権の許諾(このページ)開催者。自分の会場・費用・責任で開く開催者が本部へ開催の対価を払う。参加費は開催者の収益になる設計が多い許諾の範囲、開催の回数、本部の変更権、終了後の使用停止
運営の業務委託主催者。運営会社は事務を引き受ける主催者が運営会社へ報酬を払う業務の範囲、準委任か請負か、中止時の精算、個人情報の委託
出展・場所の貸借主催者。出展者は場所と機会を借りる出展者が主催者へ出展料を払う出展料の取消し、中止時の返還、事故の分担
教室の技術・名称の使用許諾支部の運営者。教室の技術と名称を使う支部が教室へ支部費を納める技術の水準、監査、更新、退会後の表示の停止

開催権の契約は、表向きは許諾でも、条文の端々に「運営を任せる」「業務を受託する」という言い回しが混じると、性質が読み取れなくなります。目的の条と定義の条で、どちらの契約なのかを先に決めます。

権利の棚卸し:許諾するものを層に分けて、それぞれの形で書く

開催権という一つの言葉の中には、性質の違う権利がいくつも入っています。「大会を開催する権利を付与する」と一行で書くと、どこまでが許諾なのか、何が許諾の外なのかが読み取れません。許諾の対象を層に分け、層ごとに書き方を変えます。

本部が許諾する対象を、五つの層に分ける

  1. 名称とロゴ(大会の名前)大会の名称、略称、ロゴマーク。登録商標であれば、商標権者は指定商品・指定役務について登録商標の使用をする権利を専有し(商標法25条)、他人に通常使用権を許諾できます(同法31条1項)。登録がない名称は、商標権に基づく請求の土台がなく、契約で決めたことだけが頼りになります。書くこと使える場面(告知、店頭、SNS、会場の掲示)、表示のしかた(改変の禁止、定められた表記)、使ってはならない場面、登録の有無と範囲の確認。
  2. ルールブックとマニュアル(文書)大会の進行、判定の基準、トラブルの対応手順をまとめた文書。文章としての著作物であると同時に、本部のノウハウそのものです。著作権者は他人に著作物の利用を許諾でき、許諾を得た者はその利用方法と条件の範囲で利用できます(著作権法63条1項、2項)。書くこと複製・転載・SNSへの掲載の禁止、運営に関わる者以外への開示の禁止、改訂版を受け取ったときの旧版の扱い、秘密情報としての管理。
  3. 告知の素材(ポスター、画像、文例)本部が作って提供する素材。開催者が自分で作る告知物にも、本部の名称やロゴが入ります。書くこと提供素材の使い方、開催者が自作する告知物は事前に本部が確認すること、開催者が加えた部分の権利の扱い。
  4. 大会の対象になる素材(遊戯・競技・コンテンツ)大会で競う遊戯や競技、使うコンテンツについて、その権利者が大会の開催条件を定めていることがあります。本部自身も権利者から許しを受けて開いている場合、その条件が開催者にも及びます。書くこと権利者の条件を開催者にも守らせること、条件が変わったときの扱い、権利者の許しが終わったときに契約も連動して終わること。
  5. 運営のノウハウとデータ(成績、順位、参加者の名簿)本部が蓄積した運営のやり方、各地の大会の成績、ランキング、参加者の情報。個人情報が含まれれば、取得した者の利用目的の範囲に収める必要があります(個人情報保護法17条、18条)。書くこと誰が取得し、誰が管理するか、本部へ渡す場合の本人への説明、契約終了後の扱い。

五つの層のうち、一つでも書き漏らすと、終了後に「何を止めるのか」が決められません。

非独占・譲渡不能・転貸の禁止は、どの層にも共通する基本の三点です。同じ地域で複数の開催者に認める余地を本部が残すのが「非独占」、開催者が許諾された地位を他人に移せないのが「譲渡不能」、開催者が自分の許諾をさらに別の人へ与えられないのが「転貸の禁止」です。通常使用権は商標権者(専用使用権についての通常使用権では、商標権者と専用使用権者)の承諾を得た場合などに限り移転でき(商標法31条3項)、著作物の利用権も、著作権者の承諾を得ない限り譲渡できません(著作権法63条3項)。法律の側もすでにそう定めていますが、契約書にも明記し、事業の譲渡や店舗の売却、会社の分割といった開催者側の組織の変更があったときに、許諾がどうなるかまで書いておくと、後で争いになりません。

