留学サポート・海外研修プログラムの利用規約:範囲・返金・為替・保険

留学サポートの規約は、どこまでを引き受けるか、誰と誰が契約するか、何が返り何が返らないかを、費目と時期で区分して決めます。

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「理由の如何を問わず返金しない」「第三者機関の対応には一切責任を負わない」は、消費者契約法の面で問題になりやすい書き方です。

このページの要点

  • 紹介・申込みの手続・手配・現地対応を段階に分け、引き受ける債務と、引き受けない事項を条文で分ける。
  • 手配料、滞在費、学費、空港送迎を区分し、費用が確定する時期に合わせて取消料を決める。費用が発生していない時期の全額不返還は避ける。
  • 外貨建ての費用は、換算のレート、変更の制限、返金時の換算を規約に書く。保険は提携を前面に出さず、保険募集に近づけない。
  • 日本の消費者向けには、準拠法と裁判所、外国にある第三者への個人データの提供を、利用者の住所地を含めて整える。

結論:留学サポートの規約は、支援の範囲・契約の当事者・お金の区分・為替・保険・外国との関係を一組で書く

留学や海外研修のサポート事業は、情報の提供、現地校や滞在先の紹介、申込みの手続のサポート、ホームステイや空港送迎の手配、現地での緊急対応といった、性質の違う支援を組み合わせて提供します。しかも相手は日本に住む利用者(多くは保護者)で、現地校や滞在先、送迎会社は外国の事業者です。このため規約は、①どこまでを引き受けるか、②利用者・事業者・現地校の三者のうち誰と誰が契約するか、③手配料・滞在費・学費・取消料のうち何が返り何が返らないか、④外貨建ての費用と為替、⑤保険の案内、⑥準拠法・裁判所・個人データの扱いを、ばらばらにではなく一組で決める必要があります。

この整理の物差しとして使いやすいのが、消費者庁が平成22年7月15日に公表した「留学等あっせんサービスをめぐるトラブルと消費者へのアドバイス」です。主な相談内容として、解約料の説明がない、解約料が高額である、解約したが返金されない、申込金は返金しないと言われた、現地校への支払いがされていない、予定の滞在先に入居できない、事前の説明と現地の状況が違うといった事例を挙げ、利用者へのアドバイスを10のポイントにまとめています。そのうち、代金の内訳、支払い時期、為替レートの変動の扱い、申込金の返金、代金の返金の規定は、規約の条文でそのまま答えられる項目です。同資料は、あっせん業務そのものには法律に基づく免許等が必要ないとしていますが、宿泊や運送の手配を含めると旅行業法の問題に入ります(イベント・合宿・留学プログラムと旅行業法)。本ページは、旅行部分を切り離した、または手配をしない形を前提に、支援そのものの規約の書き方を扱います。

資料としたのは、海外での親子留学の支援の利用契約書、海外に拠点を置く事業者の留学・ホームステイ手配・空港送迎の利用規約、未成年向けの海外団体プログラムの参加規約と説明資料です。団体プログラムの参加規約の草案は事務所が作成したものです。ほかの2件は、条項の組み方の違いを比べる材料として扱います。法律の記述は、条文と公表資料で確認できるものに限っています。

支援の範囲:紹介・申込みのサポート・手配・現地対応を分けて書く

「留学サポート」という一つの言葉の中に、責任の重さが違う支援が混ざっています。規約の最初の仕事は、どれを事業者の債務として引き受けるかを段階ごとに決めることです。

