特定継続的役務提供と旅行業法:入口の判定

習い事の書類の作り方は、教える中身が政令の指定する役務に入るかどうかで大きく変わります。宿泊や送迎を組み込むイベントでは、旅行業法も入口になります。

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英会話のコースを「コーチング」と名付けても、3か月・5万円超なら法定の書面が必要です。

このページの要点

  • 指定役務は7つの限定列挙。語学の教授は2か月・5万円超で対象、音楽・ダンス・着付け・歌は期間や金額にかかわらず対象外。
  • 名前・月額払い・オンラインでは外れない。有効期限のない回数券や2か月を超える前払いは、境界を越えやすい。
  • 指定外の教室にも、通信販売の表示、消費者契約法、自社で分割するなら割賦販売法(技芸又は知識の教授)がかかる。
  • 宿泊・送迎・観光の代金を主催者がまとめて受け取る形は、旅行業の登録の問題になる。規約の文言では解消しない。

結論:入口の規制は業種で決まる。語学は指定役務、音楽・ダンス・着付け・歌は指定外

習い事の教室を始めるとき、書類の組み方を最も大きく分けるのは、特定商取引法の「特定継続的役務提供」の対象になるかという点です。当たれば、契約の前の概要書面と契約の後の契約書面の交付、クーリング・オフ、法定の上限の範囲での中途解約が、規約の書き方にかかわらず適用されます。当たらなければ、これらの法定の制度はかかりません(売り方や支払方法による規制、消費者契約法は別に及びます)。

判定の出発点は、教える中身が政令の指定する役務に入っているかどうかです。指定は限定列挙で、習い事に関係が深いのは語学の教授です。英会話・韓国語・日本語などの語学教室は対象になり得て、ピアノ・ダンス・ボイストレーニング・着付けなど、音楽・ダンス・技芸の教室は、期間や金額に関係なく対象になりません。一方、宿泊・送迎・観光を組み込んだ合宿や遠征、海外のプログラムでは、特定商取引法とは別に、旅行業法との線引きが入口の問題になります。このページでは、二つの入口の判定を、事務所の回答書・報告書での当てはめに沿って整理します。

別表第四の7役務:音楽・ダンス・着付けは最初の一歩で外れる

特定継続的役務提供は、政令で定める役務を、政令で定める期間を超えて提供することを約し、政令で定める金額を超える金銭を受け取る契約です(特定商取引法41条1項1号)。役務は特定商取引法施行令25条と別表第四の第一欄に列挙された7つに限られ、期間は役務ごとに同表の第二欄(同令24条1項)、金額は5万円です(同条2項)。

指定されている7つの役務と期間(特定商取引法施行令別表第四)
項役務期間
一エステティック(皮膚の美化、体型の調整、減量のための施術)1か月
二美容医療(美容を目的とする医学的処置などで、主務省令で定める方法によるもの)1か月
三語学の教授(入学試験に備えるため又は学校教育の補習のための学力の教授に当たるものを除く)2か月
四家庭教師など(受験対策・学校の補習のための学力の教授のうち、生徒の自宅など事業者の用意する場所の外で行うもの)2か月
五学習塾など(同じ学力の教授で、事業者が用意する場所で提供するもの)2か月
六パソコン教室(電子計算機又はワードプロセッサーの操作に関する知識又は技術の教授)2か月
七結婚相手紹介サービス(結婚を希望する者への異性の紹介)2か月

金額の要件は、どの役務も5万円を超えることです(施行令24条2項)。音楽・ダンス・歌唱・着付け・スポーツの指導は、どの項にも入っていません。

英会話の伴走型プログラム(6か月・月額払い)についての回答書では、事務所はまず役務を7つに当てはめ、英会話は三の項の語学の教授に当たるとしたうえで、期間(6か月は2か月を超える)と金額(総額が5万円を超える)を確かめ、対象になると判断しました。オンライン会議システムでレッスンをすることについては、会議システムはレッスンの手段にすぎず、教える中身は英会話なので、六の項(パソコン教室)には当たらないと整理しています。

反対に、外国の事業者が日本の消費者に提供するオンラインの音楽(リズム)講座の案件では、音楽・リズムの指導は7つのいずれにも当たらないため、期間と金額の要件を検討するまでもなく、最初の一歩で対象外と判断しました。依頼者は、オンラインで受講するから「パソコン教室」に当たるのではないかと心配していましたが、六の項はパソコンやソフトウェアの操作そのものを教える役務で、受講の手段として会議ツールを使うだけの講座は当たりません。

