語学教室の法定書面・クーリング・オフ・中途解約

2か月を超え5万円を超える語学のコースには、概要書面と契約書面、クーリング・オフ、法定の上限の範囲での中途解約がかかります。

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PDFをメールで送っただけでは、電子交付の手順を踏んだことになりません。

このページの要点

  • 概要書面は契約の前、契約書面は契約の後に遅滞なく。交付年月日を記録し、赤枠・8ポイントの様式を守る。
  • 電子交付は、種類・内容の提示、説明、端末の確認、氏名と理解した旨の記入、承諾を証する書面の交付の順で。
  • 書籍・音声教材・テレビ電話装置を教室が売るなら関連商品。市販の書籍を受講者が書店で直接買う形なら当たらない。
  • 中途解約の精算は契約時の実際の単価で。6か月コースの月払いは「その月の対価」か「総額の分割」かを決める。

結論:語学教室は「2通の書面」「赤枠」「受講月単位の精算」を先に決める

語学の教授で、2か月を超え5万円を超える契約は特定継続的役務提供に当たり(判定の順番は特定継続的役務提供と旅行業法の入口)、契約の前の概要書面と、契約の後の契約書面を交付しなければなりません(特定商取引法42条1項・2項)。書面を交付しない、記載すべき事項が記載されていない書面を交付するといった違反には、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、又はその両方が科され得ます(同法71条1号)。

クーリング・オフは契約書面を受け取った日から8日(48条1項)、その後は将来に向かって中途解約ができ(49条1項)、事業者が請求できる額には上限があります(49条2項)。いずれも受講者に不利な特約は無効で(48条8項・49条7項)、規約で外すことはできません。語学教室が自分で決められるのは、法定の上限の内側での精算の計算のしかたや、休会・振替・解約の申出の方法といった運用のルールです。

このページでは、韓国語講座・英会話プログラム・英語コーチングの書面の実例から、2通の書面の作り方、完全オンラインでの電子交付、語学に固有の関連商品、受講月単位の精算、月謝か総額の分割かの判断を整理します。

概要書面と契約書面:1通で済ませず、交付日を記録する

英語コーチングの案件では、依頼者から「利用契約書1通で、概要書面と契約書面の両方を済ませられないか」という質問がありました。事務所の運用ガイドでは、契約の前に渡す概要書面(利用契約書が兼ねる)と、契約の時に渡す独立の契約書面の2通の運用が、法が予定している標準の形だと説明しました。概要書面は締結するまでに、契約書面は締結した後に遅滞なく、と交付の時期が違うためです。

最終版の利用契約書は、冒頭に「特定商取引法42条1項に基づく概要」の欄を置いて概要書面を兼ねる形にし、事業者、役務の内容、対価、クーリング・オフ、中途解約、抗弁の接続、前受金の保全、関連商品の事項をまとめました。そのうえで、概要書面として交付した日を、末尾の契約締結日とは別に記録する欄を設けています。契約書面にも交付年月日を必ず記入します。クーリング・オフの8日は契約書面を受け取った日から数えるため、交付日が分からないと期間の終わりも分からないからです。

2通の書面の様式で押さえること
項目概要書面契約書面
交付の時期契約を締結するまで(42条1項)契約を締結したとき、遅滞なく(42条2項)
赤枠・赤字書面の内容を十分に読むべき旨(施行規則92条2項)書面の内容を十分に読むべき旨(施行規則94条4項)と、クーリング・オフに関する事項(同条3項)
文字の大きさ8ポイント以上(施行規則92条3項)8ポイント以上(施行規則94条5項)
金額の書き方役務の対価その他支払う金銭入会金・授業料・教材費などの費目ごとの明細と合計(施行規則94条1項)
前払い前受金の保全措置の有無同じく保全措置の有無。5万円を超える前払取引なら、業務と財産の状況を記載した書類を備え置き、閲覧に応じる(45条)

契約書面の費目は、使わない費目もゼロとして書いておくと、後から「別の費用を取られた」という疑いを避けられます。英語コーチングの契約書面では、入会金0円、授業料、1回当たりの対価、教材費0円と並べました。前受金の保全の措置を講じていない場合は、講じていない旨を書きます。

サイトやメールで申込みを受ける語学教室では、特定継続的役務提供の書面とは別に、通信販売の規律も重ねてかかります。英会話伴走プログラムの見積りの段階で、事務所は、概要書面と契約書面の2通に加えて、通信販売の広告の表示(特定商取引法11条)が重ねて適用されることと、月払いが割賦販売法の自社割賦に当たる可能性を、ヒヤリングで確かめると案内しました。特定商取引法に基づく表記、申込み直前の確認画面、2通の書面の三つで、内容がそろっているかを最後に突き合わせます。

