イベント・合宿・留学プログラムと旅行業法:宿泊・送迎・観光を含める前に

宿泊や送迎、観光をイベントに組み込むと、旅行業法が入口になります。登録の要否は規約の一文ではなく、手配とお金の流れで見られます。

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規約に「当社は旅行業者ではありません」と書いても、申込みの受付と代金の受領を主催者が行っていれば、問題は解消しません。

このページの要点

  • 運送(バス・鉄道・飛行機など)や宿泊を手配・取次ぎして報酬を得る事業が旅行業。体験や講座だけの手配は、運送・宿泊を伴わなければ対象になりにくい。
  • 実費で手配していても、イベント料金に上乗せして利益が出る形や、提供者からの割戻しは、報酬と見られうる。
  • 旅行業者と組んでも、申込みの受付と旅行代金の受領を主催者が行うと無登録営業になりうる。旅行費用は旅行業者へ直接払う形に分ける。
  • 無登録のまま進めると、罰則(罰金刑を受けると5年間は登録を拒否されうる)や氏名等の公表の対象になりうるほか、参加者は弁済業務保証金などの保護を受けられない。

結論:登録の要否は「規約の一文」ではなく、運送・宿泊の手配と代金の流れから見られる

教室の合宿や遠征、ワークショップに付けた宿泊、海外での研修プログラムのように、学ぶ・競う・体験するイベントに宿泊や送迎、観光を組み込むと、旅行業法が入口になります。旅行業法は、報酬を得て、旅行者のために運送や宿泊のサービスの提供を受けることを代理・媒介・取次ぎする行為などを行う事業を旅行業とし(旅行業法2条1項)、営むには観光庁長官の行う登録を受けなければならないとしています(同法3条)。当てはまるかどうかは、規約に何と書いたかではなく、実際に行っている手配と、お金の流れで見られます。

このページでは、観光庁の「旅行業法施行要領」と、その平成30年7月改正分に関するQ&A、令和2年12月11日の観参第957号(旅行業法第2条に規定する「旅行業」の取扱いについて)という公表資料で確認できる範囲に絞って、判断の順番、報酬の読み方、募集の仕方の線引き、登録を受けた旅行業者と組むときの組み方を整理します。旅行業法上の「事業」として成り立つか(営利性・募集の不特定多数性・反復継続性)は、行為を行おうとする者が主体的に判断し、施行要領の見解を求められたときは登録行政庁が示すものとされています(Q&A問12)。ここで書くのは、条文と公表資料から読み取れる判断の材料であり、個別の事業が登録を要する・要しないと断定するものではありません。登録の申請手続は扱いません。

最初に押さえたい点は三つです。第一に、宿泊と運送(バス・鉄道・飛行機・タクシーなど)が入っていなければ、体験や講座だけの手配は旅行業の対象になりにくいこと。第二に、実費で手配しているだけでも、イベントの料金や手数料に利益が乗っていれば報酬と見られうること。第三に、旅行の部分を登録を受けた旅行業者に任せるときも、申込みの受付と代金の受領を主催者が行うと、そのこと自体が問題になりうること。以下、順に見ていきます。教室の規約全体の入口の判定は特定継続的役務提供と旅行業法の入口で扱っており、本ページはその旅行業法の部分を掘り下げます。

判定の順番:運送・宿泊を含むか、手配か、報酬か、事業か

旅行業に当たるかは、次の四つを順に当てはめます。一つでも欠ければ旅行業の定義から外れる可能性が高くなりますが、欠けるかどうかは実際の事実で決まります。

旅行業法の入口の判定(公表資料で確認できる範囲)

  1. 運送又は宿泊のサービスが入っているか

    はい観参第957号は、運送サービスを対価を得て旅客を運送するサービス(鉄道・バス・船舶・飛行機・タクシーなど)、宿泊サービスを対価を得て人を宿泊させるサービス(旅館業法の旅館業や住宅宿泊事業として提供されるもの)とし、海外で同様に提供されるサービスも含むとしています。STEP2へ。