習い事の教室が特定継続的役務提供に当たるかの判定

  1. 教える中身は、別表第四の7つの役務のどれかに当たりますか(習い事では、語学の教授か、パソコン等の操作の教授か)。

    はい次の段階へ進みます。語学でも、入学試験対策・学校の補習のための学力の教授に当たるものは三の項から外れ、四・五の項の問題になります。

    いいえ対象外です。ピアノ・ダンス・ボイストレーニング・着付け・書道などは、ここで判定が終わります。

  2. 約束する提供期間は2か月を超えますか(チケットの有効期限・コースの期間を含めて)。

    はい次の段階へ進みます。

    いいえ対象外です。ただし、更新や継ぎ足しで実質的に一体の契約とみられる設計に注意します。

  3. 受講料や入会金など、契約に基づいて支払うことを約する金銭は5万円を超えますか。

    はい特定継続的役務提供に当たります。法定の2通の書面をそろえ、クーリング・オフと中途解約の条も置きます。

    いいえ対象外です。

対象外でも、通信販売の表示(特定商取引法11条)、申込み直前の表示(同法12条の6)、消費者契約法、自社で分割して受け取るなら割賦販売法は、別にかかります。

デザインソフトの操作を教えるオンラインレッスンのように、パソコンの操作そのものを教える講座は、六の項に当たるかを検討する必要があります。受講の手段としてパソコンを使うだけなのか、ソフトウェアの操作の知識・技術を教えているのかで分かれるため、カリキュラムの中身を見て判断します。

名前や払い方では外れない:コーチング・月額・オンライン

アスリート向けのオンライン英語コーチングの案件では、依頼者から、名前が「コーチング」なら語学の教授から外れるのではないか、月額払いや自動更新にすれば5万円を超えても外れるのではないか、という質問が続きました。事務所の答えは、名前ではなく実態で判断する、というものです。英語を使えるようにするための指導であれば、コーチングと名付けても語学の教授に当たります。語学の教授は会話の指導に限られず、読み書きや文法の授業も含みます。外国人に日本語を教える教室も、語学の教授として判断します。この案件では、プランごとの当てはめの表を作って納品しました。

プランごとの当てはめ(英語コーチングの例)
プラン期間判断
1か月コース(2種類)1か月2か月を超えないため対象外
3か月コース(2種類)3か月2か月を超え、総額が5万円を超えるため対象
月額のグループプログラム1か月ごと1か月の料金が5万円以下で、いつでも解約できる設計のため対象外

3か月コースにだけ、概要書面と契約書面を備える運用にしました。

3か月・週1回のベースプランに、単発のレッスンを追加で案内する形についても相談がありました。ベースのプランが既に対象なので、追加の案内のしかたで外れることはありません。単発のレッスンは、その都度、受講者が任意に申し込むものであれば単体では対象外ですが、実態として毎週決まって追加し、継続的な受講の一部になっているなら、総額に合算される余地があります。

依頼者からは、最初は対象外の価格で始め、後から対象になるプランを出すときに改めて書類を頼めるか、という質問もありました。可能で、合理的な進め方です。ただし、書面は対象のプランの販売・勧誘を始める前に用意します。既存の受講者にさかのぼって書面を渡す必要はありませんが、対象のプランに移る人の新しい契約には、書面の交付が必要です。

対象になると決まった後で、依頼者から「書類を準備する以外に、特定商取引法で気を付けることはあるか」という質問も受けました。事務所の回答は、書面とクーリング・オフ・中途解約のほかに、広告と勧誘と前払いの規律がある、というものです。

対象になった語学のコースで、書面のほかに気を付けること
場面内容条文
広告レッスンの内容や効果について、事実と大きく違う表示や、実際のものより著しく優良であると誤認させる表示をしない。「必ず話せるようになる」のような表現に注意する特定商取引法43条
勧誘役務の内容・効果、対価、解除に関する事項などについて不実のことを告げない。重要な事項を故意に告げないことも禁止される。不実の告知などで誤認して申し込んだ人は、申込みを取り消せる同法44条・49条の2
前払い5万円を超える金銭を前払いで受け取るなら、事業者の業務・財産の状況を書いた書類を用意して事務所に置き、受講者が求めれば見せる同法45条
書面の不備契約書面の記載に不備があると、クーリング・オフの期間が進まない同法48条1項
教材の販売関連商品を販売するなら、教材の売買にもクーリング・オフと中途解約が及ぶ同法48条2項・49条5項

語学教室の境界の設計:月謝・チケット・前払い

語学教室で対象外の設計を続けたいときは、どこで境界を越えるかを知っておく必要があります。オンラインの日本語レッスンの案件の報告書では、月単位で契約し、いつでも解約でき、1か月の料金が5万円以下という当時の設計は対象外と判断したうえで、境界を越える設計を列挙しました。

