このページの要点
- 申込金の性質(解約手付、取消料の内払い、返還しない前払金)を決め、取消しの段階は主催者の費用が確定する日に合わせる。
- 小間割りは主催者の裁量と明記し、搬入出・設営・営業のルールは会場の使用規則と合わせる。違反の措置は段階で書く。
- 中止は原因別(主催者都合、不可抗力、荒天、会期短縮)に返還の範囲を決める。実費を差し引くなら算式と内訳の開示を書く。
- 展示物の管理は出展者、設営物による来場者の事故は主催者、持込み機材の事故は出展者と分け、保険の役割も決める。食品・酒類・古物などの許可は出展者の責任と書く。
結論:出展規約は、主催者・出展者・会場・来場者の四者のうち、主催者が引き受ける範囲を先に決めて書く
展示会、マルシェ、ハンドメイドの販売会、教室の合同発表会のように、複数の出展者を集めて開く催しでは、主催者が出展者から出展料を受け取り、会場を確保し、小間(ブース)を割り振って、来場者を迎えます。関係者は四者です。主催者と出展者の間に出展契約があり、主催者と会場の管理者の間に会場の使用契約があり、来場者は主催者と出展者の双方と接します。出展規約は、このうち主催者が出展者に対して何を約束し、何を出展者に求めるのかを定める書類です。
書き方の要点は三つです。第一に、出展料の支払時期と、取消しの段階ごとの扱いを、申込みの前に示すこと。第二に、小間の割当て、搬入出、設営、営業、撤去の規則を、会場の使用規則と食い違わない形で定め、違反したときの措置を段階にすること。第三に、中止・縮小・延期のときの出展料の返還と、展示物の盗難・破損、来場者の事故の責任の分担を、事前に決めておくことです。販売を伴う出展では、食品・酒類・古物・化粧品などの許可や表示の責任が出展者にあることを、規約と申込書の両方に書きます。
出店支援会社が出店者と結ぶ契約や、催事への出店の仕組みはスタジオ・教室スペース・予約プラットフォーム・出店のページで、会場でスタッフを手配する場合の委託の契約は講師・出演者・スタッフとの業務委託のページで扱っています。このページは、出展者を募る主催者の側から、出展規約を組む考え方を整理します。法令の条文で確認できる範囲で書いています。
| 書類 | 書くこと | 注意 |
|---|---|---|
| 出展申込書 | 出展者の名称・連絡先、出展する商品や展示物、希望の小間、電源などのオプション、申告事項(許可・保険・屋号) | 販売内容と販売方法を申告させる。申告と異なる出展を断る根拠になる |
| 出展規約 | 契約の成立、出展料、取消し、小間の使用、禁止事項、中止、責任の分担、個人情報、反社会的勢力の排除 | 会場の使用規則・法令の遵守を出展者に求める条を置く |
| 出展者マニュアル(運営要項) | 搬入出の日時と動線、設営の時間、電源容量、ごみの扱い、当日の連絡先、緊急時の対応 | 規約には「マニュアルに従う」と書き、日程は会期ごとに更新する |
| 会場の使用規則(会場管理者が定める) | 火気、騒音、床の養生、搬入口、駐車、退館の時刻 | 規約で守らせ、違反した場合の責任の所在を決める |
規約に搬入出の日時まで書くと、会期ごとの修正が規約全体の変更になります。会期ごとに変わる事項はマニュアルへ、共通の事項は規約へ分けます。
申込み・出展料・取消し:成立の時点、支払の時期、段階的な取消料
契約の成立は、募集の形で分かれます。先着順で受け付ける催しなら、申込みの受付の完了(支払の確認)を成立の時点にする方法が考えられます。審査や選考のある催し(出展者の顔ぶれで催しの質を保ちたいマルシェなど)なら、出展者の申込みを「申込み」、主催者の採用の通知を「承諾」にして、通知までは契約が成立しないと書きます。契約は、申込みに対して相手方が承諾したときに成立します(民法522条1項)。通知の方法(メール、フォーム、郵送)と、通知がいつ到達したと扱うかも書いておきます。意思表示は相手方に到達した時から効力を生じます(同法97条1項)。選考で落とした出展者への連絡と、既に受け取った出展料の返還の期限も決めておきます。
出展料は、小間料のほか、電気・水道・通信などのオプション、管理費、共通の保険料、広告の掲載料などの内訳を示します。内訳を示すと、中止や取消しのときに、どの部分を返還し、どの部分を実費として差し引くかを説明できます。税込・税別の別も、金額の表示とあわせて明記します。支払の時期は、申込時に全額、申込時に一部と開催の一定期間前に残額、開催後払い、のいずれかを決めます。支払のない申込みは承諾を取り消せること、支払の期限に遅れたときの扱いも書きます。
