このページの要点
- 道路の使用は道路交通法77条(警察署長)、道路に露店等を継続して設けるのは道路法32条(道路管理者)と、制度が別であることを前提に、場所ごとに誰が取るかを書く。
- 興行場の許可は会場を経営する者が受けるため、貸館契約で許可の維持と収容人員、消防計画に基づく運用を確認する。
- 飲食の営業の許可・届出は営業を営む者が受けるので、出店者の申告と写しの提出を出店承諾の条件にし、火気の届出も出店者ごとに確認する。
- 確認する人・取る人・費用・取れなかったときの扱いの四つを事項ごとに決め、現場で行為する人と契約上の責任者と許可の名義人を一致させる。
結論:許可や届出の有無を調べる前に、「誰が確認し、誰の名義で取り、取れなかったときは誰が何を負担するか」を契約に書く
イベントや催事を開くとき、道路や公園を使うのか、観客に見せる施設を使うのか、飲食を出すのか、人が集まる場所の警備や防火をどうするのかによって、確認すべき許可や届出が変わります。ここで多くの主催者が行き当たるのは、制度の中身の難しさより、「その確認を誰がするのか」が決まっていないことです。運営を請けた会社は主催者が取ったと思い、主催者は会場が整えたと思い、出店者は自分の分だけ気にする、という状態で当日を迎え、直前になって許可が取れていなかったと分かる、という事態が典型です。申請の手続の細目は、窓口によって違い、変更もあるため、このページでは書きません。契約の側から、確認の対象、確認する人、取る人の名義、取れなかったときの扱いを整理します。
結論は三つです。第一に、場面ごとに、法令が許可や届出を求める相手を知っておくことです。道路、興行場、飲食、警備、防火で、許可を出す機関と、許可を受ける人が違います。第二に、許可や届出は、現場でその行為を行う人が受けるのが自然であり、契約上の責任者と許可を受ける名義人を一致させることです。第三に、許可が下りない、条件が付く、取り消されるといった場面で、中止の判断者、費用の負担者、出店料や委託料の扱いを、契約にあらかじめ書くことです。出展者向けの規約の組み方は展示会・マルシェ・イベントの出展規約(主催者側)で、出店支援会社と出店者の契約は催事・マルシェへの出店支援と出店者の契約で書いています。
| 場面 | 根拠となる法令 | 許可・届出を受ける先 | 契約上、確認する人の例 |
|---|---|---|---|
| 道路で、場所を移動しないで露店・屋台を出す、祭礼行事やロケーション等で一般交通に著しい影響を及ぼす使い方をする | 道路交通法77条1項 | 所轄警察署長の許可 | 道路を使う催しを企画する主催者、又は現場で行為をする出店者 |
| 道路に、露店、商品置場などを設け、継続して使う | 道路法32条1項 | 道路管理者の許可 | 同上(77条の許可とは別の制度) |
| 観客に見せ、聞かせるための施設(映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸、観せ物)を経営する | 興行場法1条、2条 | 都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可 | 会場の経営者(施設側)。主催者は、使う会場が許可を受けたものかを確認する |
| 飲食を調理して提供する(飲食店営業など) | 食品衛生法54条、55条、57条、同法施行令35条 | 都道府県知事の許可、又は届出 | 実際に調理・販売する者(出店者、又は飲食を一括して担う事業者) |
| 人や車両が雑踏する場所での事故を警戒し、防止する業務を、他人の需要に応じて行う | 警備業法2条1項2号、4条 | 警備業を営む者が、公安委員会の認定を受ける | 警備を委託する側(主催者、運営会社)。委託先が認定を受けた警備業者かを確認する |
| 多数の者が出入りする防火対象物の管理、火を使う設備・器具の取扱い | 消防法8条、9条 | 防火管理者の選任・届出(管理権原者)、火気の使用は市町村の条例 | 会場の管理権原者、火気を使う出店者 |
窓口の名称、必要書類、受付の時期は地域によって違います。この表は、確認の対象の整理であり、申請の手続を説明するものではありません。
道路・歩道・広場で開く催し:道路使用許可(道路交通法77条)と道路占用許可(道路法32条)は別の制度