報告書が引いた消費者庁の解説は、期間を定めずに月謝で支払い、いつでも解約できる形態は、月ごとに更新されていると考えられ、基本的には政令の期間を超えないと評価しつつ、実態によっては該当し得るとしています。また、有効期限のないチケット・回数券は、特段の事情がない限り、常に期間を超えるものとして扱うとし、延長の前後が実質的に一体なら、一体として判断するとしています。

語学教室で境界を越えやすい設計
設計境界を越える理由対象外を保つなら
有効期限のない回数券・チケット期限のないものは、特段の事情がない限り、期間の要件を常に満たすものとして扱われる有効期限を2か月以内にするか、未使用分の合計を5万円以下に抑える
2か月を超える分の一括前払い約束する期間が2か月を超え、前払いの合計が5万円を超えやすい前払いは1か月分ずつにする
最低利用期間・解約の制限いつでも解約できる月謝制とは言えなくなる最低利用期間を置かず、翌月以降の負担なく解約できるようにする
期間の延長・コースの継ぎ足し前後が一体の契約とみられる延長は新しい申込みとして、条件と金額を改めて示す

一つでも越えるなら、法定の書面をそろえて対象のサービスとして運用するほうが安全です。

レッスンチケットの具体的な設計(未使用分の上限・有効期限・前払式支払手段との関係)は月謝・会費・入会金・チケットの返金設計で、対象になる場合の書面とクーリング・オフは語学教室の法定書面・クーリング・オフ・中途解約で扱います。

指定外の教室にも残るもの:表示・消費者契約法・割賦販売法・体験レッスン

音楽・ダンス・着付けの教室が特定継続的役務提供に当たらないからといって、規律がなくなるわけではありません。音楽講座の案件の報告書でも、対象外であっても通信販売の表示義務(特定商取引法11条)と消費者契約法は別に及ぶ、と念を押しています。この案件は外国の事業者が日本の消費者に向けて提供する講座で、依頼者が用意した特定商取引法に基づく表記のレビューが依頼の中心でした。ネットで申込みを受ける以上、事業者の表記のページと、申し込む直前に条件を見せる確認画面が欠かせません。また、「返金しない」「責任を負わない」という条項は消費者契約法8条〜10条の審査を受けます。申込み直前の確認の作り方は書類一式と契約の成立で扱います。

分割払いにも注意が要ります。割賦販売法は、事業者が自ら役務の対価を、2か月以上かけて3回以上に分けて受け取る形を「割賦販売」と定め(同法2条1項1号)、対象の役務を政令で指定しています。指定役務には語学の教授(割賦販売法施行令別表第一の三第五号)のほか、「技芸又は知識の教授」(同第十一号)があり、音楽・ダンス・着付けのような教室も、こちらに当たり得ます。特定継続的役務提供では対象外の教室でも、年額や講座代金を自社で分割して受け取ると、割賦販売法の書面の交付などの規律がかかる可能性がある、という点は見落とされがちです。

体験レッスンの進め方も入口の問題です。オンラインの日本語レッスンの案件のご説明書では、無料体験のビデオ通話の最中に有料プランを勧めないよう、運用上の注意を入れました。事業者が電話をかけて勧誘し、申込みを受けると電話勧誘販売(特定商取引法2条3項)になり、契約書面の交付やクーリング・オフが必要になります。ビデオ通話も電話と同じように扱われるおそれがあるため、受付の時に「体験のあとにLINEで案内することがある」と伝え、講師から発信せず、通話中は勧めず、案内は通話のあとにLINEの文章で送る、という手順にしました。

イベント・ツアーと旅行業法の線引き

合宿・遠征・海外での研修プログラムのように、宿泊・送迎・観光を組み込んだイベントでは、もう一つの入口として旅行業法を確かめます。旅行業は、報酬を得て、旅行者のために運送・宿泊のサービスの提供を受けることについて代理して契約を締結し、媒介をし、又は取次ぎをする行為などを行う事業で(旅行業法2条1項)、営むには観光庁長官の登録が必要です(同法3条)。「取次ぎ」まで含まれるため、主催者が参加者から宿泊費・送迎費・ツアー代をまとめて受け取り、現地の施設に支払う形は、旅行業に当たるかを検討しなければなりません。

10代向けの海外団体プログラム(スポーツと語学研修、寮での滞在、送迎・観光付き)の案件では、依頼者は過去の約款に「当社は旅行業者ではありません」「前受金の取次ぎです」と書いておけば足りると考えていました。協力先の旅行会社の担当者から「留学エージェントは登録がないところがほとんど」と言われたことも根拠になっていました。事務所の説明資料では、観光庁の旅行業法施行要領などを当てはめ、宿泊・送迎・観光の代金を主催者が包括して受け取る当時のお金の流れは、無登録営業に当たるおそれが高いと判断しました。旅行会社の担当者の見解は、航空券だけの連携についての一般的な感想で、宿泊・送迎・ツアーの代金を主催者が受け取る形の法律判断ではない、という整理です。