支援の段階と、規約で書くこと
段階規約で書くこと責任の考え方
情報の提供・相談ヒアリングや相談の方法と回数、提供する情報は参考であり、最新・正確を保証しないこと。最終的な選択は利用者が行うこと。情報の誤りで損害が出たときの責任の範囲。故意・重大な過失を除くだけでなく、事業者の誤案内まで免責とならないよう書く。
受入先の紹介紹介する学校・保育施設・滞在先の選定の基準、紹介と契約の当事者の関係、紹介料を受け取るかどうか。紹介した先との契約は誰と誰か。選定にあたり払う注意の程度。
申込み手続のサポート出願書類の作成補助、申込みの代行の範囲、入学許可の保証をしないこと、手続の期限。代行を引き受けた手続の遅れ・誤りは事業者の債務不履行になる。
滞在先・送迎の手配手配の対象(ホームステイ・空港送迎など)、手配料の額と意味、費用の支払先、変更・取消しの扱い。旅行業法の問題が入る。手配の対価と、運送・宿泊の対価の区分を明らかにする。
現地での緊急対応対応できる時間帯と方法(遠隔か同行か)、出動費・同行費の有無、立会いを保証しないこと。事故の防止そのものを引き受けるのではなく、対応の範囲を示す。

親子留学の支援の利用契約書では、基本サービスを渡航前(相談、現地機関の紹介と手続のサポート、生活のアドバイス)と渡航後(現地機関の紹介、銀行口座の開設のサポート、住居探しのアドバイス)に分け、緊急時の送迎や医療機関への同伴を追加料金のオプションとしていました。さらに、ビザの取得の代行・保証、教育機関との直接交渉や紛争解決の代理、医療行為と健康管理、住居の賃貸契約の代行、金銭トラブルへの介入を、サービスに含まれない事項として並べています。何を引き受けないかを列挙しておくことは、期待のずれを防ぐうえで有効です。ただし、ビザの取得に失敗した場合でも返金義務を負わないという条項が、事業者の案内の誤りによる場合まで含むと読めるときは、債務不履行による責任の全部免除として消費者契約法8条1項1号に触れるおそれがあります。引き受けない事項と、事業者の責任が残る場合を、条文のうえで分けて書きます。

次に決めるのが、契約の当事者です。現地校やホームステイ先との契約を、利用者が直接結ぶ形にするのか、事業者が提供機関との契約を結び、利用者には事業者が提供する形にするのかで、責任の構造が変わります。未成年向けの海外団体プログラムの参加規約では、事業者が提供する内容(英語授業の受講手続、活動の企画、同行スタッフによる同行など)を定め、現地校などの提供機関の行為によって利用者に損害が生じたときは、事業者が自身の行為によるものとして賠償し、賠償後に提供機関に求償できる、という組み方にしています。選定と監督について相当の注意を払うという定めは置くが、この注意が責任を軽減するものではない、と明記した点が特徴です。

これに対し、第三者機関(学校、宿泊施設、航空会社・旅行代理店、紹介または手配した第三者機関)の対応、運営、サービス内容に起因する損害について一切の責任を負わない、とする規約例もあります。事業者の債務の履行に使う者の行為まで免責すると、債務不履行責任の全部免除として消費者契約法8条1項1号の問題になります(同法8条1項は、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項を無効とする)。別の例には、第三者の過失による損害を免責としつつ、事業者が選定・紹介するにあたり合理的な注意を怠った場合は除く、と限定した書き方がありました。引き受けた債務の履行に関わる部分は事業者が責任を負い、純粋な紹介にとどまる部分は選定の注意の範囲で責任を負う、という二層で書くのが筋です。

条文例支援の範囲と提供機関(未成年向け団体プログラムの参加規約の組み方から)