専用使用権は、設定行為で定めた範囲内で登録商標を使う権利を専有させるもので(商標法30条2項)、各地の開催者に同じ名称を使わせる大会の仕組みには向きません。全国で複数の開催者に認める以上、独占的な権利の設定ではなく、範囲を限った使用の許諾という形になります。名称に商標登録があるときは、差止請求ができる者が商標権者または専用使用権者である点も(同法36条1項)、確認しておきます。

上位の権利者がいる場合の書き方も、早めに決めます。本部が自分の大会の対象素材を権利者から借りているなら、開催者に対する許諾は、その範囲を超えられません。契約書には、①権利者の定める条件を開催者にも守らせること、②その条件が変更・撤回されたときの通知と運用の変更、③権利者の許しが終わったときは、本契約も同じ日に終了または停止すること、を書きます。本部が「許諾できる立場にある」ことを表明して保証する条を置くかどうかも、ここで決めます。置くなら、保証違反のときの責任の範囲(賠償の上限や返金の範囲)まで書かないと、片方だけが重くなります。

書き方の例(一般的な例) 開催権の付与の書き方

許諾の対象

よくある書き方本部は、開催者に対し、本大会を開催する権利を付与する。(よくある書き方)
整えた書き方本部は、開催者に対し、本契約の期間中、指定地域において、本大会の名称及びロゴ、運営マニュアル並びに本部が提供する告知素材を、本契約に定める範囲及び方法で使用して本大会を開催することを、非独占的に許諾する。許諾は譲渡、転貸及び担保提供をすることができない。

理由「付与する」だけでは、権利の種類も使える範囲も分かりません。層ごとに対象を挙げ、使い方と禁止を一つの条にまとめます。

上位の条件

よくある書き方開催者は、本部の指示に従う。(よくある書き方)
整えた書き方本大会の対象となる素材について権利者が定める開催の条件がある場合、開催者はこれを守る。条件が変更されたときは、本部は速やかに開催者に通知し、開催者は通知で指定された日から変更後の条件に従う。権利者の許諾が終了したときは、本契約も同日をもって終了する。

理由上位の許諾に依存する大会は、その終了と連動して契約が終わることを書いておかないと、本部が許諾できない大会を開催者だけが開き続ける状態になります。

地域・期間・開催義務:数字と条の関係を照らし合わせる

地域は、行政区画で切るのか、会場から一定の範囲で切るのか、会場そのものを特定するのかを決めます。非独占であれば、同じ地域に別の開催者を認めることがあり得ます。そのとき、先に契約した開催者の保護は「著しい不利益が生じないよう配慮する」のような抽象的な文言だけでは、守られているかどうかを誰も判断できません。同じ日の開催を避ける、一定の範囲内では新たな開催者の許諾前に既存の開催者へ通知する、といった確かめられる形にします。

期間は、年単位で区切る場合と、大会のシーズンなど一定の区切りに合わせる場合があります。契約の途中から参加する開催者が出るなら、締結の時期にかかわらず満了日を先に決めておきます。更新は、自動更新にするか、更新しない旨の通知を満了日の何日前までに出すかを決めます。通知の期限が更新後の最初の開催の準備に間に合うか、通知の方法(書面、電子メールなど)とあわせて確認します。

開催義務には三つの選び方があります。一つ目は、期間内に最低何回開く、という回数の義務です。二つ目は、回数の義務は置かず、開催の対価に最低額を定める方法です。三つ目は、回数は努力目標にとどめ、一定期間開催がなければ本部が契約を終了できるとする方法です。大会の認知を広げて競技環境を整えたい本部は一つ目を選びがちですが、回数を義務にするなら、数え方と未達のときの効果を同時に書かなければなりません。