規約の文言では、この問題は解消しません。事務所は、旅行部分は登録を受けた旅行業者が企画・実施し、申込みと代金も旅行業者が直接受ける組み方と、旅行部分は各家庭と現地の学校が直接契約・直接支払いをし、主催者は教育部分だけを担う組み方を示し、前者を推奨しました。草案はその前提で作り、規約には主催者と旅行部分の区分を書いています。航空券の団体枠についても、団体運賃の条件は参加者と航空券の販売事業者の間のものとし、主催者は人数の条件が満たされることを保証しない、と整理しました。

条文例主催者と旅行部分の区分(海外団体プログラムの参加規約の例)

  1. 当社は、本プログラムのうち運送及び宿泊その他の旅行部分について、企画、実施、申込みの受付及び旅行費用の収受を行わず、その手配、あっせん又は取次ぎの対価を受領しません。旅行部分は、旅行業者と参加者との間の旅行契約によるものとします。
  2. 参加契約の取消しは当社に対して、旅行契約の取消しは旅行業者に対して、それぞれ行うものとします。
  3. 当社は、旅行業法に基づく旅行業の登録を受けていません。当社が行う業務は、本プログラムの教育部分の企画及び実施並びにこれに付随する連絡に限られます。

無登録のまま実施しても参加契約そのものは有効と扱われる可能性が高い一方で、返金や事故の責任は主催者に向かい、旅行業者の企画旅行なら参加者が受けられる弁済業務保証金や旅程保証・特別補償はありません。登録を受けた旅行業者が行う旅行業務は特定商取引法の通信販売などの規定の適用除外になりますが(特定商取引法26条1項8号ハ)、無登録の主催者にはこの除外も使えません。未成年の参加者と保護者の契約の組み方は未成年・保護者・家族受講と健康の申告で扱います。

旅行の情報サイトやマッチングの場を運営する場合は、別の書き分けになります。旅行業の登録を受けた会社が個人ガイドと旅行者をつなぐサービスの規約のレビューでは、運営者が旅程の作成・管理、運送・宿泊の手配、旅行契約の媒介をしないことを定義の段階で書き、特定商取引法に基づく表記にも「登録はあるが本サービスでは旅行契約の当事者ではない」と明示するよう勧めました。登録の前の旅行情報サイトの規約では、登録を取得するまでは契約の締結の仲介や手配を行わない旨を書き分けています。登録の申請手続そのものは、このサイトでは扱いません。取消料と旅費の設計はツアー・遠征・海外プログラムの取消料と旅費で扱います。

起きがちなこと

よくあるご質問

英会話・韓国語・日本語の教室は、特定継続的役務提供に当たりますか?

語学の教授は政令で指定された役務の一つです(特定商取引法施行令別表第四の三の項)。提供期間が2か月を超え、支払う金銭が5万円を超える契約なら対象になります。入学試験対策や学校の補習のための学力の教授に当たるものは語学の項から外れ、家庭教師・学習塾の項の問題になります。

ピアノ・ダンス・ボイストレーニングの教室は対象になりますか?

なりません。音楽・ダンス・歌唱・着付けなどの指導は、指定された7つの役務のどれにも入っていないため、期間や金額にかかわらず対象外です。ただし、通信販売の表示、消費者契約法、自社で分割して受け取る場合の割賦販売法は、別にかかります。

月謝制にすれば、語学教室でも対象外になりますか?

期間を定めずに月ごとに支払い、いつでも翌月以降の負担なく解約でき、1か月の料金が5万円以下であれば、通常は対象外と考えられます。ただし、最低利用期間を置く、2か月を超える分を前払いさせる、有効期限のないチケットを売る、といった設計にすると、境界を越えることがあります。

オンラインで英会話を教えると、パソコン教室に当たりますか?

当たりません。会議システムはレッスンの手段で、教えている中身は英会話なので、語学の教授として判断します。パソコンやソフトウェアの操作そのものを教える講座は、パソコン教室の項に当たるかを検討します。

イベントの参加費に宿泊費や送迎費を含めると、旅行業になりますか?

主催者が参加者のために宿泊・運送のサービスの手配や取次ぎをして、報酬を得ているとみられると、旅行業の登録が必要になり得ます(旅行業法2条1項・3条)。「旅行業者ではありません」と規約に書くだけでは解消せず、旅行部分の申込みと代金を登録を受けた旅行業者が直接受けるなど、お金と申込みの流れを変える必要があります。

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