出展者の都合による取消しの段階(設計の考え方)
- 申込み後〜準備の早い時期主催者に費用が生じていない時期。出展料を全額返還する、または事務手数料のみを差し引く。
- 会場の手配・印刷物・小間の割当てが確定する時期実費が生じ始める。出展料の一部を返還し、一部を取消料とする。
- 開催の直前期小間を再募集することが難しい時期。出展料の全部を取消料とする、または大部分を取消料とする。
- 当日の欠席・無断の不参加出展料は返還しない。小間の再割当ての可否と、次回以降の出展の制限を書く。
段階の区切りは、主催者の費用が確定する日(会場費の確定、印刷物の発注、小間の割当ての確定)に合わせると説明できます。区切りの日付は、規約本文ではなく運営要項に書いても構いませんが、申込みの前に出展者が見られるようにします。
取消料を受け取る定めは、民法の考え方で整理できます。当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ(民法420条1項)、違約金は賠償額の予定と推定されます(同条3項)。出展料の一部を「申込金」として受け取る場合は、その性質を決めておきます。解約手付とするなら、出展者は、主催者が契約の履行に着手するまでは、手付を放棄して契約を解除できます(同法557条1項、559条による有償契約への準用)。取消料の内払いとするなら、取消しの段階に応じた精算の対象になります。返還しない前払金とするなら、その理由(小間の確保のための費用)を示します。申込金の性質を決めないまま「返金しません」と書くと、取消しの時期にかかわらず出展料の全部を拒む趣旨に読まれます。
出展者が個人のとき(ハンドメイド作家や趣味で出展する人など)は、消費者契約法の適用が問題になります。「消費者」とは個人をいい、事業として、または事業のために契約の当事者となる場合の個人は含まれません(消費者契約法2条1項)。事業として、または事業のために出展する個人は消費者に当たらないため、同法は適用されませんが、販売を目的としない体験出展や趣味の出展のように、事業のために契約をしているとは言い切れない場合は、消費者に当たる可能性があります。当たる場合は、キャンセルに伴う取消料のうち、同じ種類の契約の解除で事業者に通常生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効です(同法9条1項1号)。出展者が事業者かどうかは申込書で申告させ、取消料の段階の根拠(主催者の費用が確定する時期)を説明できるようにしておきます。また、不特定多数の出展者に同じ規約を示して契約する場合は、定型約款に当たることがあります。その場合、相手方の義務を加重する条項のうち、信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものは、合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。事業者どうしの契約であっても、取消料を過度に重くする書き方は避けます。
小間割り・搬入出・設営・営業のルールと、違反したときの措置
小間の割当ては、主催者の裁量であることを明記します。出展者の希望は聞くが、位置、広さ、向きは主催者が決め、来場者の動線、防火上の要請、会場の制約、出展者の組合せなどを考慮して変更する場合があると書きます。割当てを理由とする出展料の返還は認めない、と書く場合も、割り当てた小間が申込みの内容と大きく異なるときは協議する旨を残しておきます。小間の使用は、割り当てられた範囲に限り、通路や他の小間にはみ出さないこと、高さや荷重の制限を守ること、小間の無断での譲渡・転貸・共同出展者の追加をしないことを定めます。
| 項目 | 定めること | ねらい |
|---|---|---|
| 出展物の範囲 | 申込書に記載した商品・展示物に限る。禁止品(危険物、模倣品、法令で認められない効能をうたう商品、許可のない食品や酒類)を示す | 申告と違う出展を断る根拠にする |
| 搬入出 | 搬入と搬出の日時、車両の台数と駐車の場所、荷さばきの場所、開催中の搬出入の禁止 | 来場者の安全と動線を守る |
| 設営・装飾 | 設営の開始と完了の時刻、高さや構造物の制限、床や壁を傷つけない養生、固定の方法 | 会場の使用規則に合わせる |