開催の回数を義務にするときの確認の順番

  1. 回数の数え方は、暦の月ごとか、契約期間の合計か、期間に比例した数かが決まっていますか。

    はい数え方に合わせて、途中で契約した場合の回数の按分まで書く。

    いいえ月ごとの回数と期間合計の回数が併存していないか確認し、どちらか一つに絞る。

  2. 契約期間の長さと、年間の回数の義務は釣り合っていますか。

    はい期間と回数を一つの表にして、数字が食い違っていないことを確かめる。

    いいえ契約期間の長さと回数の単位(年間・月間)が合っていないと、履行が最初から難しい義務になりうる。期間に比例した回数に書き直す。

  3. 回数に届かなかったときの効果は決まっていますか。

    はい催告したうえでの解除、追加開催の猶予、対価の最低額の請求など、効果を書く。

    いいえ効果が書かれていないと、回数の義務は努力目標と同じになる。本部が何をしたいのかを決める。

  4. 天災や会場の事情で開けないときの扱いは決まっていますか。

    はい一時的な免除や変更の手続(協議、証拠の提出、振替の期限)を書く。

    いいえ免除の手続がないと、本部が主張する未達と、開催者が主張する免除が平行線になる。

催告を要する解除(民法541条)と、催告を要しない解除(同法542条)の関係を同時に確かめます。回数の未達に催告を前提にしながら、別の条で無催告の即時解除を広く認めると、本部が選べる効果が二重になります。

条文例開催義務と未達のときの扱い(一般的な例)

  1. 開催者は、契約期間中、本契約の定めに従い、本大会を毎月○回以上開催する。契約期間が○か月に満たない場合の回数は、契約期間に応じて按分した数(端数は切り上げる)とする。
  2. 開催者が前項の回数を合理的な理由なく下回った場合、本部は、相当の期間を定めて追加の開催を求めることができる。開催者が定めた期間内に追加の開催をしないときは、本部は本契約を解除することができる。
  3. 天災、感染症の拡大、会場の使用不能その他の事由により、開催者が本大会を開催することが困難になったときは、開催者は、その事由及び見込みの期間を本部に通知する。本部及び開催者は、誠実に協議し、当該期間の開催の回数を免除し、又は変更することができる。

「合理的な理由なく」の判断が分かれるときに備えて、第3項の通知と協議の手続とつなげます。条文の数字は個別に決めます。

本部の裁量と限度:マニュアル・費用・景品の内容を変えられる条項

開催権の契約には、本部が後から変える項目が多くあります。大会の運営は、参加者の意見、遊戯や競技の更新、社会の状況に合わせて変わるからです。本部が変更権を持つこと自体は不自然ではありません。問題は、何でも、いつでも、異議なく変えられると読める書き方になっているときです。たとえば「マニュアルの改訂により開催者に不利益が生じる場合であっても、開催者は異議を述べない」という一文は、本部が必要と判断しさえすれば、どのような不利益も受け入れさせられる構造になります。

契約の相手方に対して優越した地位にある者が、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の条件を相手方に不利益となるように設定し、または変更することは、独占禁止法2条9項5号ハが不公正な取引方法の一つとして定めています。継続して取引する相手方に、自己のために金銭や役務、その他の経済上の利益を提供させることも、同号ロに挙げられています。条項があるだけで違反になるのではなく、地位の優越と不当性は、取引の実態に即して個別に判断されます。ただ、一方的な変更条項があると、争いになったときに、その条項が本部の優越した地位を背景にしたものとして読まれる材料になります。契約の設計では、そう読まれにくい形にしておくのが現実的です。

変更できる事項を、性質ごとに分ける
変更の対象本部の裁量歯止め
競技の運用ルール(進行、判定、トラブルの対応)広い。ゲームの更新など、運営上の必要に応じて改訂できる改訂の通知と、適用開始日までの周知期間。すでに告知済みの大会は旧ルールで開けるようにする
金銭の条件(開催の対価、手配の費用)狭い。事前の通知と、開催者の了解が必要通知から適用までの期間。同意しない開催者の解約権。変更前に確定した分には適用しない
景品や参加費の水準目安の提示にとどめる開催者の負担になる指示は、金額と根拠を書いて合意する。変更の都度、書面で確認する
名称・ロゴ・表示の方法本部の裁量。ただし使用中の告知物の入替えに猶予を与える旧表示の使用を認める期間、入替えの費用を誰が負担するか