    いいえ乗馬体験・カヤック・ウォーキングツアーなどの観光アクティビティや、レンタカー、寝具のないテントサイトだけのキャンプ場は、運送や宿泊ではなく運送等関連サービスです。運送・宿泊を伴わず関連サービスだけを手配・提供する場合は、施行要領は旅行業に該当しない例(プレイガイド、ガイドなど)に挙げています。

  2. そのサービスを企画して売る、又は旅行者のために代理・媒介・取次ぎをしているか

    はい旅行の目的地・日程・運送等サービスの内容・対価を定めた計画を募集のために作成して仕入れる行為(法2条1項1号)や、旅行者のために運送等サービスの提供を受けることの代理・媒介・取次ぎ(同項3号)は旅行業の行為です。STEP3へ。

    いいえ参加者が提供者と直接契約し、主催者は案内や情報の提供にとどまり、取引に働きかけない構成なら、旅行業の行為から外れる余地があります。ウェブサイトでは、予約入力画面から確認画面に移る際までに、旅行者と提供事業者の取引である旨が明確に表示され、システム上もそうなっていることが要領・通達の整理です。

  3. 報酬を得ているか

    はい経済的収入を得ていれば報酬です。旅行者から金員を取らない場合や、行為と収入が直接の対価関係にない場合でも、相当の関係があれば報酬と認められます。STEP4へ。

    いいえ宿泊・運送の手配に関して一切の収入(手数料、割戻し、他の料金への上乗せ)がなく、全体として構造的に利益が出ない対価設定なら、営利性はないとQ&Aは整理しています。

  4. 事業として、すなわち不特定多数に、反復継続して行うか

    はい営利性・募集の不特定多数性・反復継続性の三つを総合的に見ます。旅行の手配を行う旨の宣伝・広告が日常的に行われていれば、反復継続の意思が認められるとされています。

    いいえ一回限りで、募集の範囲が限られる場合は、事業性の評価が下がります。ただし、一回の実施か、継続の意思があるかは事実で決まります。

四つがそろうと、登録のない事業者は無登録営業(法3条違反)のおそれがあります。付随の考え方は観参第957号が整理しています。運送等サービスの手配と併せて関連サービスを不可分一体で提供するときは、関連サービスも「付随して」いるとされますが、旅行者が運送・宿泊を申し込まずに関連サービスだけを申し込む場合は付随とは認められません。

教室やイベントでよくある思い込みが「うちは教える側で、宿泊や送迎は付け足しだから関係ない」という整理です。上の順番でわかるとおり、付け足しであっても、宿泊を手配して代金を受け取る形になっていれば、基本的な旅行業務(運送・宿泊についての業務)に当たりうる取引であり、報酬性と事業性の検討が必要になります。逆に、宿泊も運送も手配せず、会場とレッスンと食事だけを提供するなら、旅行業の入口には立ちません。どこまでを自分で受け、どこからを参加者が別の事業者と直接結ぶのかを、最初に線引きすることが、この後の全てのページの前提になります。

報酬の読み方:実費でも、包括でも、割戻しでも報酬になりうる

「手配は実費でやっているだけで、利益は取っていない」と考える主催者は少なくありません。施行要領は、報酬を、事業者が旅行業法2条1項各号の行為を行うことによって経済的収入を得ていれば報酬になる、と広く読んでいます。さらに、旅行者から金員を取らない場合や、行為と収入との間に直接の対価関係がない場合でも、次のような相当の関係があれば報酬を得ていると認められます。