  1. 当社は、参加契約に基づき、次の事項を提供します。学校への参加登録その他の受講手続及び学校との連絡調整、本プログラムの活動の企画及び実施、同行スタッフによる集合・移動時の人員確認、生活面の案内及び連絡、緊急時の対応、その他募集要項に記載する事項。
  2. 英語授業その他の学校が提供する授業及び活動は、学校の定める規則及び教育課程に従って、学校が実施します。当社は、学校が定める規則、取消しに関する定めその他の参加者に適用される条件を、申込者の求めに応じて、当社が保有する範囲で開示します。
  3. 当社は、提供機関の選定及び監督について、相当の注意を払います。ただし、当社が参加契約に基づき提供する事項について、提供機関その他当社が履行のために用いた者の行為によって申込者又は参加者に損害が生じたときは、当社は、当社自身の行為によるものとして、その損害を賠償する責任を負い、賠償したときは当該提供機関に求償することができます。
  4. 当社は、旅行業法に基づく旅行業又は旅行業者代理業の登録を受けておらず、これらを営みません。当社は、保険業法に基づく保険募集を行う者ではありません。当社は医療機関ではなく、同行スタッフは医療の資格を有する者として参加者に同行するものではありません。

規約の中に、事業者が行わない業務(旅行業、保険募集、医療行為、入国許可の付与)を一つの条にまとめて置くと、範囲の線引きが読み手に伝わります。語学のレッスンそのものを自社で提供して2か月を超え5万円を超える場合は、特定継続的役務提供の判定が別に必要です(特定継続的役務提供と旅行業法の入口、語学教室の法定書面)。

手配料・滞在費・取消料:区分して、いつ何が返るかを決める

留学サポートのトラブルで最も多いのは、解約と返金です。消費者庁の資料は、契約の翌日なのにキャンセル料を請求された、違約金として90%を請求された、書類には解約料は実費とあるのに全額を解約料として請求されたといった事例を挙げています。規約では、費目を区分して、それぞれ返金するか否かを決めます。

費目の区分と、返金の考え方(規約例の比較)
費目返金の考え方の例規約で確かめること
手配料(事業者の報酬)手配の開始後は原則として返金しない例がある。重大な過失や現地の消費者法に基づく返金義務がある場合は除くと書く規約もある。手配料が何の対価か(手配の着手、申込みのサポート)。着手前の取消しまで返さない定めになっていないか。
滞在費(ホームステイなど)滞在開始日の14日前までは全額返金、以後は2週間分を取消料とし、予定が4週間未満なら全額、とする例。途中退去は2週間前までの通知で残りから2週間分を差し引く。滞在先の取消規定に合わせた設計か。区分ごとの根拠を説明できるか。
学費・受入先への支払受入先のキャンセルポリシーに従い、事業者が取消申請を代行して、取消料を差し引いて返金する例。受入先の規定を書面で確認できているか。確認できる前は割合を暫定とする。
空港送迎到着予定の48時間前まで変更は無料、それ以後は送迎代金と同額を取消料とする例。天候や航空会社の事情による遅延・変更は例外とすること。
緊急サポートの出動費・同行費遠隔支援は一定期間含み、現地対応は出動費と時間単位の費用を利用者が負担する例。いつ費用が生じるか、事前に見積りを示すか。

ホームステイ手配の取消しと途中退去の設計例(海外拠点の手配規約から)

  1. 滞在開始日の14日前まで滞在費は全額返金。手配料は返金しない。
  2. 滞在開始日の14日前以降滞在費の2週間分を取消料とする。予定滞在期間が4週間未満のときは滞在費の全額。
  3. 滞在中の途中退去(2週間前までに通知)残りの滞在費から2週間分を差し引いて返金する。
  4. 滞在中の途中退去(2週間前までの通知がない)通知日から2週間分の滞在費を取消料とする。
  5. 返金の処理払戻しが生じたときは、通常14営業日以内に処理する。

この規約は、滞在先の取消しが2週間単位で扱われることに対応した設計と見られます。取消料の区分は、事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えない範囲で、滞在先の取消規定の確認とあわせて決めます。

