このページの要点
- 取消料は「戻らない固定の費用」と「時期で増える変動の費用」の2階建てにし、区分ごとに割合を決める。
- 提携先から払戻しを受けた額で減額し、暫定と確定の二段階で精算する。算定根拠を説明できるようにする。
- 途中帰国は「返金しない」ではなく、出発日の取消しとして取消料の規定で精算する。
- 不催行・重要な変更・渡航の危険情報のときは、取消料なしで取り消せるようにする。
結論:取消料は「戻らない費用」と「時期で増える費用」の2階建てにし、精算の期限と例外を書く
合宿・遠征・海外の研修プログラムのように、参加費の中に現地の学校の授業料、寮や宿泊の費用、送迎、観光などが含まれるイベントでは、取消料の決め方が最も争いになります。依頼者からは「申込みの時点で一定額を返金不可にしたい」「規律違反で途中帰国したら返金しない」という希望がよく出ますが、費用がまだ発生していない時期の取消しで全額を取ったり、取消料の規定と「返金しない」の規定を並べて置いたりすると、どちらも消費者契約法の審査に耐えません。
耐える取消料にするには、取消しで戻らない費用(固定の費用)と、出発が近づくほど増える費用(変動の費用)を分け、時期ごとの区分を決め、実際に払戻しを受けられた額で精算し直す仕組みを置くことです。旅行部分を登録を受けた旅行業者が受け持つ組み方であることが前提です(旅行業法との線引きは特定継続的役務提供と旅行業法の入口)。このページでは、10代向けの海外団体プログラムの参加規約を中心に、留学の手配、個人ガイドのマッチング、同行型の体験の取消料も比べながら整理します。
申込金の返金不可から、6区分の取消料へ
海外団体プログラムの案件では、依頼者は申込みの時点で一定額を返金不可にしたいと希望していました。事務所は、消費者契約法9条1項1号(解除の事由・時期などの区分に応じた平均的な損害の額を超える部分は無効)、入学金と授業料の返還に関する最高裁判決(最判平成18年11月27日)、中途解約の精算の単価に関する最高裁判決(最判平成19年4月3日)をもとに、費用がまだ発生していない時期の取消しで全額を返さない定めは無効とされるおそれがあると説明し、取消料を「固定の費用(取消しで戻らない費用)+変動の費用(実施の費用×時期ごとの割合)」の2階建て・6区分に設計し直しました。標準旅行業約款(海外の企画旅行)の取消料とも比べています。
標準旅行業約款の取消料は、旅行業者が実施する企画旅行のためのものなので、主催者が旅行業者ではない教育プログラムの取消料にそのまま当てはまるわけではありません。それでも、出発の何日前からどの程度の取消料がかかるのが一般的かを示す物差しになり、参加者に取消料の水準を説明するときの比較の材料になります。
海外団体プログラムの取消料の6区分
- 区分1 催行の判断日まで取消料はかからない。
- 区分2 催行の判断日の後申請・手配などの固定の費用。
- 区分3 現地の学校などへの登録が完了した日以後固定の費用に、登録料に相当する額を加える。
- 区分4 出発の90日前から31日前まで固定の費用+実施の費用の20%。
- 区分5 出発の30日前から8日前まで固定の費用+実施の費用の50%。
- 区分6 出発の7日前以後固定の費用+実施の費用の100%。出発日の取消し・途中帰国もここで精算する。
割合は現地の学校の取消規定を書面で確かめて確定し、確かめられなければ区分4は0%に切り替える、としています。
2階建てにする意味は、取消料の中身を説明できるようにすることです。固定の費用は、申請や手配の実費のように、取り消しても戻らない費用です。変動の費用は、現地の学校や寮に払う費用のうち、出発が近づくほど払戻しを受けられなくなる部分です。区分ごとの割合を現地の学校の取消規定に合わせておけば、主催者が取消しで実際に負う損害と、参加者に求める取消料が近づき、平均的な損害を超えていないことを説明しやすくなります。区分3で登録料に相当する額を加えるのも、現地の学校への登録が完了した後は、登録料が取消しでは戻らない費用に変わるという、費用の性質の変化に合わせたものです。