| 電源・設備 | 電源の容量、使用できる機器、電気の追加の申込み、火気や発熱機器の使用の可否 | ブレーカーの遮断や火災を防ぐ |
| 営業時間 | 開場前の準備、営業時間の遵守、閉場前の撤収の禁止 | 来場者に対する開催の信頼を保つ |
| 音・呼び込み・配布物 | 音量、呼び込みの範囲、チラシや試供品の配布の可否、通路での勧誘の禁止 | 他の出展者と来場者への迷惑を防ぐ |
| ごみ・清掃・原状回復 | ごみの持ち帰り、有料の処理、会場の汚損や破損の賠償 | 会場への責任を、出展者に分担させる |
これらのルールに違反したときの措置を、段階で書きます。口頭での是正の指示、書面での警告、営業の一部の停止(問題のある商品の撤去)、出展の取消し(出展料は返還しない)、次回以降の出展の制限です。緊急の事態(火気の不適切な使用、来場者への危険)では、段階を踏まずに主催者が即時に営業の停止を指示できると書いておきます。指示に従わない出展者を排除できるのは、あらかじめ契約の内容にしておいた事由についてです。争いにならないよう、禁止事項は具体的に書き、会場の使用規則と一致させます。
屋外で開く催しでは、許可と届出の分担も規約で決めます。場所を移動しないで道路に露店や屋台店を出そうとする者は、所轄警察署長の許可を受けなければなりません(道路交通法77条1項3号)。公園や広場の使用には、その管理者の許可や占用の手続が要ることがあります。火を使う器具の使用の位置や取扱いは、消防法9条に基づき市町村の条例で定められており、催しでの火気の使用に届出が必要とされることがあります。誰が申請し、費用を誰が負担し、許可が下りないときは催しを中止するのか、小間ごとに必要な手続(出展者が火気を使う場合の届出)は出展者が行うのか、を決めておきます。具体的な手続は開催地によって異なりますので、所轄の窓口に確認します。
会場の管理者との関係では、会場の使用規則を出展者に守らせる条と、会場側の都合(設備の故障、使用の制限)で影響が出たときの扱いを決めます。会場に損害を与えたときの責任は、主催者が会場に対して負い、その分を出展者に求償できる形にしておくと、主催者が一時的に立て替える場面でも根拠が残ります。
中止・縮小・延期と出展料の返還:原因別に扱いを分ける
催しが予定どおりに開かれなかったときの出展料の扱いは、規約に明確な定めがないと争いになります。民法の原則では、債務の履行が不能のとき、債権者は履行を請求できず(民法412条の2第1項)、当事者双方に責任がない事由で履行できなくなったときは、債権者は反対給付の履行(出展料の支払)を拒むことができ(同法536条1項)、全部が不能なら催告なしに契約を解除できます(同法542条1項1号)。主催者に責めに帰すべき事由があれば、損害賠償の問題も生じます(同法415条)。ただ、実際には、主催者が会場費や設営費、広告費を既に支出している事情があるため、原因別に、返還する範囲を規約で決めておきます。
| 原因 | 返還の考え方 | 規約に書くこと |
|---|---|---|
| 主催者の都合による中止(集客の見込み、採算など) | 出展料を全額返還する。出展者が準備のために支出した費用を負担するかは、範囲を限定して明記する | 返還の方法と時期、出展者の費用の扱い |
| 天災・感染症・会場の使用不能・行政の要請などによる中止 | 実費を差し引いた額を返還する設計が現実的。差し引く実費の内訳を示す | 不可抗力の例示、実費の算定方法、内訳の開示 |
| 荒天(屋外の催し) | 判断の基準・時刻・告知の方法を決める。開催が可能であれば出展者の準備の負担は出展者が負う | 判断の基準(警報など)、判断者、判断の時刻、告知の媒体 |
| 会期の短縮・一部日の中止 | 実施できなかった日の割合に応じて返還する | 按分の算式(日数、時間、小間料の割合) |
| 会場・日程・時間の変更 | 変更が大きいときは、出展者が一定期間内に取り消して出展料の返還を受けられる | 「大きい変更」の基準、取消しの申出の期間 |
| 最少出展数・最少集客に達しない | 主催者の判断で中止できる。申込み時に、その条件を示す | 判断の時期(出展者が準備を始める前)、返還 |
中止の原因を主催者の都合と不可抗力で分けず、「いかなる場合も出展料は返還しない」と書くと、主催者に責任がある中止まで返還を拒む趣旨に読まれます。