雛形の13条から27条へ:クーリング・オフを独立の条と赤枠に

約半年・10万円以上を想定したオンライン韓国語講座の案件では、依頼者が用意した全13条の雛形をレビューしました。雛形は自己都合の返金を一律に否定し、クーリング・オフには末尾で触れるだけでした。事務所はこれを全27条の受講契約書に組み直し、クーリング・オフを独立の条にして赤枠・赤字で記載し、その真上に「この書面の内容を十分にお読みください」を置きました。

事務所の改訂例 韓国語講座の受講契約書

返金

改訂前自己都合による返金は一切行わない。(依頼者の雛形)
改訂後クーリング・オフの条と中途解約の条を独立させ、法定の上限の範囲で精算する。1回当たりの受講料は、受講料の総額を総提供回数で割った額とし、実施回数を掛けて提供済みの対価を計算する。

理由特定継続的役務提供では、受講者に不利な特約は無効です。「返金しない」を残すと、契約書面に書くべき解除の事項を正しく書いていないことにもなりかねません。

クーリング・オフ

改訂前契約書の末尾で触れるだけ。
改訂後赤枠・赤字の独立の条。書面又は電磁的記録で行えること、通知を発した時に効力が生じること、損害賠償や違約金を請求しないこと、提供済みの役務の対価も請求しないこと、受け取った金銭は速やかに全額返すこと、通知の宛先(名称・住所・電話・メール・フォームのURL)。

理由赤枠の中に書く事項は施行規則で決まっています。宛先まで書いておくと、受講者が迷わずに通知できます。

27条の受講契約書では、関連商品の条(第3条)も置き、教材を別に販売する場合にもクーリング・オフと中途解約が及ぶことを定めました。語学の教授では、書籍や音声教材が関連商品になり得るためです。納品は、編集用(赤枠なし)と交付用(赤枠あり)の2つのファイルに分けました。あわせて事務所から、概要書面はまだ作られておらず必須であること、受講期間・受講料・宛先(特にクーリング・オフの通知の郵送先)の空欄を埋めること、赤枠・赤字が白黒で印刷すると消えないか確かめること、未成年者が受講し得るなら親権者の同意の条を足すこと、の4点を案内しています。未成年者の受講の組み方は未成年・保護者・家族受講と健康の申告で扱います。

完全オンラインの英会話で書面を電子で渡す手順

書面はPDFで送れば足りる、と考えられがちですが、電子で交付するには、受講者の承諾を所定の手順で得る必要があります(特定商取引法42条4項、同法施行令26条1項)。承諾の前に、電磁的方法の種類と内容を示し、承諾しなければ紙の書面が交付されることなどを説明し、受講者が端末を自分で操作して閲覧・保存できることなどを確認します。承諾は、受講者が氏名と説明の内容を理解した旨を記入する方法で得て、チェック欄に印を付けるだけのような、承諾の認識が明らかにならない方法は使えません(施行規則99条5項)。承諾を得たら、承諾を証する書面を、電子での提供を行うまでに交付します(同条7項)。インターネットを通じて提供する役務を、ネットでの申込みを受けて提供する場合などは、この証する書面も電子で渡せます(同条8項2号)。

英語コーチングの書面の発行の流れ

  1. 1 電子交付の承諾申込みとは別立てで、電子交付の承諾の手続をとる(種類・内容の提示、承諾しなければ紙で交付されることの説明、端末の確認、氏名と理解した旨の記入)。
  2. 2 概要書面の提示利用契約書(概要書面を兼ねる)をPDFで示す。
  3. 3 確認と申込みフォームで内容を確認し、氏名と「理解した」旨を記入して申し込む。
  4. 4 入金受講料を支払う。
  5. 5 入金の確認で成立入金を確認した時に成立する。契約書面のPDFを交付し、交付年月日を記入する。
  6. 6 受講開始契約書面の交付日から数えるクーリング・オフの期間を意識して、開始日を設定する。

英会話伴走プログラムの案件では、概要書面と、契約書面を兼ねる受講契約書の2通を作成し、受講契約書では、概要書面は電子メールに添付したPDFで交付し、受講者が電子での交付を承諾しないときは紙で交付すると定めました。承諾した後でも、電磁的方法によらない旨の申出はいつでもでき、申出の後は紙で交付します(施行令26条2項)。電子で交付した契約書面は、受講者のファイルに記録された時に到達したものとみなされ(特定商取引法42条5項)、クーリング・オフの期間はその日から数えることも、条文に書いています。休会(受講期間中1回・通算1受講月まで)、振替(前日までの連絡、当日の連絡も妨げない)、繰越(翌受講月に1回まで)は、法定の上限の内側の運用のルールとして、同じ受講契約書に置いています(休会の書き方は休会・退会・除名と会員どうしのルール)。契約の成立の時点の決め方は書類一式と契約の成立で扱います。