報酬に当たりうる場面(施行要領・Q&Aの整理)
場面公表資料の扱い書類で確かめること
留学あっせんと運送・宿泊の対価を包括して徴収施行要領は、留学あっせんと運送又は宿泊のサービスの対価を包括して徴収し、旅行業以外のサービスの対価を支払う契約の相手方に、不可分一体のものとして運送又は宿泊のサービスを手配している場合を、報酬を得ている例に挙げています。請求書や見積書の費目が、教育・指導の部分と、宿泊・移動の部分に分かれているか。一括の金額に手配料を乗せていないか。
提供者からの割戻し(いわゆるキックバック)旅行者から取らなくても、宿泊施設などの提供者から割戻しを受ければ、報酬に該当します。現地校・宿泊施設・バス会社などとの提携契約に、紹介料、手数料、送客に応じた割戻しの定めがないか。
実費で手配し、イベント料金に上乗せQ&Aは、運送・宿泊の手配は実費で行い、同じツアー内のイベント料金にその分を上乗せして利益を上げる例を、手配とイベントが一体として行われ、全体として収入が経費を上回るから営利性があるとしています。参加費の内訳、各費目の原価、全体の収支。宿泊の手配は実費でも、講座料や運営費で利益が出る構造になっていないか。
会員制クラブの年会費の例年会費がパーティーの参加券や会報の購読料に充てられ、旅行の代金は別に支払うなら、年会費は報酬に当たらないとされます。年会費を払うことで特定の旅行への参加権が生じ、その年会費から旅行の対価を支払う関係なら報酬に当たります。会員費・受講料・月謝が、特典として宿泊を伴う行事の費用に充てられていないか。行事の費用を会費と別に精算しているか。
構造的に利益が出ない設定取り扱う全ての旅行商品について利益が出ない対価設定で、事業形態として構造的に利益が出ないなら、営利性はないと言えるとされます。1回のツアーが黒字になっても、長期的に収入と経費が均衡している場合などは営利性がないとされる例があります。一方、売上原価を引くと黒字で、販売管理費まで引くと赤字になる場合は、営利性がある可能性が高いとされています。教室全体の収支ではなく、宿泊・運送の手配を含む事業の収支で見る。他の事業からの補塡を含めて総合的に確かめられることに留意する。

ここで大事なのは、報酬の有無を、主催者が「実費」と呼んでいるかどうかではなく、行為と収入の関係で見ることです。包括料金で取引されるもので、収支の内訳が明確でなく、得た収入で支出を償えていないことが明らかでない場合は、利益が出ているものとみなされる、というのが施行要領の整理です。内訳を説明できる書類を持っておくことは、旅行業に当たらない構成であることを示す材料にも、当たりうる構成を見直す材料にもなります。

募集の仕方と、登録を受けた旅行業者と組むときの組み方

旅行業者でない者が参加者を募集する場合を、施行要領は「オーガナイザー」と呼んで整理しています。旅行業者と組めば足りると誤解されやすい部分なので、要点を挙げます。

オーガナイザーの募集と旅行業者の関与(施行要領)
類型施行要領の整理教室・イベントでの読み方
イ オーガナイザーが旅行契約の当事者になるオーガナイザーがその名で旅行者と旅行契約を結べば、無登録営業。旅行業者の名で契約する形でも、オーガナイザーが申込みを受け付け、旅行代金を収受すれば、旅行業務に関する無登録営業になる。旅行業者は、これらのオーガナイザーの手配を引き受けるなど、違法営業に関与してはならない。旅行会社の名前を借りても、申込みフォームと入金口座が主催者にあれば足りない。施行要領は、旅行業者の側にも、この形の手配を引き受けてはならないとしている。
ロ 団体内部の募集相互に日常的な接触のある団体内部で参加者が募集され、オーガナイザーが構成員であることが明らかな場合(例:同一職場内で幹事が募集、学校等による生徒を対象とした募集、権利能力なき社団の構成員の募集)は、企画旅行の実施のための直接的な募集とみなされず、旅行業者が受注型企画旅行や手配旅行として引き受けて差し支えない。例は職場・学校・社団です。習い事の教室の生徒に声をかける場合がこれに当たるかは、団体としての実態(相互の日常的な接触、構成員であることの明らかさ)で見られるため、教室の名前だけで当てはめることはできません。
ハ 参加者の旅行代金の全額をオーガナイザーが負担企業が自ら全額を負担して参加者を募集する招待旅行、取引先の従業員向け、従業員の研修旅行などは、直接的な募集とみなされず、旅行業者が受注型企画旅行や手配旅行として引き受けて差し支えない。参加者から旅行の対価を取らない構成です。参加費や講座料で賄っている場合は、行為と収入の関係を別途確認する。
ニ 上記以外オーガナイザーの集客が旅行業者による募集と類似しており旅行者に混乱を与えうるので、旅行業者は募集型企画旅行として取り扱わなければならず、オーガナイザーを関与させずに、旅行者から直接旅行代金を収受して契約を結ぶ。多くのイベント・合宿・海外プログラムはここに入ります。申込みの受付と旅行代金の受領は旅行業者が直接行う形に、主催者の側を合わせる。