マルシェ、パレード、撮影を伴うイベント、屋台の出る祭りなど、道路を使う催しで、最初に確認するのは、道路の使い方です。道路交通法77条1項は、所轄警察署長の許可を受けなければならない者を、四つの場合に分けて挙げています。工事や作業をする者(1号)、道路に石碑・銅像・広告板・アーチなどの工作物を設ける者(2号)、場所を移動しないで、道路に露店、屋台店その他これらに類する店を出そうとする者(3号)、そして祭礼行事やロケーションをするなど、一般交通に著しい影響を及ぼすような道路の使い方をする者で、公安委員会がその土地の道路や交通の状況に応じて定めたもの(4号)です。4号は、公安委員会が定める行為によって内容が決まるため、同じ催しでも、地域によって許可が必要になる範囲が違い得ます。
この許可は、交通の安全と円滑を守るためのものです。所轄警察署長は、申請に係る行為が現に交通の妨害となるおそれがない場合、許可の条件に従って行えば交通の妨害となるおそれがなくなる場合、現に交通の妨害となるおそれはあるが公益上又は社会の慣習上やむを得ない場合のいずれかに該当するときは、許可をしなければなりません(同条2項)。許可をするときは、交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付けられ(同条3項)、あとから条件を変更し、又は新たな条件を付けることもできます(同条4項)。条件に違反したときや、特別の必要が生じたときは、許可を取り消し、又は効力を停止できます(同条5項)。
契約で意識しておきたいのは、この許可が、「取って終わり」ではなく、条件と取消しの可能性を伴うことです。条件には、通行を確保する幅、警備員や誘導員の配置、時間帯、後片付けなどが付くことがあります。その条件を守るのは、許可を受けた者だけでなく、現場で働く運営会社や出店者も同じです。契約には、許可の条件を現場の全員に周知すること、条件を守れなかったときに許可の取消しや中止の指示を受けても異議を述べないこと、取消しの原因が誰の違反にあるかで費用の負担が変わること、を書いておきます。
道路法32条1項は、これとは別の制度です。道路に露店、商品置場その他これらに類する施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合には、道路管理者の許可を受けなければならない、としています(同項6号)。道路交通法77条の許可が交通の安全と円滑を守る観点で警察署長が出すのに対し、道路法32条の許可は、道路そのものの管理の観点で道路管理者が出します。行為の内容によっては、両方が関係する場合があります。そのために、32条は、許可に係る行為が道路交通法77条1項の適用を受けるものであるときは、申請書の提出を警察署長を経由して行えること(同条4項)、道路管理者が許可を与えるときは警察署長に協議すること(同条5項)を定めています。窓口が連携していても、二つの制度があることは変わりません。契約では、「道路を使用するための許可その他の手続」とだけ書かず、どの制度の許可を、誰が、いつまでに取るのかを、場所ごとに決めます。
公園、広場、河川敷、駅前の広場などは、それぞれの管理者が使用の手続を定めており、道路ではない場所を使う催しには、その場所の管理者の許可や承諾が必要になることがあります。私有地の駐車場や空き地を使う場合も、所有者や管理者の承諾が要ります。法令の条文では横断的に説明しきれないため、契約には「会場の管理者の使用許可又は承諾」を確認の対象に加え、その確認を誰が行うかを書いておきます。
条文例道路・公共の場所を使う催しの許可の分担
- 乙(運営者)は、本件催事の実施に当たり、道路その他の公共の場所の使用に関し、法令に基づき必要となる許可又は管理者の承諾の有無を、開催日の○日前までに確認し、結果を甲(主催者)に書面で報告します。
- 前項の許可又は承諾は、甲の名義で受けるものとし、甲は、その申請をします。ただし、出店者が個別に使用する区画又は設備に係る許可は、当該出店者が受けるものとします。
- 許可に付された条件は、甲、乙及び出店者の全員が遵守するものとし、乙は、条件の内容を現場の関係者に周知します。
- 許可が得られないとき、許可に条件が付されたことにより催事の全部又は一部の実施が困難になったとき、又は許可が取り消され若しくはその効力が停止されたときは、甲が、乙と協議して、催事の中止、縮小又は変更を決定します。この場合の費用は、原因が当事者の一方の責めに帰すべき事由によるときは当該当事者が、それ以外のときは別紙の定めに従って負担します。
許可の名義人を主催者にするか、運営者にするかは、催しの実態によります。実際に道路を使う行為をする者と、契約上の責任者を一致させることが、考え方の中心です。