クーリング・オフの起算日は、入金の日でも申込みの日でもなく、契約書面を受け取った日です。書面の記載に不備があれば期間は進まず、受講者はいつまでもクーリング・オフができる状態が続きます。

語学教室の関連商品:書籍・音声教材・テレビ電話装置

特定継続的役務提供では、役務の提供に際して受講者が購入する必要のある商品として政令で定めるもの(関連商品)を事業者が販売し、又はその代理・媒介をしている場合、その売買契約にもクーリング・オフと中途解約が及びます(48条2項、49条5項)。語学の教授の関連商品は、書籍、音声・映像・プログラムを収めた記録媒体、それにファクシミリ装置・テレビ電話装置の三つの類型です(施行令別表第五第三号)。教材の本、音声教材を記録した物、オンラインレッスン用の機器を教室が販売すると、ここに入ってきます。

英語コーチングの書面では「関連商品なし。教材は役務に含めて無償」と書きました。英会話伴走プログラムでは「市販の書籍を受講者が書店から直接購入し、講師は販売・代理・媒介をしない」と書き、関連商品に当たらない形にしています。関連商品の販売やその代理・媒介をしなければ、市販の教材を使うこと自体は問題になりません。教室が教材を売るなら、関連商品として契約書面に書き、解除のときの扱いを決めておきます。

中途解約の上限と、受講月単位の精算の書き方

中途解約のときに事業者が請求できる額の上限は、語学の教授では、提供の開始前なら1万5千円、開始後なら、提供済みの役務の対価に、5万円又は契約残額の20%のいずれか低い額を足した額です(49条2項、施行令別表第四の三の項の第三欄・第四欄)。この額に法定利率の遅延損害金を足した額が、請求できる上限です。

英会話伴走プログラムの案件では、依頼者は「中途解約は一切不可」「決済後は理由を問わず返金なし」を希望していましたが、事務所は回答書でこれらは修正が必要だと説明し、月額×6か月の例で上限の試算を示しました。精算の単価は契約を結んだときの実際の単価で、定価や少ない回数の単価で計算し直すことは許されません(最判平成19年4月3日)。

月額3万円×6か月(総額18万円)を、3か月経過時に解約した場合の試算
項目計算金額
提供済みの役務の対価3万円×3か月9万円
契約残額18万円−9万円9万円
通常生ずる損害の上限5万円と、契約残額の20%(1万8千円)の低い方1万8千円
請求できる上限9万円+1万8千円10万8千円
返金の目安(全額を前払いしていた場合)18万円−10万8千円7万2千円

数字は説明のための例です。実際の金額は契約の内容で決まります。

受講契約書の中途解約の条では、法定の上限を書いたうえで、実際の精算を上限の内側で具体的に決めました。開始前は全額を返す。開始後は、受講料が受講月を単位としていることから、解除の効力が生じた日の属する受講月の受講料は返さないが、上限を超えるときは超える部分を返す。その月より後の分の前受金は全額を返す、という形です。中途解約の通知は、メールなどの書面のほか、セッション中の口頭でもよく、到達した日(口頭ならその日)に効力が生じるとしています。

条文例中途解約の精算(英会話伴走プログラムの例)

  1. 受講者は、クーリング・オフの期間が過ぎた後も、将来に向かって本契約を解除できます。
  2. 前項の解除が受講開始前であるときは、当方は、受領した金銭の全額を返還します。
  3. 第1項の解除が受講開始後であるときは、当方は、解除の効力が生じた日の属する受講月の受講料を返還しません。ただし、当方が受領した金銭のうち返還しない額が、提供済みの役務の対価に5万円又は契約残額の100分の20に相当する額のいずれか低い額を加えた額を超えるときは、その超える部分を返還します。
  4. 前項の受講月より後の受講月に係る受領済みの受講料は、全額を返還します。

第3項は、受講料を受講月単位で定めていることを前提にした書き方です。

3か月・週1回の英語コーチングの運用ガイドでは、開始前・4回後・8回後の3つの時点で請求の上限と返金の目安を表にし、段階割引やまとめ割引を設けても精算は割引後の実効単価で行うこと、入会金や初期費用を別枠にして全額を差し引く設計はできないことを書きました。同じ考え方を、数字を置き換えた例で示すと次のようになります。