イベント事業者が旅行業に当たらないイベントの募集広告を出すときの表示も、施行要領は例を示しています。旅行の企画・実施部分は旅行業者が全ての責任を負うことを示し、代金を分離して参加者が旅行業者に支払うべきものとする、という考え方です。そのうえで、広告上の表示は次のいずれかに従うとされています。

募集広告の表示の三つの型(施行要領)
型表示と費用の流れ主催者が気を付ける点
共同企画イベント事業者と旅行業者の共同企画とし、旅行の企画・実施は旅行業者、費用は全費用を旅行業者に支払う。主催者は参加費を受け取らず、全費用の窓口が旅行業者になる。主催者の収入の取り方(旅行業者からの報酬)が別の問題にならないか確認する。
イベントと旅行の分離表示イベント企画はイベント事業者、旅行の企画・実施は旅行業者。費用はイベント参加費用と旅行費用を分離して表示し、旅行費用は旅行業者に支払う。多くの教室・研修型イベントが選ぶ型。参加費と旅行費用の区分を、広告・規約・申込み画面・請求書で同じにする。
旅行を含まない企画旅行の企画・実施部分を含まない企画にする。イベント参加者は、旅行業者の企画する旅行に、別途旅行業者に申し込んで参加できる、という案内にとどめる。宿泊・送迎を案内するだけで、主催者が手配・代金の受領・提供者からの手数料の受取をしない。案内の仕方で取次ぎに近づかないようにする。

この三つのほかに、宿泊費・食費を主催者が負担し、参加者は現地集合・現地解散で運送の手配もなく、参加者から宿泊・運送の対価も受け取らない構成があります。講座に付けた宿泊型の集まり(リトリート)の契約書のレビューで検討した形です。この構成は「報酬を得て」の要件との関係で、旅行業の定義に入りにくいと見られる作りでした(それでも最終の判断は事実関係によります)。もっとも、将来そのリトリートに参加費を設けたり、講座の受講料に宿泊の費用を含めて包括して受け取ったりする形に変えるときは、上の報酬の読み方に照らして、登録の要否を検討し直す必要があります。

航空券の団体枠、氏名の共有、取消しの窓口:登録なしで教育部分だけを受ける形の書き方

未成年向けの海外団体プログラムで、旅行部分は登録を受けた旅行業者が企画・実施し、主催者は英語授業や活動、同行スタッフによるサポートといった教育部分だけを受ける形の参加規約を、事務所は草案として作成しました。その作り方のうち、旅行業法との関係で効く部分を示します。まず、規約の中で「教育部分」と「旅行部分」を定義で分け、参加費の定義から旅行費用を外します。次に、旅行部分の申込み・代金・取消しを旅行業者との契約に切り離します。

条文例旅行部分の区分(団体海外プログラムの参加規約の草案から要点)

  1. 旅行部分は、教育部分とは別に、旅行業者と申込者又は参加者との間の旅行契約に基づいて提供されます。当社は、旅行部分の企画及び実施並びに旅行契約の申込みの受付及び旅行費用の収受を行わず、旅行業者、学校、滞在先その他の運送又は宿泊のサービスを提供する者から、手配、あっせん又は取次ぎの対価を受領せず、参加費に旅行部分の対価を含めません。
  2. 旅行業者の名称及び登録番号並びに旅行費用の額、支払先及び支払時期は、募集要項に記載します。申込者は、旅行費用を、参加費とは別に、旅行業者に直接支払います。
  3. 航空券は、申込者又は参加者が、航空券の販売事業者から直接購入します。契約の当事者は申込者又は参加者と航空券の販売事業者であり、当社は航空券の販売、代金の収受及び発券を行わず、販売事業者の代理人ではありません。当社は、団体運賃の人数の条件が満たされることを保証しません。
  4. 参加契約の取消しと旅行契約の取消しは、それぞれの契約の当事者に対して行います。当社への取消しの通知をもって旅行契約又は航空券に係る契約の取消しがされたことにはなりません。当社は、取消しの通知を受けたときは、旅行契約等の取消しを別に行う必要があること及びその連絡先を、報酬を受けずに通知します。