観客に見せる会場:興行場法の許可(1条・2条)と、貸館契約で確認すること
音楽、演劇、映画、スポーツ、演芸、観せ物を公衆に見せ、聞かせる施設は、興行場法で「興行場」と定義されています(興行場法1条1項)。興行場を業として経営しようとする者は、都道府県知事(保健所を設置する市・特別区では市長・区長)の許可を受けなければなりません(同法1条2項、2条1項)。許可の対象になるのは、興行を「行う者」ではなく、「興行場を経営する者」です。ここが、主催者が最も混同しやすい点です。劇場、ホール、映画館のような常設の施設は、施設の経営者が許可を受けており、主催者はその施設を借りて催しを開きます。この場合、主催者が確認するのは、借りる施設が許可を受けた興行場かどうかです。
貸館契約では、会場の経営者に、必要な許可を受けていること、その許可を催しの期間中も維持すること、許可に付された条件や、条例の衛生基準に適合する状態を保つことを、確認又は約束させておきます。興行場法3条は、営業者が換気、照明、防湿、清潔その他入場者の衛生に必要な措置を講じなければならないと定めており、会場の衛生上の維持は営業者である会場側の責任として整理されています。主催者が持ち込む機材、客席の配置の変更、仮設の設備が、この維持に影響する場合は、会場の了解を得ることを、契約の手順として書いておきます。
仮設の会場を設けて公衆に見せる、屋外に臨時の舞台と客席をつくる、といった形の催しでは、主催者自身が「興行場を経営する」立場になるのかが問題になり得ます。条文は「業として興行場を経営しようとする者」を許可の対象としているため、一回限りの催しがこれに当たるのか、どのような扱いになるのかは、条文だけでは決まりません。この判断は、会場の所在地を所管する窓口で確認する事項であり、契約には「興行場に関する許可その他の手続が必要かどうかの確認を、誰がいつまでに行うか」を書いておけば足ります。確認の結果、許可が必要と分かった場合の中止の判断者や、費用の負担者も、前の項の条文例と同じ形で決めます。
防火の面でも、会場の管理は重要です。消防法8条1項は、学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店などの、多数の者が出入りする防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者に、防火管理者を定め、消防計画の作成、避難の訓練の実施、消防の用に供する設備の点検、火気の使用の監督、収容人員の管理などの業務を行わせることを求めています。会場を借りて催しを開く主催者は、この管理権原を持つ会場側の消防計画に従い、収容人員を超える入場をさせないこと、避難経路を塞ぐ配置をしないこと、火気を使うときは会場の承諾を得ることを、契約で約束します。観客の人数を管理するチケットの設計はライブ・公演・イベントのチケット規約と関係します。
ヒヤリングで確かめること 貸館契約で確かめること
- 会場は、興行場として必要な許可を受けた施設ですか。貸館契約に、会場の経営者の確認、又は約束として記載します。受けていない施設なら、催しの形態によって、窓口に確認する必要が生じます。
- 収容人員の上限と、消防計画に基づく運用のルールは示されましたか。チケットの販売数や出店者数の上限を、収容人員から逆算して決めます。
- 仮設の設備や火気を持ち込むとき、会場の承諾が必要ですか。承諾の方法(書面、事前の申請)と期限を決め、出店者にも周知します。
- 会場側の都合(設備の故障、使用の制限)で催しに影響が出たとき、費用は誰が負担しますか。会場の使用料の返還、代替の会場の手配、チケットの払戻しの費用の分担を、貸館契約と参加者向けの規約の双方で一致させます。
飲食を出すとき:営業の許可と届出(食品衛生法55条・57条)と、「誰の営業か」
マルシェやフェス、スポーツ大会で、食べ物や飲み物を出すとき、確認するのは食品衛生法の営業の許可と届出です。食品衛生法54条は、公衆衛生に与える影響が著しい営業で政令で定めるものについて、都道府県が施設の基準を条例で定めると規定しています。この営業は、食品衛生法施行令35条に列挙されており、第一号は飲食店営業、第十一号は菓子製造業です。これらの営業を営もうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません(食品衛生法55条1項)。また、許可の対象ではない営業(政令で定める公衆衛生に与える影響が少ない営業などを除く)を営もうとする者は、あらかじめ、営業所の名称、所在地などを都道府県知事に届け出なければなりません(同法57条1項)。