実費控除型の返還を採る場合は、算式を示しておくのが現実的です。たとえば、返還額を「出展料の総額から、中止の決定までに主催者が支出し、又は支出が確定した費用のうち当該出展者に割り当てる額を差し引いた額」と書き、内訳の開示を求められたときは、合理的な範囲で示すことも書いておきます。費用の割当ての方法(出展者数で按分するのか、小間料の割合で按分するのか)を決めておくと、出展者に説明しやすくなります。
主催者の責任を限定する条(返還のほかは責任を負わない)を置くときは、故意または重大な過失による場合を除く、と書いておきます。出展者が事業者であれば消費者契約法は適用されませんが、故意や重大な過失による場合まで責任を免れる条項は、民法90条(公序良俗)の問題になり得ます。出展者が個人で消費者に当たるときは、債務不履行による損害賠償責任をすべて免除する条項は無効です(消費者契約法8条1項1号)。「返還のほかは責任を負わない」と一律に書くより、「主催者に故意又は重大な過失がある場合を除き、返還額を上限とする」という形の方が、条項が生きます。免責条項の組み立ての基本は事故と免責のページで扱っています。
出展者の側の都合で出展できなくなった場合の対応も決めます。出展者の欠席を理由に小間を再募集するか、空いた小間をどう扱うか(会場の見栄えを保つための配置の変更)、代替の出展者を主催者が募ることができるか、を書きます。また、催しの内容が変更になる場合に備え、チケット規約のページで述べる、変更の通知と払戻しの考え方は、入場料を取る展示会にもそのまま当てはまります。
展示物の盗難・破損と、来場者の事故:責任の分担を書く
責任の分担は、展示物・商品の管理と来場者の安全に分けて考えます。小間の中の展示物や商品、売上金、什器は、出展者が管理するのが原則です。主催者が夜間の警備を置くのか、会期中の貴重品の保管場所を用意するのかで、主催者が負う範囲は変わります。警備を置かないなら、盗難や破損の責任は出展者が負い、出展者は貴重品の管理と保険の加入に努める、と書きます。警備や保管の場所を提供するなら、その内容と範囲を示し、「提供した範囲で責任を負う」と書きます。
主催者が責任を負うのは、まず主催者自身の行為や管理の落ち度による損害です。不法行為の一般原則として、故意または過失によって他人の権利を侵害した者は賠償の責任を負います(民法709条)。主催者が設営したステージや看板、通路の養生などに瑕疵があって来場者がけがをしたときは、工作物の占有者として責任を負うことがあります(同法717条1項)。主催者が使用するスタッフが事業の執行について第三者に加えた損害は、使用者としての責任が問題になります(同法715条1項)。出展者が持ち込んだテント、什器、調理器具、火気、商品が原因の事故は、出展者の責任の範囲として規約に書き、主催者が求償できる形にしておきます。
| 類型 | 責任の置き場所 | 規約に書くこと |
|---|---|---|
| 小間内の展示物・商品の盗難・破損 | 出展者が管理する。主催者は警備の範囲に応じて責任を負う | 管理は出展者、警備や保管の提供範囲、主催者の免責の限度(故意・重過失を除く) |
| 主催者が設営した設備・通路・看板が原因の来場者のけが | 主催者が責任を負う。施設賠償の保険の対象になりやすい | 主催者の保険の加入、事故の報告の手順 |
| 出展者が持ち込んだテント・什器・火気・調理器具が原因の事故 | 出展者が責任を負う。主催者は求償できる | 持込み機材の安全の確保、火気の使用の届出、出展者の保険の加入 |
| 出展者の従業員・手伝いの行為 | 出展者が責任を負う | 従業員・手伝いにも規約を守らせる義務 |
| 飲食物による食中毒・アレルギー | 出展者が責任を負う | 食品衛生の許可・届出、アレルゲンの表示、試食の取扱い |
| 出展者どうしのトラブル(類似商品、勧誘、撮影) | 原則は当事者間で解決する。主催者は窓口と調整 | 苦情の窓口、主催者が調整しても責任を負わない範囲 |
保険の取り決めは、責任の分担と一体で書きます。主催者が施設賠償責任の保険に加入するなら、その旨と補償の範囲を出展者に示します。出展者に賠償責任の保険への加入を求めるなら、加入の義務にするのか努力義務にするのか、補償額の下限を設けるのか、保険証券の写しを提出させるのか、を決めます。食品や火気を扱う出展者には、加入を義務にする方が現実的です。保険の種類や補償の内容は、事業者によって異なりますので、規約には保険の名称を固定せず、加入すべき補償の内容(対人・対物の賠償)を書く形が運用しやすくなります。