取消料の上限は、消費者契約法9条1項1号が定めています。消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項は、解除の事由、時期などの区分に応じ、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になります。事業者は、消費者から説明を求められたときは、算定の根拠の概要を説明するよう努めなければなりません(同条2項)。大学の在学契約で納付済みの授業料等を返還しない旨の特約について、解除の意思表示が入学年度が始まる前日の3月31日までにされた場合は、原則として大学に生ずべき平均的な損害は存しないとして、同号によりすべて無効とした最高裁平成18年11月27日判決(平成17年(受)第1158号、民集60巻9号3437頁)があります(入学金は別の性質のものとされ、返還義務はないとされています)。留学サポートの契約にそのまま当てはまるとは限りませんが、まだ費用が発生していない時期の取消しで全額を返さない定めは、同じ考え方で問題になりうるという目安になります。

事務所の改訂例 申込み時点での返金不可の見直し(団体プログラムの参加規約の草案)

取消料の設計

改訂前申込み時点で一定額を返金不可とし、費用が発生していない時期の取消しでも全額を取る(依頼者の希望)
改訂後取消料を、固定費用(取消しで戻らない費用)と、時期に応じた割合を乗じる変動費用の合計とし、取消日が募集要項の表のどの区分に属するかで決める。費用が確定する時期に合わせて、催行を判断する日までは取消料なし、催行が決まった後は申請手配などの固定費用、現地校への登録が完了した日以後は登録料相当額を加える。

理由費用がまだ発生していない時期の全額不返還は、平均的な損害を超える部分が無効とされるおそれがある。固定費用を発生時期に合わせて後ろに置き、区分ごとに根拠を説明できる形にする。

途中帰国・途中退去

改訂前規律違反による途中帰国は「返金しない」とする
改訂後途中帰国を、出発日の取消しとして取消料の規定で精算する。

理由「返金しない」と取消料の規定を並べて置くと、どちらが適用されるか不明で、全額没収の違約金と評価されるおそれがある。

精算の方法も取消料の設計の一部です。団体プログラムの草案は、現地校などから払戻しを受けた額(取消しで空いた席に補欠が入り、事業者が負担を免れた額を含む)を限度に変動費用を減額し、取消日から60日で暫定精算、確定後に差額を精算する形にし、出発日後90日を経過してもなお確定しないときは、払戻しがないものとして確定する、と定めました。取消料を事実上の違約金にしないため、事業者が負担を免れた分は返す仕組みです。

代金の支払時期も規約で決めます。消費者庁の資料は、留学等の手配は契約後から渡航までの間に順次行われ、費用の負担は実際には手配のたびに必要になる、として、早期に多額の前払金を求められたときは、なぜその時期に必要かの説明を求めるよう利用者に助言しています。事業者の側では、支払時期を手配の履行の時期と結びつけて説明できるようにし、前払金の取扱い(受入先への送金の時期、受入先から払戻しを受けた場合の返金)を書面に残します。入会金や月謝の返金設計は月謝・入会金・チケットの返金設計、ツアー型の取消料はツアー・遠征・海外プログラムの取消料と旅費で扱います。

為替:換算のレート、参加費の変更の制限、返金の換算

留学の費用は外貨建てで受入先に支払われるため、日本円で請求する事業者は、為替レートの扱いを決めなければなりません。消費者庁の資料は、為替レートに一定のパーセントを上乗せして請求する事業者があり、その割合は事業者によって様々であるとして、利用者に、取扱いの確認と、見積書の為替レートの説明の確認を勧めています。規約で書く項目は次のとおりです。