全項目を一律に「事前通知で変更できる」と書くより、性質で分けて、金銭に近い項目ほど歯止めを重く書きます。

書き方の例(一般的な例) 本部による変更の書き方

マニュアルの改訂

よくある書き方本部は、マニュアルを随時改訂できる。改訂により開催者に不利益が生じる場合でも、開催者は異議を述べない。(よくある書き方)
整えた書き方本部は、競技の運営上必要な範囲でマニュアルを改訂することができ、改訂の内容と適用開始日を、適用開始日の○日前までに通知する。すでに告知した大会は、改訂前のマニュアルによって開催することができる。改訂により開催者に重大な負担が生じる場合、開催者は、通知を受けた日から○日以内に限り、本契約を解約できる。

理由改訂する権利は残しつつ、周知の期間、経過措置、重大な負担のときの抜け道を加えます。異議を述べないという書き方は、抜け道をなくすため、裁量の限度が見えなくなります。

費用の改定

よくある書き方開催費用、参加費、景品の内容は、本部が合理的な期間を設けた事前通知により変更できる。(よくある書き方)
整えた書き方開催の対価は、本部が合理的な根拠を示した事前の通知により、翌期から改定できる。開催者が改定に同意しないときは、改定の適用前に限り解約できる。参加費と景品の水準は、本部が目安を示し、開催者が決める。

理由対価の改定は事前の通知だけでなく、同意しない場合の出口まで書きます。参加費と景品は開催者の収益と負担に直結するため、水準の決定権を誰が持つのかを明記します。

お金の流れと景品:開催の対価・手配の費用・参加費・景品を誰がどう負担するか

開催権の契約では、お金が四つの向きで動きます。どれが誰の収益で、誰の負担なのかを、先に図にしてから条文を書くと、後で矛盾しにくくなります。金額を書くときは、すべて税込か税別かを明記します。

お金と物の四つの流れ

  • 参加者→開催者

    参加費。参加者との契約の相手方は、大会を開く開催者です。

    書くこと参加費は開催者の収益か、本部が一部を受け取るか。返金や苦情の窓口が開催者であること。

  • 開催者→本部

    開催の対価。開催のたびに一定額、または期間ごとの定額のことがあります。

    書くこと請求の締日、支払期日、振込手数料の負担、遅延したときの損害金の率。

  • 開催者→本部

    審判や運営スタッフを本部に手配してもらうときの費用。

    書くこと手配は任意か義務か、費用の定め方、人数や派遣の条件を本部の都合で制限できるか。

  • 開催者→参加者

    参加賞や優勝の賞品などの景品。

    書くこと種類と水準を誰が決めるか、費用の負担者、有効期限、換金や転売の禁止、法令の遵守。

請求と支払は、毎月末日締め、翌月末日払いのように、締日と期日を条文で一つに決めます。ここで見落としやすいのは、請求書の発行日と支払期日の関係、支払の確認ができなかった場合の扱いです。遅延したときの損害金は、約定の率が法定利率を超えるときは約定の率によりますが(民法419条1項)、率が高すぎると争いになります。支払の遅れが続く場合は、催告のうえでの解除に結びつけるのが、双方にとって予測しやすい形です。

参加費の帰属は、「全額を開催者が回収し、開催者の収益とする」と書く設計が多く見られます。このとき、参加費に関する会計、法令上の責任、返金とクレームへの対応は、すべて開催者の側にあると書くことになります。本部は、参加費の水準について目安を示すことはできても、参加費の返金には関与しない、という整理です。反対に、本部が参加者から直接、参加費を受け取る設計にすると、参加者の契約の相手方が本部と読まれやすくなり、本部が主催者として責任を問われる余地が大きくなります。どちらにするかは、条文を書く前に決めます。