来場者への対応も忘れてはなりません。入場無料の催しでも、来場者向けに会場内の注意(立入禁止の区域、火気、ペットの扱い、撮影)を掲示します。入場料を取る催しは、来場者との間にチケットの契約が成立しますので、ライブ・公演・イベントのチケット規約のページで述べる、払戻しや入場拒否、撮影の定めが必要になります。また、事業者は、障害を理由として不当な差別的取扱いをしてはならず、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があったときは、実施に伴う負担が過重でない限り、必要かつ合理的な配慮をしなければなりません(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律8条1項、2項)。通路の幅、段差、休憩の場所、車椅子の来場者への対応を、運営要項で定めておきます。出展者にも、来場者への配慮を求める条を置きます。
販売を伴う出展と法令:出展者の責任を書き、主催者が確認する
販売を伴う出展では、出展者が守るべき法令が多く、違反があれば催し全体の信用に傷が付きます。主催者の側では、出展者の責任を規約に書き、申込みの段階で許可や届出を確認できる仕組みにします。主催者が法令の遵守を保証するわけではありませんが、申込書で販売内容を申告させ、許可証の写しを提出させることで、出展者の選別と、問題が起きたときの対応が容易になります。
| 出展物 | 関係する法令 | 主催者の確認と規約の書き方 |
|---|---|---|
| 食品の調理・販売 | 食品衛生法。政令で定める営業は都道府県知事の許可(55条)、公衆衛生に与える影響が少ないとして政令で定めるものを除くその他の営業は届出(57条) | 許可証・届出の写しの提出、臨時の出店に必要な手続の確認、持ち帰り用の表示 |
| 酒類の販売 | 酒税法。酒類の販売業は販売場ごとに免許(9条) | 免許の有無、提供の可否、禁止する場合はその旨を募集要項に書く |
| 中古品・古着・アンティーク | 古物営業法。古物営業は公安委員会の許可(3条) | 古物商の許可の有無、個人の不用品の販売との区別 |
| 化粧品・健康食品・美容用品 | 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律66条(虚偽・誇大な広告の禁止) | 法令で認められない効能の表示を禁止する条 |
| 契約の勧誘を伴う出展(会員権、講座、エステ、投資など) | 特定商取引法(訪問販売などの規制) | 販売方法を申告させる。契約を結ぶ勧誘は禁止するか、事前の承認制にする |
| キャラクター・既存作品を使った商品 | 著作権法、商標法 | 権利者の許諾の有無を出展者が保証する条、模倣品の撤去 |
法令の適用は、出展の内容や販売の方法によって異なります。このページは、規約に書く観点を示すにとどまります。
特定商取引法との関係は、出展者がその場で契約を結ぶ販売をするときに問題になります。事業者が「営業所等」以外の場所で売買契約の申込みを受けたり契約を締結したりすると、訪問販売の規制の対象になり得ます(同法2条1項1号)。「営業所等」には、営業所、代理店、露店・屋台店その他これらに類する店、一定の期間にわたり商品を陳列して販売する場所であって店舗に類するもの、などが含まれます(同法施行規則1条)。出展者の販売がこれに当たるかどうかは、会場の性格、開催の期間、勧誘の方法によって分かれますので、規約では、出展者が自らの責任で法令を守ること、特に契約を結ぶ勧誘を伴う出展は申込みの段階で申告し、主催者が承認しない方法の販売を行わないこと、を定めます。高額の契約を会場で勧誘する出展を認めるかどうかは、主催者の方針の問題であり、認めるなら出展者の信頼性を確かめる手順(契約書の雛形の確認、苦情の窓口の確認)を置きます。
知的財産では、出展者が模倣品や他者の著作物を使った商品を扱っていないことの保証、権利者から指摘を受けたときの撤去の義務、主催者に損害が生じたときの出展者の責任を書きます。個人情報では、出展者名簿や来場者アンケートなど、主催者が取得する情報の利用目的を特定し(個人情報保護法17条)、取得したときは速やかに本人に通知または公表します(同法21条)。出展者名簿を来場者向けの案内に掲載する場合や、協賛企業に提供する場合は、その旨を申込みの時点で示します。