為替に関して規約で書くこと
項目書き方の例注意
換算のレートと基準日外貨建ての額を日本円に換算する必要があるときは、募集要項に定める為替レートにより換算し、1円未満の端数は切り捨てる。レートに上乗せがあるときは、その旨と割合を見積書・募集要項に出す。
変動による変更の制限募集要項に換算のレートを定めたときは、為替相場の変動を理由として参加費の額を変更しない。固定する場合のリスクは事業者が負う。固定しないなら、変更できる場合と通知の期限を限定して書く。
参加費を増額できる場合利用者の求めによる追加の内容、安全のための追加の手配で生じた実費など、列挙した場合に限る。「事業者がやむを得ないと判断したとき」といった包括的な定めにしない。重要な変更には取消料なしの取消しを認める。
取消し・返金のときの換算返金は支払時の円額を基準にする、取消料は募集要項の円額で定める、など。外貨建ての払戻しを受けたときの差額を、誰が負うか決める。事業者の都合による返金の振込手数料は事業者負担とする例がある。
送金手数料・為替差損取消しや変更で生じる銀行送金手数料、為替差損、立替費用は利用者の負担とする規約例がある。事業者の都合による取消しまで利用者負担にしない。差損の額は根拠を説明できるようにする。

条文例為替と参加費の変更の制限(団体プログラムの参加規約の草案から)

  1. 外貨建ての額を日本円に換算する必要があるときは、募集要項に定める為替レートにより換算し、1円未満の端数は切り捨てます。募集要項に換算のレートを定めたときは、当社は、為替相場の変動を理由として、参加費の額を変更しません。
  2. 当社は、参加契約の成立後、募集要項に記載された参加費の額を、次の場合を除き、増額しません。申込者の求めにより、募集要項に記載のない内容を追加したとき(追加した内容に係る費用に限ります)。安全のための追加の手配その他の追加の費用が生じたとき(これに要した実費に限ります)。
  3. 出発日又は帰着日の変更、滞在先の地域又は学校の変更、主要なプログラムの取りやめ、参加費の増額(前項の場合を除く)などの重要な変更の通知を受けた申込者は、通知を受けた日から7日以内に、取消料を支払うことなく参加契約を取り消すことができます。

保険の案内と保険募集:提携の書き方に注意する

海外での治療費は高額になりうるため、留学サポートの規約では、海外旅行保険の加入を参加の条件にすることがよくあります。団体プログラムの参加規約の草案は、治療・救援費用、救援者費用、傷害死亡・後遺障害、個人賠償責任、携行品損害を補償する海外旅行保険への加入を参加者に求め、加入を確認する書類の提出期限を募集要項に置きました。海外拠点の手配規約でも、渡航期間をカバーする保険に未加入であることを、手配を拒否・停止できる事由に挙げています。

注意が必要なのは、事業者が特定の保険会社と「提携している」「同社の保険を案内する」と書く場合です。保険業法は、保険契約の締結の代理又は媒介を行うことを保険募集とし(同法2条26項)、同法が定める登録などを受けた者のほかは、何人も保険募集を行ってはならないとしています(同法275条1項)。申込みの取りまとめ、保険料の収受、特定の商品の推奨による勧誘などが、募集に近づく行為の例です。実際に募集に当たるかは行為の態様で判断されますが、規約の側では、募集に近づく書き方を避けるのが安全です。

条文例海外旅行保険の条(団体プログラムの参加規約の草案から)

  1. 参加者は、本プログラムの期間中を通じて、治療・救援費用、救援者費用、傷害死亡・後遺障害、個人賠償責任及び携行品損害を補償する海外旅行保険に加入していなければなりません。保険の種類、補償額の目安及び加入を確認する期限は、募集要項に定めます。
  2. 保険会社及び保険の内容は、申込者が自由に選択します。当社は、特定の保険商品の推奨、勧誘、申込みの取りまとめ、保険料の収受その他の保険募集に当たる行為を行わず、保険契約の締結の代理又は媒介を行いません。保険契約は、申込者と保険会社との間に成立します。
  3. 治療費、救急搬送費その他の医療に関して生じた費用は、第一次的に海外旅行保険によって支払われるものとし、保険によって補償されない部分は、申込者の負担とします。当社が緊急のため治療費を立て替えたときは、申込者は、請求を受けた日から14日以内に当社に支払います。

保険に加入しなかったことにより補償を受けられなかった部分の損害は、事業者の免責の事由として別の条に置きます。保険会社への個人データの提供は、申込者が依頼した場合に限る任意の扱いにしています。