別の条に、当社が旅行業法に基づく旅行業又は旅行業者代理業の登録を受けておらず、これらを営まないこと、当社が提供するのは教育部分であり旅行部分は旅行業者が提供することを置き、業務の区分を明記しています。

航空券の団体枠は、論点が出やすい部分です。主催者が団体枠の契約の名義人になり、人数が足りないときの差額を航空券の販売事業者との間で受け払いすると、航空券の手配を行い代金のやり取りをしていると評価されるおそれがあります。事務所の草案は、団体運賃の条件は参加者と販売事業者の間のものとし、人数不足で運賃が上がるときの費用は販売事業者の定めに従って参加者が負担し、主催者は参加が確定した人の氏名と連絡先を販売事業者に伝えるだけで対価を受け取らない、と整理しました。実際の契約の名義と差額の負担の流れは、販売事業者に確認して書類に合わせる必要があります。

事務所の改訂例 旅行部分の書き方

規約の表示

改訂前「当社は旅行業者ではありません」「前受金の取次ぎであり」といった記載(依頼者の過去の約款)
改訂後旅行部分を教育部分から切り離す定義と区分の条を置き、旅行業者の名称・登録番号と、旅行費用の支払先(旅行業者)を募集要項に記載する。

理由法は取次ぎも旅行業の行為に含めています(2条1項3号)。何と名乗っているかではなく、申込みの受付と代金の受領を誰が行うかで見られます。

同行者の呼び方

改訂前「引率スタッフが全行程に付き添います」(依頼者の募集ページの表現)
改訂後「同行スタッフが、集合・移動時の人員確認、生活面の案内と連絡、体調変化時の確認と保護者への連絡を行います。旅行部分の旅程の管理や案内は旅行業者が行います。」

理由引率は、旅程管理を行う添乗や、学校の引率教員のような広い監督責任を連想させます。実際のサポートの範囲に合わせた語に統一し、規約と案内の表現をそろえる。

入金後の通知や申込み画面の表示も、旅行部分を切り離した前提でそろえます。登録を受けた旅行業者が行う旅行業務は、特定商取引法の訪問販売・通信販売・電話勧誘販売の規定から除かれています(同法26条1項8号ハ)。この除外は旅行業者の行為についてのものなので、登録のない主催者が教育部分を通信販売で売る場合には、広告の表示(11条)、申込み画面の表示(12条の6)、前払いの場合の承諾等の通知(13条)といった通常の規律が主催者の取引にかかります。説明会や通話で申込みを勧める運用にすると、別の類型(電話勧誘販売など)になるため、申込みはフォームだけで受ける運用とセットで書類を作ります。

ヒヤリングで確かめること 旅行業法との線引きのために

  1. 参加者が支払う金額に、宿泊・移動・観光の対価が含まれていますか。含まれるなら、誰がそれを受け取り、誰に支払いますか。包括徴収かどうか、申込みの受付と代金の受領の主体を決める出発点です。
  2. 現地校・宿泊施設・バス会社・旅行会社から、紹介料や割戻し、手数料を受け取る約束はありますか。旅行者から取らなくても、提供者からの割戻しは報酬になりえます。
  3. 募集は誰に向けて、どの媒体で、年に何回行いますか。募集の範囲と反復継続の意思を、事業性の判断材料として確かめます。
  4. 航空券や団体運賃の契約の名義は誰で、人数不足の差額は誰が受け払いしますか。主催者が手配・代金のやり取りをしていないかを確かめます。
  5. 現地の手配先の請求書は、教育部分と宿泊・移動部分で費目別に分かれますか。英文の請求書も共有してもらえますか。分離表示と、旅行費用の内訳を参加者に示すために必要です。
  6. 同行する人は何をしますか。点呼と人員確認、生活面の案内、旅程の管理、通訳、医療的な対応のうち、どれをしますか。旅行業者が行う業務と、主催者の業務の範囲を分けるためです。