撮影と広報の取り決めも置きます。主催者が催しの様子を撮影して広報に使うこと、出展者の屋号・ロゴ・商品の写真を広報に使うことを、出展者の同意事項として申込書に書きます。使う範囲(公式サイト、SNS、報告書)と期間、商品の写真の提供を求める場合の権利の扱いを決めます。来場者や出展者が会場内で撮影する場合のルール(他の出展者や来場者の写り込み)も、運営要項に書きます。同意の取り方は撮影・録画・肖像・配信の同意のページの考え方が使えます。
最後に、反社会的勢力の排除と、規約の変更です。出展者が反社会的勢力でないことの表明と、該当した場合の出展の取消し(出展料は返還しない)を書きます。規約の変更は、募集の時点と契約の後で分けて考えます。募集の段階では自由に改訂できますが、契約が成立した後の変更は、規約が定型約款に当たる場合、その変更の要件(民法548条の4)に従う必要があります。変更が出展者の一般の利益に適合するか、契約をした目的に反せず合理的な変更かを確かめ、効力発生時期を定めて周知します。
出展規約を決める前に整理すること
- 出展者は事業者か、個人か。募集の対象と審査の有無は。契約の成立の時点、取消料の説明、消費者契約法の適用の有無が変わります。
- 出展料の内訳と、主催者の費用が確定する日はいつか。取消しの段階の区切りと、実費控除の算式の根拠になります。
- 会場の使用規則は何か。主催者が会場に負う責任は。出展者に守らせる規則と、求償の根拠を揃えます。
- 警備を置くか。貴重品の保管場所を用意するか。展示物の盗難・破損の責任の置き場所が決まります。
- 主催者の保険の内容は。出展者に加入を求める補償は。事故の責任と保険の役割分担を書きます。
- 食品、酒類、古物、化粧品、契約の勧誘を伴う出展を認めるか。申告事項と、禁止する出展物を決めます。
出展規約で起きがちなこと
よくあるご質問
出展料の一部を申込金として受け取ります。取消しのときに返さなくてよいですか。
申込金の性質を決めておく必要があります。解約手付とするなら、出展者は、主催者が履行に着手するまでは、手付を放棄して契約を解除できます(民法557条1項、559条)。取消料の内払いとするなら、取消しの段階に応じた精算の対象になります。返還しない前払金とするなら、その理由(小間の確保の費用など)を示します。性質を決めないまま「返金しません」とだけ書くと、取消しの時期にかかわらず全額を拒む趣旨に読まれます。出展者が消費者に当たる個人のときは、消費者契約法9条1項1号の平均的な損害の額を超える部分が無効になります。
荒天で中止にしたとき、出展料は返さなければなりませんか。
規約の定め次第です。民法の原則では、双方に責任がなく履行できなくなったときは、出展者は出展料の支払を拒め(民法536条1項)、解除もできます(同法542条1項1号)。実務では、主催者が既に支出した会場費や設営費があるため、実費を差し引いた額を返還する設計が現実的です。判断の基準、時刻、告知の方法、実費の算式と内訳の開示を規約に書いておきます。
出展者の商品が盗まれたとき、主催者は責任を負いますか。
小間内の展示物や商品は出展者が管理するのが原則ですが、主催者が警備や保管場所を提供するなら、提供した範囲では責任を負います。何も提供していなくても、主催者自身の落ち度による損害は民法709条の問題になり得ます。警備の範囲、貴重品の管理は出展者であること、主催者の免責の限度(故意・重大な過失を除く)を書いておきます。
マルシェで手作りの食品を売る出展者がいます。主催者は何を確認すべきですか。
食品衛生法は、政令で定める営業を都道府県知事の許可、公衆衛生に与える影響が少ないとして政令で定めるものを除くその他の営業を届出の対象としています(55条、57条)。臨時の出店の扱いは開催地の保健所で異なりますので、出展者に許可証や届出の写しを提出させ、必要な手続を出展者が自らの責任で行うことを規約に書きます。アレルゲンの表示や試食の取扱いも、運営要項で定めます。
会場でエステや講座の契約を勧誘する出展は、認めてよいですか。
主催者の方針の問題です。事業者が営業所等以外の場所で契約の申込みを受けると訪問販売の規制の対象になり得ますし、苦情が出れば催し全体の信頼に関わります。申込書で販売方法を申告させ、契約を結ぶ勧誘は禁止するか、事前の承認制にして、承認した出展者の契約書の雛形や苦情の窓口を確認する手順を置くのが現実的です。
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