契約で重要なのは、許可や届出を受ける人は、「営業を営もうとする者」であることです。催しで食べ物を出す場合、次の三つの形が考えられます。
- 出店者が、各自の屋台やキッチンカーで調理して販売する。この場合は、出店者が自分の営業として許可や届出を受け、主催者は、出店を承諾する条件として確認します。
- 主催者が、飲食を一括して調理・提供し、出店者は食材の提供などにとどまる。この場合は、主催者(又は主催者から委託を受けた事業者)の営業になります。
- 運営会社が飲食のスペースを運営し、出店者を募って販売させる。この場合は、運営会社と出店者の間で、誰の営業かを契約で整理しておく必要があります。
どの形をとっても、許可や届出を持たない人が調理や販売を行うことがないよう、契約に確認の手順を書いておきます。たとえば、出店者は、出店の申込み時に営業の許可又は届出の内容を申告し、開催の○日前までに写しを提出すること。主催者は、許可の内容と出店する品目が合致しているかを確認し、不備があれば出店を承諾しないこと。許可や届出が得られない、又は期限までに提出されないときは、出店を取り消せること。取り消した場合の出店料の扱いは、出店者の責めに帰すべき事由にあたるため、返還しない、又は一部を返還すると定めておくこと、などです。
催しのための臨時の出店について、許可の期間、手続の簡略化、出店ごとの届出の要否などは、地域の運用に違いがあります。条文は都道府県知事の許可と届出を定めていますが、窓口や運用の詳細は、出店する地域の所管窓口に確認する事項です。契約には、「出店者は、出店する地域の所管窓口に確認のうえ、必要な許可又は届出を行う」と書くことで、確認の責任を出店者に置きます。主催者の側では、確認の結果を申告させる書式を用意しておくと、運用が安定します。
火気の使用も、飲食の出店では重要です。消防法9条は、火を使用する設備や器具の位置、構造、管理、取扱いなどを、政令で定める基準に従い、市町村の条例で定めると規定しています。催しでの火気の使用に、届出や消火器の準備が条例で求められることがあり、これは出店者ごとに必要になる手続です。契約には、火気を使う出店者が、条例に基づく届出を行うこと、主催者が取りまとめて窓口に申請する場合は、その旨と費用の分担を決めること、を書いておきます。主催者が出展者向けに定める運営のルールは、展示会・マルシェ・イベントの出展規約(主催者側)と合わせて確認します。
雑踏の警備とスタッフの手配:警備業法2条1項2号、4条と、運営を請ける会社の業務範囲
多くの人が集まる催しでは、来場者の整理、動線の誘導、交通の誘導が必要になります。警備業法2条1項2号は、「人若しくは車両の雑踏する場所又はこれらの通行に危険のある場所における負傷等の事故の発生を警戒し、防止する業務」であって、他人の需要に応じて行うものを、警備業務の一つとしています。警備業を営もうとする者は、公安委員会の認定を受けなければなりません(同法4条)。
契約の観点で押さえるのは、二点です。第一に、雑踏の警備や交通の誘導を、外部の事業者に有償で任せるときは、その事業者が警備業の認定を受けた警備業者かどうかを確認することです。契約書には、委託先が認定を受けていること、認定が失われたときは直ちに知らせること、を書いておけます。第二に、運営を請ける会社に、スタッフの手配や当日の運営を任せるとき、その業務に雑踏の警備が含まれるのかを、契約で区別しておくことです。受付、案内、行列の整理、会場内の誘導といった運営上の業務と、事故の発生を警戒し防止することを目的とする警備の業務は、実際には近接しています。運営会社が手配するスタッフの役割を、案内や整列の補助にとどめるのか、警備業者に切り出すのかを、契約の業務範囲の条に書いておけば、後で業務の性質が争われる場面を減らせます。
警備に当たるかどうかの線引きは、業務の実態と「他人の需要に応じて行う」かどうかで判断されるため、一般的な説明では決まらない場面があります。その場合は、所管の警察の窓口に確認する事項として扱い、契約には、確認を誰が、いつまでに行うかを書いておきます。主催者が自分の従業員やボランティアで自社の催しの案内を行う場合と、他の事業者に有償で任せる場合とでは、契約の形も異なります。ボランティアを募るときの責任の分担や事故の扱いは事故・けがと免責条項の考え方が参考になります。
責任分担の書き方:確認する人・取る人・費用・取れなかったとき