外国の事業者・外国の裁判所・個人データ:準拠法、管轄、個人情報

留学サポートの規約には、海外の事業者が使う書式の影響で、日本の利用者にとって読み慣れない条項が入りやすい部分があります。代表的なのが準拠法と裁判所です。親子留学の支援の利用契約書の例は、準拠法を日本法としながら、事業者が拠点を置く国の州の裁判所を第一審の専属的合意管轄とし、日本の利用者がその裁判所の裁判権に異議を述べないとしていました。海外拠点の手配規約の例は、準拠法を現地の連邦法・州法とし、現地の裁判所を専属的合意管轄とする一方、現地の消費者法が別の救済を認める場合はその適用を妨げないと書いていました。

日本に住む消費者を相手にする場合、これらの条項には法律上の制約があります。消費者契約の準拠法については、法の適用に関する通則法11条が、消費者が常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に表示したときは、その強行規定も適用するなどの特例を置いています。裁判所の管轄については、消費者からの事業者に対する訴えは、消費者の住所が日本国内にあれば日本の裁判所に提起できます(民事訴訟法3条の4第1項)。また、将来の消費者契約に関する紛争を対象とする国際的な管轄の合意は、消費者の契約締結時の住所がある国の裁判所に訴えを提起できる旨の合意であるときなどに限って効力を有します(同法3条の7第5項)。また、消費者の住所がある国の裁判所にのみ訴えを提起できる旨の合意は、消費者が当該合意に基づいて訴えを提起したときなどを除き、その国以外の国の裁判所にも訴えを提起することを妨げない旨の合意とみなされます(同項1号括弧書)。したがって、日本の消費者向けの規約では、利用者の住所地の裁判所を含む付加的な合意管轄にしておくのが堅実です。団体プログラムの参加規約の草案は、準拠法を日本法とし、事業者の本店所在地を管轄する裁判所又は申込者の住所地を管轄する裁判所を第一審の管轄裁判所とする付加的な合意管轄にしました。

個人データは、現地校、滞在先、送迎会社、現地の協力者など、外国の事業者に渡ります。個人情報保護法28条は、個人情報取扱事業者が外国にある第三者(個人情報保護委員会規則で定める基準に適合する体制を整備している者などを除く)に個人データを提供する場合には、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければならないとし、同意を得ようとするときは、その外国における個人情報の保護に関する制度、提供先が講ずる保護のための措置などの情報を本人に提供しなければならないとしています。団体プログラムの草案は、同意を取得するまでに、申込みフォームの同意画面又はプライバシーポリシーで、提供先が所在する外国の名称、制度に関する情報、提供先が講ずる措置の情報を申込者に提供する設計にし、提供先が講ずる措置の確認結果を別表で記入する形にしました。健康に関する情報は、原則としてあらかじめ本人の同意を得なければ取得できない要配慮個人情報です(同法20条2項)。診断名を必須にするのではなく、団体生活に関して事前に知っておきたい事項や必要な配慮を尋ね、障害のみを理由とした一律の拒否を避ける設計は、障害者差別解消法8条(不当な差別的取扱いの禁止、負担が過重でない範囲での合理的配慮の提供)とも整合します。未成年・18歳の申込者と保証の定めは未成年・保護者・家族受講と健康の申告で、責任の条は事故と免責で扱います。

事務所の書類での扱い:よくある要望と、条文を決める前の問い

ご相談と回答 留学サポートの規約について

申込みの時点で一定額を返金不可にしたい。

費用がまだ発生していない時期の取消しで全額を返さない定めは、平均的な損害を超える部分が無効とされるおそれがあります。登録料のように、取消しで戻らなくなる時期が決まっている費用は、その時期以後の固定費用として返金不可にできます。時期に合わせて区分する案にしました。