数字を置き換えた例で見ると、申請・手配の実費が2万円、登録料が1万円、実施の費用が40万円のプログラムを出発の20日前に取り消した場合、取消料は固定の費用3万円(実費2万円と登録料相当額1万円)に、実施の費用の50%(20万円)を足した23万円になります。同じ取消しが出発の100日前で、催行の判断日の後・登録の完了の前なら、取消料は申請・手配の実費の2万円だけです。時期によってどの費用が積み上がるのかが、参加者にも見える形になります(数字は説明のための例です)。
留学のあっせんの分野では、申込金を返さない定めや、経過した日数だけで決まる解約料について、適格消費者団体が差止めを求め、裁判上の和解で解約料が改められた例(2012年)もあります。事務所の説明資料では、こうした例もあわせて紹介しました。依頼者からは「支払期限の前で、まだ入金されていなくても取消料を請求したい」という質問もありましたが、取消料は入金の有無にかかわらず請求できる、と回答しています。どの区分に当たるかは、取消しの連絡が主催者に届いた日で判断すると書き、連絡の方法(フォーム、メール)も決めておくと、区分の境目の日の取消しで揉めません。連絡なく出発日に集合しなかった場合も区分6として扱うことを、明記しておきます。
精算のしかた:減額・暫定・確定と、算定根拠の説明
取消料を決めても、実際の損害がそれより小さくなることがあります。補欠の参加者が繰り上がって現地の学校への支払を免れた場合や、現地の学校から一部の払戻しを受けた場合です。参加規約では、変動の費用は、現地の学校から払戻しを受けた額(補欠の繰上げで負担を免れた額を含む)を限度に減額し、取消しから60日で暫定の精算をし、出発の後90日で確定する、と定めました。取消料の算定根拠の概要を、求められたら書面又は電子メールで説明することも書いています。消費者契約法9条2項が、違約金の算定根拠の概要を説明するよう努めることを事業者に求めているためです。
暫定と確定の二段階にしたのは、現地の学校や寮からの払戻しが確定するまでに時間がかかるためです。取消しのたびに確定を待つと返金が大きく遅れ、逆に早く確定させると、後から払戻しを受けた分を参加者に返す手当てがなくなります。60日で一度精算して返せる分を返し、出発後90日で最終の額を確定させる、という順番にしています。
事務所の改訂例 規律違反による途中帰国
途中帰国の返金
理由「返金しない」と取消料の規定を並べると、どちらが適用されるかで争いになり、全額を取り上げる違約金と評価されるおそれがあります。一つの仕組みで精算し、充当の道を設けることで、返さない部分の対価の面も補います。
申込金
理由費用がまだ発生していない時期に全額を取る定めは、その時期の平均的な損害を上回る部分の効力が否定され得ます。
途中帰国の手順そのもの(注意、保護者への報告と協議、改善の確認、迎え・帰国の手配、迎えまでの見守り)は、未成年の参加者の安全の問題として未成年・保護者・家族受講と健康の申告で扱います。
主催者の側の事情・重要な変更・渡航の安全
参加者の都合による取消しと対になるのが、主催者の側の事情による不催行や変更です。参加規約では次のように定めました。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 不催行 | 全額を返金する。通知から30日以内、振込手数料は主催者の負担。遅れたときは法定利率による遅延損害金を付ける |
| 取消しの後に不催行になった | 既に受け取った取消料も返金する |
| 重要な変更(出発日・滞在地域・学校の変更、主要なプログラムの取りやめ、参加費の増額) | 通知から7日以内の取消しなら取消料はかからない |