ここまでの内容を、契約書にまとめるときは、事項ごとに「確認する人」「申請・取得する人」「費用を負担する人」「取れなかったときの扱い」の四つを決めます。四つが揃っていない条は、実際に問題が起きたときに使えません。
| 事項 | 確認する人 | 申請・取得する人 | 費用の負担 | 取れなかった・取り消されたとき |
|---|---|---|---|---|
| 道路の使用 | 運営者が確認し、主催者に報告 | 主催者(名義) | 主催者 | 主催者が中止・縮小・変更を決定。原因が運営者の遅れなら運営者が負担 |
| 会場(興行場)の許可の維持 | 主催者が貸館契約の時点で確認 | 会場の経営者 | 会場の経営者 | 会場の都合なら、使用料の返還と代替会場の手配費用を会場が負担 |
| 飲食の営業の許可・届出 | 主催者が出店の承諾時に確認 | 出店者(各自の営業) | 出店者 | 出店を取り消す。出店料は返還しない、又は一部返還 |
| 火気の使用の届出 | 運営者が取りまとめ | 出店者(火気を使う者) | 出店者 | 火気の使用を認めない。代替の設備に変更 |
| 雑踏の警備 | 運営者・主催者 | 警備業者(認定を受けた者) | 主催者 | 警備業者を変更。人員が確保できないときは入場者数を制限 |
表は記入の例です。実際の催しでは、誰が名義人になるのが現場に合うか、費用を誰が負担するのかは、催しの規模や契約関係で決まります。
責任の分担を決めるときの基本は、現場で行為をする人が許可を受けることです。道路に屋台を出すのは出店者、調理をして販売するのも出店者、会場を経営するのは会場の経営者、雑踏の警備を行うのは警備業者です。主催者や運営会社の役割は、取りまとめて確認し、期限までに揃っていないときに出店や使用を認めない権限を持つことです。この組立てにすると、契約上の責任者と許可の名義人が一致し、「取ったつもり」「取ってくれたと思った」のすれ違いが起きにくくなります。
許可・届出を誰が取るかを決める順番
その行為を、現場で実際に行うのは、特定の出店者や事業者ですか。
はいその者が、自分の名義で許可・届出を受ける。主催者は、写しの提出を出店の条件にして確認する。
いいえSTEP2へ。
その行為は、催し全体のために、主催者が一括して行うものですか(道路の使用、会場の使用、全体の警備など)。
はい主催者が名義人となる。運営会社に申請を任せる場合も、名義は主催者のままにして、運営会社の役割を委託の範囲として書く。
いいえSTEP3へ。
その行為の許可・届出を維持するのは、会場や施設の経営者ですか。
はい会場の経営者が許可を維持する。主催者は、貸館契約で維持を約束させ、変更があれば通知を受ける。
いいえ個別の事情で判断する。関係する当事者の間で、確認、取得、費用、取れなかったときの扱いを書面で決める。
許可が下りない、条件が付く、取り消される、といったときの効果は、契約の定めがなければ、民法の一般原則で処理されます。双方に責めがない事由で債務を履行できなくなれば、債権者は反対給付を拒めます(民法536条1項)。債務者の責めに帰すべき事由があれば、債務不履行による損害賠償の問題になります(同法415条1項)。許可の取得を任された運営者が、申請の遅れや書類の不備で許可を得られなかったときは、運営者の責任になりやすく、道路の状況や行政の判断で許可が得られなかったときは、双方に責めがない事由に近くなります。この区別は、争いが生じてから行うと、立証が難しく、時間もかかります。そのため、契約には、許可が得られなかった場合の中止の判断者、判断の期限、費用の分担の原則を書き、申請の遅れや書類の不備が原因のときは、申請を担当した者の負担とする例外を置いておきます。
契約の書き方が決まったら、実務では確認の順序を決めて動きます。会場を決める時点で、会場が許可を受けているか、収容人員はいくらかを確認します。その後、道路や公園を使うかどうか、飲食を出すかどうか、火気を使うかどうかを洗い出します。次に、それぞれの窓口で、必要な手続と受付の時期を確認し、全体の工程表に落とします。窓口ごとに受付の時期が違うため、開催日からさかのぼって、最も早く確認が必要なものから着手します。
開催前の確認の流れの例
- 会場を決める時会場の経営者に、許可の有無、収容人員、消防計画、使用の制限(火気、仮設、音響)を確認する。貸館契約に書く。
- 企画の骨組みが決まった時道路や公共の場所を使うか、飲食を出すか、火気を使うか、警備を要するか、を洗い出す。誰の営業・行為かを整理する。
- 出店者・運営会社の契約を結ぶ時許可・届出の確認、取得、費用、取れなかったときの扱いを契約に書く。出店者から営業の許可・届出の写しの提出を求める。