保険会社と提携している。紹介してよいか。

申込みの取りまとめ、保険料の収受、特定の商品の推奨による勧誘を事業者が行うと、保険募集に当たるおそれがあります。提携先の名称は規約に書かず、保険会社は申込者が自由に選ぶ形にし、事業者は募集に当たる行為を行わないと整理しました。

現地校の取消規定を示す資料がない。

取消料の割合は暫定とし、現地校の取消規定を書面で確認したうえで確定します。確認できないときは、その区分の割合を0%に切り替える設計にしました。

ヒヤリングで確かめること 留学サポートの規約のために

  1. 利用者が現地校・滞在先と直接契約するのか、事業者が提供機関と契約して利用者に提供するのか。責任の構造と、支払先を決める出発点です。
  2. 手配料は何の対価で、いつ発生しますか。受入先から払戻しを受けた場合はどうしますか。取消料の区分と、返金の算式の根拠になります。
  3. 現地への支払は外貨建てですか。見積りの為替レートに上乗せがありますか。換算のレート、変更の制限、返金のときの換算を決めます。
  4. 保険はどう案内していますか。提携先からの紹介料や、申込みの窓口になっていますか。保険募集に近づく運用がないかを確かめます。
  5. 現地の協力者、クラウド、連絡アプリなど、個人データが渡る外国の事業者はどこですか。外国にある第三者への提供の同意と、情報提供の準備です。
  6. 日本の利用者との紛争は、どこの裁判所で扱う想定ですか。準拠法と管轄を、消費者の住所地を含む形に整えます。

起きがちなこと

よくあるご質問

現地校や滞在先の落ち度について、責任を負わないと書いてよいですか?

事業者が引き受けた債務の履行に使う者の行為まで一切免責とすると、債務不履行責任の全部免除として消費者契約法8条1項1号に触れるおそれがあります。引き受ける手配の範囲を定め、その履行に使う提供機関の行為は事業者自身の責任とし、純粋な紹介にとどまる部分は選定にあたっての注意の範囲で責任を負う、というように分けて書きます。

申込金や手配料を返金しないと決めてよいですか?

手配の着手後に実際に費用や労力が生じている部分は、その範囲で返金しない設計にできます。一方、費用が発生していない時期の取消しまで全額を返さない定めは、解除に伴う違約金等として、平均的な損害を超える部分が無効になるおそれがあります(消費者契約法9条1項1号)。費目と時期で区分し、求められたときに算定の根拠の概要を説明できるようにしておきます。

為替が変動したら、参加費を上げてよいですか?

上げられる場合を規約に限定して書いておく必要があります。募集要項に換算のレートを定めて、為替相場の変動を理由に参加費を変更しない形にすれば、利用者に予測可能性を与えられます。増額できるのは、利用者の求めによる追加や、安全のための追加手配の実費などに限り、重要な変更には取消料なしの取消しを認めるのが、安全な設計です。

提携している保険会社を、利用者に紹介してよいですか?

保険契約の締結の代理又は媒介は保険募集であり、登録などを受けた者のほかは行えません(保険業法2条26項、275条1項)。申込みの取りまとめ、保険料の収受、特定の商品の推奨を事業者が行うと、募集に近づきます。提携先の名称を規約に書かず、保険会社は利用者が自由に選ぶ形にし、事業者は募集に当たる行為を行わないと書くのが安全です。

契約に、外国の裁判所を専属的な管轄とする条項を入れてよいですか?

日本に住む消費者との契約では、将来の紛争を対象とする国際裁判管轄の合意は、消費者の契約締結時の住所がある国の裁判所に訴えを提起できる旨の合意であるときなどに限り効力を有します(民事訴訟法3条の7第5項)。消費者からの訴えは、住所が日本にあれば日本の裁判所に提起できます(同法3条の4第1項)。日本の消費者向けには、利用者の住所地の裁判所を含む付加的な合意管轄にするのが堅実です。

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