週1回×12回(総額12万円・1回1万円)を一括で前払いした場合の例
時点請求できる上限返金の目安
受講開始前1万5千円(契約の締結と履行のために通常要する費用の上限)10万5千円
4回受講した後提供済み4万円+(5万円と、契約残額8万円の20%=1万6千円の低い方)=5万6千円6万4千円
8回受講した後提供済み8万円+(5万円と、契約残額4万円の20%=8千円の低い方)=8万8千円3万2千円

まとめ割引で1回の単価を下げて契約したなら、提供済みの対価も割引後の単価で計算します。数字は説明のための例です。

月謝か、総額の分割か:割賦販売法の入口

6か月コースを月払いにするとき、月々の支払いが「その月の分だけの対価」なのか、「契約時に決まった総額の分割」なのかで、かかる法律が変わります。いつでも翌月以降の支払義務なく解約できる、その月の分だけの対価なら月謝です。総額が契約時に確定し、それを分けて払うなら、事業者が自分で、2か月以上かけて3回以上に分けて代金を受け取る割賦販売(割賦販売法2条1項1号)に当たり得て、語学の教授は指定役務です(同法施行令別表第一の三第五号)。割賦販売に当たれば、同法が定める書面の交付など(同法4条)が必要になります。英会話伴走プログラムでは、ヒヤリングでこの点を選んでもらいました。

ヒヤリングで確かめること 月払いの性質を決める

  1. A案:月々の支払いは、その受講月の対価で、受講者はいつでも翌月以降の支払義務なく解約できる。月謝制として整理できます。受講契約書では、月額を「当該受講月の対価」と定義します。
  2. B案:6か月分の総額を契約時に確定し、それを6回に分けて支払う。割賦販売法の自社割賦に当たり得ます。同法の書面と表示の準備が必要です。
  3. カード会社の分割払いや、信用購入あっせんを使いますか。使わないなら、受講契約書にその旨を明記します。

依頼者はA案を選び、受講契約書は月額を当該受講月の対価と定義し、信用購入あっせん等を使わないことを明記しました。

音楽・ダンスのように特定継続的役務提供の対象外の教室でも、割賦販売法では「技芸又は知識の教授」(同表第十一号)に当たり得ます。オンラインの音楽講座の案件では、依頼者から「『技芸』は伝統芸事に限られるのではないか」「同業他社はやっていない」という質問がありましたが、文言上も公式の解釈上も限定する根拠はなく、他社が守っていないことは根拠にならないと回答しました。支払方法の欄に一文を足すだけでは、書面を交付する時期(契約の締結後遅滞なく)と記載事項の両面で足りない、という点もあわせて伝えています。依頼者が考えていた月払いの8回払いも4回払いも、2か月以上かけて3回以上に分割して受け取るという点では変わらず、回数を減らしても3回以上である限り割賦販売に当たり得ることに変わりはありません。月謝・チケットの返金の設計は月謝・会費・入会金・チケットの返金設計で扱います。

起きがちなこと

よくあるご質問

概要書面と契約書面は、1通にまとめられますか?

交付の時期が違うため、契約の前に渡す概要書面と、契約の後に遅滞なく渡す契約書面の2通にするのが、法が予定する標準の形です。利用契約書に概要の欄を置いて概要書面を兼ねる場合も、契約書面は別に交付し、それぞれの交付日を記録します。

書面をPDFで渡してもよいですか?

受講者の承諾を所定の手順で得れば、電子で交付できます。電磁的方法の種類と内容を示し、承諾しなければ紙で交付されることなどを説明し、端末で閲覧・保存できることなどを確認したうえで、氏名と説明を理解した旨を記入してもらいます。チェック欄だけの承諾は認められず、承諾を証する書面の交付も必要です。

クーリング・オフの8日は、いつから数えますか?

契約書面を受け取った日から数えます。入金の日や申込みの日ではありません。電子で交付した場合は、受講者のファイルに記録された時点で受け取ったものと扱われます。書面の記載に不備があると、期間は進みません。

教材を教室で買ってもらうと、何が変わりますか?

語学の教授では、書籍、音声・映像・プログラムを記録した物、テレビ電話装置などが関連商品になり、教室が販売すると、クーリング・オフや中途解約が教材の売買にも及びます。教室が販売・代理・媒介をせず、市販の書籍を受講者が書店で直接買う形なら、関連商品には当たりません。

途中でやめた英会話の受講料は、いくら返せばよいですか?

開始後の解約で事業者が請求できるのは、提供済みの役務の対価に、5万円又は契約残額の20%のいずれか低い額を足した額までです。それを超えて受け取っている分は返します。精算の単価は契約時の実際の単価で、割引前の定価で計算し直すことはできません。

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