景品は、「開催者が参加者に提供する」と書かれることが多く、その費用は開催者が負担します。景品表示法の景品類とは、顧客を誘引する手段として、事業者が自ら供給する商品や役務の取引に付けて相手方へ提供する物品や金銭などの利益のうち、内閣総理大臣が指定するものをいい(同法2条3項)、その価額の最高額や提供の方法などを内閣総理大臣が制限できます(同法4条)。景品を提供するのは、参加費を受け取って大会という役務を提供する開催者ですから、遵守の責任が開催者にあるという整理は自然です。ただ、景品の種類と水準を本部が細かく指定する設計では、本部が「指示した」という事実が残ります。本部が指定するときは、指定する内容が法令の制限の範囲内かを本部でも確認し、開催者に負担を求める根拠と上限を書いておきます。賭博罪や景品の最高額の考え方は、大会規約のページで整理しています。

契約書に法令名を書くときは、正式な名称で書きます。通称や不正確な名称では、どの法令の遵守を求めているのかが特定できず、違反したときの是正の義務も曖昧になります。景品に関する法令であれば「不当景品類及び不当表示防止法」と書き、必要なら括弧書きで略称を定義します。

現場の責任・審判の手配・賠償:運営と事故の線引き

大会の当日の運営は、会場の準備、受付、進行、対戦の管理、集計、苦情への対応です。開催権の契約では、これらを「開催者が自分の責任と費用で行う」と書き、本部のマニュアルに従う義務を重ねるのが標準的です。本部が審判や運営スタッフを手配する場合は、費用、手配できる人数の上限、本部の人員が現場で下した判断を尊重する義務、判断に不服が生じたときの協議の手続を書きます。本部の人員が現場でけがをした、あるいは参加者にけがをさせた場合の責任の分担も、ここで決めます。

参加者との契約の相手方が開催者であることは、契約書だけでなく、告知や申込みの画面でも一貫させます。本部の名称やロゴを大きく掲げ、開催者の名が小さくしか出ていない告知は、参加者から見て本部が主催者に見えます。表示と実態が食い違うと、参加者に事故や返金の問題が生じたとき、本部が窓口として責任を問われる余地が残ります。窓口の表示は、申込み画面、参加規約、会場の掲示で同じ名称を使うようにします。参加者への責任の組み立ては、事故と免責のページで扱っています。

賠償の条は、片務的になりやすい箇所です。開催者の違反だけを対象にした賠償、紛争対応の費用や信用の毀損まで包括した範囲、上限がないこと、といった書き方は、本部側の契約書によく見られます。双方が相手方に責任を負う形に直し、直接の損害を中心にして、上限を置きます(民法415条、416条)。賠償額を予定するなら、民法420条により、履行の請求や解除権の行使は妨げられず、違約金は賠償額の予定と推定されます。

もう一つ、目的の条の書き方が、契約の性質を決めます。目的の条に「開催者が本大会の運営業務の一部を受託する」と書くと、本部が大会という役務を提供し、その一部を開催者に任せる委託の構造に読まれます。取適法(中小受託取引適正化法)の役務提供委託は、自らが業として提供している役務の全部または一部を、別の事業者に任せる取引を指し(同法2条4項)、委託事業者と中小受託事業者の区分は資本金の額や従業員の数で決まります。また、フリーランス法は、事業のために別の事業者へ役務の提供を委託する取引も業務委託に含め(同法2条3項2号)、従業員を使用しない個人などの特定受託事業者に対して、給付の内容、報酬の額、支払期日などの明示を求めています(同法3条)。開催者が参加費を自分の収益とし、自分の責任で大会を開く許諾の構造であれば、これらの委託の規定の前提とは異なります。実態が許諾の構造なら、目的の条も「開催を許諾する」と書き、受託や代行という言葉を使わないようにします。実態が運営の委託に近い場合は、委託として書面の明示と支払期日を整えます。いずれの場合も、法律が適用されるかは実態で決まります。