マッチングの場、情報サイト、ランドオペレーター、体験サービス:規約の書き分け

旅行の取引そのものを行わず、旅行者と提供者をつなぐだけの場や、旅行情報を発信するだけのサイトは、規約で手配・取次ぎをしていないことを定義の段階から書き分けます。観参第957号と施行要領は、ウェブサイトを介した取引で、旅行者と提供事業者との取引となる旨が明確に表示され、システム上もそうなっていて、働きかけを行わない場合を、旅行業に該当しない例に挙げています。

提供の形ごとの規約の書き分け
形規約・表示で書き分けること注意
旅行者と個人ガイドをつなぐ場(運営者が旅行業の登録を受けている会社)規約の定義から旅行補助等を外し、運営者は旅程の作成・管理、運送・宿泊の手配、旅行契約の媒介を含まないと書く。予約の成立を決済の完了に結びつけると、運営者が契約の成立を握る構造に見えるため、当事者間の合意の時点で成立とし、システムの処理は別に整理する。特定商取引法に基づく表記にも、登録はあるが本サービスでは旅行契約の当事者ではない旨を書く。登録があっても、サービスごとに当事者かどうかを書き分ける。
登録を受ける前の旅行情報サイト登録を取得するまでは、契約の締結の仲介や手配の業務を行わないことを書く。登録後に範囲を広げるときは、規約をその時点で見直す。予約機能を付けるときは、提供者と旅行者の取引である旨の表示を、確認画面の前に出す。
訪日旅行者向けの国内手配を引き受ける会社(ランドオペレーター)旅行サービス手配業(法2条6項、登録は法23条)に当たりうる。施行要領は、登録が必要となる行為を、旅行業を営む者のため本邦内で、運送・宿泊のサービス、有償の通訳案内、免税店での物品販売の提供者との間で代理・媒介・取次ぎをする行為としている。旅行業者は手配業の登録を受けなくても手配業務を行える。受託者が登録を要するかは、委託者が旅行業者かどうか、手配の中身で見る。
同行型の体験サービス交通費・宿泊費を立て替える運用があるとき、それが手配(取次ぎ)に当たるかを、報酬の有無とあわせて確認する。体験そのものの提供は運送等関連サービス。運送・宿泊の手配をしないなら、立替えをしない形にするのも選択肢。

旅行サービス手配業を営んだ者には、無登録の場合の罰則が置かれています(法74条6号)。受託の契約書では、受託者が何の手配をするのか(宿泊、運送、通訳案内など)を業務の範囲の条に具体的に書いておくと、登録の要否の確認がしやすくなります。有償での送迎は、運送の許可の問題として別に見る必要があり、このページでは扱いません。

登録のないまま進めたときに何が起きるか:罰則、登録の制限、公表、そして参加者の保護

旅行業を、登録を受けずに営んだ者には、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金が科され、又はこれらが併科されます(法74条1号)。法人の代表者や従業者が業務に関して違反したときは、行為者を罰するほか、法人にも罰金刑が科されます(法82条)。拘禁刑という表記は、刑法等の一部改正に伴い2025年6月1日から旅行業法の条文に反映されている現行の表記です。

刑の重さとは別に、将来への影響があります。この法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者は、登録を拒否され(法6条1項2号)、その者が役員にいる法人も同様です(同項7号)。また、観光庁長官は、法令に違反する行為を行った者の氏名・名称などを公表することができます(法71条)。後から自社で登録を受けて団体旅行を扱いたいと考えたときに、過去の違反が障害になりえます。

契約の効力は、登録の有無だけで決まるわけではなく、返金や事故の責任は、契約の相手方である主催者に向かうと見ておく必要があります。参加者との契約が当然に無かったことになるかどうかは、個別の事情によります。

登録を受けた旅行業者の取引で働く仕組みと、無登録の主催者の取引
仕組み条文登録のない主催者が一括して引き受けた場合
取引条件の説明と書面の交付法12条の4、12条の5法律上の説明・書面の仕組みは働かない。規約と募集要項、最終確認画面で補うしかない。
広告の規制(実施者の表示、誇大広告の禁止)法12条の7、12条の8広告の記載が実態と違えば、主催者自身の説明責任の問題になる。
企画旅行の円滑な実施のための措置(代替サービスの手配など)法12条の10提供者に任せる部分も、主催者が契約の相手方として責任を問われる。
営業保証金・弁済業務保証金による弁済法7条、17条、48条旅行者が弁済を受ける制度がない。事業者が破綻すれば、前払いした代金が戻らないおそれがある。
特定商取引法の適用除外特定商取引法26条1項8号ハ適用除外は受けられない。表示・通知などの規律を主催者の取引としても守る。