- 開催の日が近づいた時写しの提出状況、許可に付された条件の周知、警備・誘導の体制を確認する。揃わない出店は承諾しない。
- 当日許可の条件が守られているか、火気の使用が届出の内容に合っているかを現場で確認する。変更が生じたときの連絡先を決めておく。
よくある疑問と考え方 確認を誰がするのか
運営を請けた会社に、許可の確認まで任せてよいですか。
任せられます。ただし、確認と報告を任せることと、許可を受ける名義人は別です。名義人は、行為をする人や主催者のままにして、運営会社は確認と取りまとめを行う、という形が整理しやすくなります。運営会社に任せる範囲は、業務範囲の条に書いておきます。
出店者が許可を持っていることを、主催者はどこまで確認すべきですか。
申込み時の申告と、開催前の写しの提出で足りる場面が多いと考えられます。ただ、食品のような公衆衛生に関わる出店では、提出された内容と、出店する品目が合致しているかまで確認し、不備があれば承諾しないと決めておくと、事故が起きたときの説明が成り立ちます。
契約書に「必要な許可は乙の責任で取得する」と一行だけ書けば足りますか。
責任の所在を示す意味はありますが、どの許可か、いつまでか、取れなかったときの費用と中止の扱いが分からず、争いになったときに使えません。事項ごとに四つを決めます。
天候や安全を理由とした中止の基準は振替・休講と最少催行人数・悪天候の中止で、事故やけがの責任の分担は事故・けがと免責条項で扱っています。海外の団体行事に旅行の手配が含まれる場合の登録の問題はイベント・合宿・留学プログラムと旅行業法にあります。
よくあるご質問
道路でマルシェを開く場合、警察の許可と、道路管理者の許可の両方が必要ですか。
二つは別の制度です。道路交通法77条1項は、場所を移動しないで道路に露店や屋台店を出そうとする者などに、所轄警察署長の許可を求めています。道路法32条1項は、道路に露店、商品置場などの施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合に、道路管理者の許可を求めています。行為の内容と場所によって、どちらが関係するかが変わり、両方が関係することもあります。窓口を経由する手続(道路法32条4項)や協議の定め(同条5項)がありますが、制度が二つあることは変わりません。道路を使う場所ごとに、所管の窓口に確認します。
貸しホールで催しを開く場合、主催者として興行場法の許可を取る必要がありますか。
興行場法は、業として興行場を経営しようとする者に許可を求めています(2条1項)。常設のホールは、通常、会場の経営者が許可を受けて経営しているため、主催者が確認するのは、借りる会場が許可を受けた施設かどうかです。貸館契約には、会場側が必要な許可を受けていて、期間中も維持することを書いておきます。仮設の会場をつくる場合など、主催者自身が経営する立場になりうるときは、所管の窓口に確認します。
出店者の飲食の許可や届出は、主催者が代わりに取れますか。
許可や届出は、営業を営もうとする者が受けるものです(食品衛生法55条1項、57条1項)。出店者が各自の営業として調理・販売するなら、出店者が自分で受けるのが原則です。主催者が飲食を一括して提供する形なら、主催者の営業になります。契約では、出店者から申込み時に申告させ、開催前に写しを提出させ、揃わない出店は承諾しない、と決めておきます。
イベントの警備を知人のスタッフに頼む場合、警備業の認定が必要ですか。
警備業法は、人や車両が雑踏する場所での事故を警戒し、防止する業務を、他人の需要に応じて行うものを警備業務とし(2条1項2号)、警備業を営む者に認定を求めています(4条)。有償で他の事業者に任せるのか、自分の催しを自分や知人が手伝うのかで、契約の形が変わります。線引きの判断が難しいときは、所管の警察の窓口に確認する事項として、契約に確認の手順を書いておきます。
許可が下りずに催しを中止した場合、出店者に出店料を返す必要がありますか。
原因によります。許可の取得を任された者の申請の遅れや書類の不備が原因なら、その者の責任の問題になり、出店料の返還と費用の負担を求められる場面が出てきます。行政の判断のように、双方に責めがない事由なら、民法536条1項により、出店者は出店料の支払を拒めます。許可が得られなかったときの中止の判断者、返還の範囲、費用の負担の原則を、契約に書いておくと、争いが減ります。
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