この契約は、委託の規制の対象に近いか

  1. 参加者に大会という役務を提供しているのは、本部ですか、開催者ですか。

    はい本部が提供し、その一部を開催者に任せているなら、委託に近い。次へ進む。

    いいえ開催者が自分の名と責任で提供し、本部は名称やルールを許諾するだけなら、許諾の構造。契約書の言葉もそれに合わせる。

  2. 開催者から本部への金銭の流れは、本部が開催者へ払う報酬の形になっていますか。

    はい報酬の形なら、委託の色が強い。支払期日と明示の義務を確かめる。

    いいえ開催者が本部へ対価を払う形なら、許諾の色が強い。

  3. 開催者は、従業員を使用しない個人や、役員が一人だけで従業員のいない法人ですか。

    はいフリーランス法の特定受託事業者に当たる可能性がある。同法3条の明示、委託側の規模により同法4条の支払期日を確かめる。

    いいえ取適法の区分は資本金や従業員の数で決まる。当てはまる区分があるかを確認する。

適用の有無は、契約書の題名ではなく、取引の実態から判断されます。迷う場合は、委託として求められる明示と支払期日を、念のため守る書き方にしておく方法もあります。

終了後の措置:名称・ルールの使用停止と、残るもの・残さないもの

開催権の契約は、終わったあとに多くの問題が出る契約です。名称もロゴもルールも、本部のものですから、終了と同時に使えなくなります。しかし、すでにチラシは配られ、SNSには告知が出ており、次の大会の参加申込みが入っているかもしれません。終了日と、使用を止める日と、告知物を片付ける日をずらして、順番に決めておきます。

契約を終えるときの順番(一般的な例)

  1. 終了の通知更新しない旨の通知、または解除の通知。通知の方法と、到達したとみなす日を決める。
  2. 新たな告知と申込みの停止終了日以後に開催する大会の告知と参加申込みの受付を止める。すでに申込みのある大会は、中止の連絡と参加費の返金を開催者の責任で行うか、終了日までの開催に限るか決める。
  3. 最後の開催終了日までに開催できる大会の範囲と、その運営の条件(マニュアル、景品、報告)を決める。
  4. 使用の停止名称、ロゴ、ルール、素材の使用を、終了日から○日以内に止める。店頭の掲示、SNS、ウェブサイトの表示を片付ける期限を決める。
  5. 返却・廃棄と報告マニュアルなどの文書は返却または廃棄し、廃棄したことを書面で報告する。複製物の削除も含める。
  6. 残る義務秘密保持、未払いの対価、損害賠償、使用停止の義務が、終了後も続くことを存続条項で明記する。

名称を含むものの扱いは特に細かく決めます。大会の名称が入ったSNSのアカウント、ウェブサイトのドメイン、チャットのグループ名などです。開催者が自分で作ったものでも、名称が入っている限り、終了後は使い続けられません。名称を外してアカウントを残す、本部に移管する、削除する、のどれにするかを決めておきます。名称に商標登録があり、終了後も開催者が使い続けたときは、商標権者は差止めを請求できます(商標法36条1項)。登録がない名称については、契約上の義務として「使用を止める」と書き、違反したときの賠償の予定(民法420条)を結びつけるのが、実際には支えになります。

成績と参加者の情報は、本部と開催者のどちらに残るのかが、争いのもとになります。ランキングの成績は、本部が通算で管理するなら、開催者が成績を本部に報告する義務を書いておく必要があります。参加者の名簿などの個人データを、開催者が本部へ渡すことは、原則として本人の同意が必要な第三者提供に当たります(個人情報保護法27条1項)。共同して利用する旨などを本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置いていれば、共同利用として第三者に当たらないとされる場合もあります(同条5項3号)。いずれにしても、参加者の申込み時に、利用の目的と本部への提供について説明し、契約終了後の扱い(本部が保有し続けるのか、削除するのか)を決めておきます。

解除の条は、他の条との整合を、最後にもう一度確かめます。回数の未達には催告を要するとしながら、別の項で、重大な違反があれば催告なしに即時に解除できると書いていないか。解除の条と、不可抗力の条と、反社会的勢力の排除の条で、解除の効果(損害賠償の有無、未払いの対価の扱い)が食い違っていないか。解除したときの損害賠償について、解除した側が「一切の責任を負わない」と書かれていないか。条文を一つずつ照らし合わせる作業は、契約の完成度をほぼ決めます。

条文例終了後の使用停止と報告(一般的な例)

  1. 本契約が終了した場合、開催者は、終了日の翌日から○日以内に、本部の名称、ロゴ、ルール及び素材の使用を止め、店頭の掲示、ウェブサイト、SNSその他の媒体から、これらを含む表示を削除する。
  2. 開催者は、前項の期間内に、マニュアルその他本部が提供した文書及びその複製物を本部に返却し、又は廃棄し、その旨を書面で報告する。
  3. 前二項、秘密保持、未払いの対価及び損害賠償に関する定めは、本契約の終了後も効力を有する。