参加者から見れば、旅行業の登録の有無は事前にわかりにくく、トラブルが起きてから初めて知ることになりがちです。観光庁は、申込みの前に、店頭・広告・パンフレットなどに表示された登録番号で旅行会社の登録を確認するよう呼びかけています。規約の文言で旅行業者でないことを断るだけでなく、お金と申込みの流れを変えることが、リスクを避ける実質的な手段になります。参加規約の取消料や責任の条の設計はツアー・遠征・海外プログラムの取消料と旅費と事故と免責で、未成年の参加者と保護者の契約の組み方は未成年・保護者・家族受講と健康の申告で扱います。留学サポートの事業者として規約を組む場合は留学サポート・海外研修プログラムの利用規約に続きます。

起きがちなこと

よくあるご質問

イベントの参加費に宿泊費や送迎費を含めると、旅行業になりますか?

主催者が参加者のために宿泊や運送のサービスの提供を受けることについて代理・媒介・取次ぎをし、報酬を得て、不特定多数を相手に反復継続して行うなら、旅行業に当たりうるとされています(旅行業法2条1項・3条、施行要領、Q&A)。含める金額の中に手配の対価や利益が入っているか、募集の範囲、継続の意思といった事実で判断されます。「事業」として成り立つかどうかは、行おうとする者が主体的に判断し、見解を求められたときは登録行政庁が示すものとされています(Q&A)。

実費で手配しているだけで、手数料を取っていなければ大丈夫ですか?

実費だけとは言えない場合があります。Q&Aは、運送・宿泊の手配は実費で行っても、同じツアーのイベント料金にその分を上乗せして利益を上げる形は、手配とイベントが一体として行われ、全体として収入が経費を上回るから営利性があるとしています。反対に、構造的に利益が出ない対価設定であれば営利性はないとされます。収支の内訳と、提供者からの割戻しの有無を確かめます。

旅行会社と組むとき、申込みと代金は誰が受けるべきですか?

施行要領は、オーガナイザーが旅行業者の名で契約する場合でも、オーガナイザーが申込みを受け付け旅行代金を収受すると無登録営業になるとしています。旅行の部分は旅行業者が直接申込みと代金を受ける形に、主催者の側を合わせます。募集広告も、イベント部分と旅行部分を分けて表示し、旅行費用の支払先を旅行業者にします。

教室の生徒だけに声をかけるサマーキャンプや合宿なら、対象外ですか?

施行要領には、同一職場内や学校等による生徒向けの募集、団体の構成員を対象とした募集を、直接的な募集とみなさない例があります。Q&Aは、自治体が市内の小学生を対象に行ったサマーキャンプには不特定多数性はないとされ、全国の小学生を対象とした合宿には不特定多数性が認められた例を挙げています。教室の生徒が、例にある団体に当たるかは、団体としての実態で見られるため、名前だけでは決まりません。報酬や反復継続の判断も別にあります。

申込みフォームで宿泊の予約もできるようにしてよいですか?

ウェブサイトを介した取引で、旅行者と提供事業者との取引となる旨が、遅くとも予約入力画面から確認画面に移る際までに明確に表示され、システム上もそうなっていて、主催者が取引に働きかけない場合は、旅行業に該当しない例とされています。主催者が申込みを受け付けて代金を受け取る設計になっていると、この例には当たりません。まず誰と誰の取引になるのかを決め、画面の表示とお金の流れを合わせます。

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本ページは一般的な情報提供です。法令の運用や行政の解釈は、改正や個別の事情によって変わることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた教室の会員規約・受講規約・受講契約書・入会申込書、語学教室の概要書面・契約書面、ワークショップ・海外プログラム・大会の参加規約、講師・スタッフとの業務委託契約書、スタジオの利用規約・利用契約書、予約プラットフォームの規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月20日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 観光庁

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