開催権の契約で起きがちなこと

契約を決める前に確かめること

  1. 許諾の対象は、名称、ルール、素材、対象素材の条件、データの五つに分けて挙げましたか。どれか一つ欠けると、終了のときに止める対象を決められません。上位の権利者の条件があれば、その連動まで書きます。
  2. 地域、期間、回数、更新の通知の期限は、一枚の表にそろえて確かめましたか。契約期間と年間の回数、更新の通知の期限と最初の開催の準備のように、別の条に分かれた数字がずれやすい箇所です。
  3. 本部が変えられる事項を、運用のルール、金銭の条件、景品と参加費の水準に分けましたか。金銭に近いものほど、通知の期間と、同意しないときの出口を重く書きます。
  4. 参加費の帰属と、返金や苦情の窓口を、契約書と告知で同じ名称にそろえましたか。表示が食い違うと、窓口と責任の所在が読み取れなくなります。
  5. 目的の条は、許諾の構造と一致していますか。受託や代行という言葉が混じっていませんか。言葉が委託の色を帯びると、委託の規制を呼び込みます。実態に合わせて言葉を選びます。
  6. 終了後の使用停止の期限、アカウントの扱い、成績と名簿の扱いを決めましたか。終了後に残るものを先に決めておくと、争いのほとんどは防げます。

よくあるご質問

開催権の契約と、フランチャイズの契約は同じものですか。

呼び名では性質は決まりません。看板や運営の型を使わせ、継続して対価を受け、運営に関与するという要素が強いほど加盟の契約に近づきます。大会の開催権の契約でも、許諾の範囲、対価、本部の統制の強さを、実態に合わせて書き分けます。統制を強くするなら、変更できる事項や監査の手続を書き、開催者の出口も用意します。教室の名称と技術を使わせる契約は、講師・スタッフの契約のページで扱っています。

大会の名称が商標登録されていない場合、契約書でどこまで守れますか。

登録がなければ、商標権に基づく差止請求はできません(差止請求ができるのは商標権者または専用使用権者です。商標法36条1項)。そのため、契約で、使える範囲、表示の方法、終了後の使用停止の期限、違反したときの賠償の予定を細かく書きます。登録があっても、登録された指定商品・指定役務と、大会で実際に使う名称の使い方が合っているかは、契約の前に確認します。

開催者が個人事業主の場合、どの法律に気をつけますか。

開催者が従業員を使用しない個人であれば、フリーランス法の特定受託事業者に当たる可能性があります。ただし、同法が適用されるのは、事業者が事業のために役務の提供などを委託する場合で(同法2条3項)、本部が名称を許諾するだけの構造では、前提が異なることもあります。契約書の目的の条が受託と読めていないか、実際の取引が委託か許諾かを先に確かめます。委託に当たるなら、給付の内容や報酬の額、支払期日などの明示(同法3条)が必要になります。

参加費の一部を本部が受け取る設計にしてもよいですか。

契約として可能ですが、参加者から見て、契約の相手方が誰か分かりにくくなります。本部が参加者から直接受け取る形にすると、本部が主催者と見られる余地が大きくなります。開催者が参加費を受け取り、開催の対価として本部へ払う形のほうが、責任の線引きは明確です。本部が参加費の一部を受け取る場合でも、返金や苦情の窓口、返金の費用の負担者、受け取る時期を契約書に書いておきます。

契約の途中で本部がルールを変えたら、開催者は従わなければなりませんか。

契約書の変更権の書き方によります。運営ルールの改訂は本部の裁量とし、通知と適用開始日を定めるのが一般的です。ただし、金銭の条件や景品の水準のように、開催者の負担や収益に直結する変更は、事前の通知に加えて、同意しないときの解約の手続を設けておくと、一方的と読まれにくくなります。すでに告知した大会を旧ルールで開ける経過措置も、実務上は重要です。

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本ページは一般的な情報提供です。法令の運用や行政の解釈は、改正や個別の事情によって変わることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月20日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 観光庁

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