| 外務省の危険情報(渡航中止勧告・退避勧告)などが出た | 出発の前日まで取消料はかからない。払戻しを受けられない費用などは差し引く |
| 不可抗力による中止 | まず代替の案を提案し、できないときは提供済みの部分などを差し引いて返金し、90日で確定する |
重要な変更を取消料なしで取り消せる、という定めは、主催者が条件を一方的に変えて参加者を縛ることを防ぐためのものです。参加費の増額を重要な変更に含めておけば、参加費を上げる必要が生じた場合でも、増額に納得できない参加者は取消料なしで取り消せるため、増額の条項そのものが争われにくくなります。何が「重要な変更」に当たるかを列挙しておくと、変更のたびに取消料の要否で揉めずに済みます。渡航の安全の基準を外務省の危険情報のような外部の指標に結び付けておくと、主催者が開催したいときにも、参加者が不安を感じたときにも、判断の根拠が共有できます。悪天候など国内のイベントの中止の判断は振替・休講と、最少催行人数・中止で扱います。
申込み・入金の締切、航空券の団体枠、保険の案内
海外団体プログラムでは、催行の判断日の時点で全額の入金を終えた参加者の数で判断するため、申込期間の末日を前に倒し、承諾・請求・入金を判断日までに終えられるようにしました。追加の募集では、航空券の条件が最初の募集と違うことを、承諾の前に示します。
航空券の団体枠は、主催者が契約の名義を持ち、人数が足りないときの差額を主催者が受け払いすると、運送の手配をしていると評価されるおそれがあります。参加規約では、団体運賃の条件は参加者と航空券の販売事業者の間のものとし、主催者は人数の条件が満たされることを保証しない、と整理しました。主催者は参加が確定した人の氏名・連絡先を伝えるだけで、その対価を受け取りません。
海外旅行の保険の案内にも注意が要ります。依頼者は保険会社と提携していると話していましたが、主催者が申込みの取りまとめや保険料の収受をしたり、特定の保険商品を勧めたりすると、保険の募集(保険業法275条1項)に当たるおそれがあります。規約では提携先の名前を書かず、加入する保険会社は参加者が自由に選ぶ、という整理にしました。保険への加入を参加の条件にするかどうかと、どのような補償を求めるかは、事故のときの責任の分け方とあわせて事故・けが・危険の引受けと免責で扱います。
代金を先に受け取る通信販売として申込みを受けるなら、入金を受けたときの承諾の通知(特定商取引法13条1項)も必要です。依頼者からは「会社用の電話番号がないので、特定商取引法に基づく表記に載せなくてよいか」という質問がありました。表記は、請求があれば遅滞なく開示する方式(同法11条ただし書、同法施行規則25条)にできますが、入金の後に送る承諾の通知には電話番号が必要になる、と回答しています。
旅行部分を登録を受けた旅行業者が受け持つ組み方では、参加者の取消しも二本立てになります。主催者との参加契約の取消しは主催者に、旅行業者との旅行契約の取消しは旅行業者に、それぞれ行う必要があり、取消料もそれぞれの契約の定めに従います。参加者が片方だけを取り消して、もう片方の取消料がかかり続けることがないよう、規約と募集要項に取消しの手順を並べて書き、申込みを承諾する通知でも案内しておきます。
滞在型・体験型の取消料の型を比べる
取消料の決め方は、サービスの形によって変わります。資料の中から、滞在型・体験型のサービスの取消料の型を並べます。
| サービス | 取消料の型 | 特徴 |
|---|---|---|
| 海外団体プログラム(8日間) | 固定の費用+変動の費用の2階建て・6区分 | 現地の学校の取消規定に割合を合わせ、払戻しの額で減額する |
| 海外の留学・ホームステイの手配 | 滞在開始の14日前までは滞在費を全額返金(手配料は返さない)。それ以後は滞在費の2週間分。途中で退去するときは通知から2週間分 | 手配料と滞在費を分け、滞在費は「2週間分」という期間で区切る |
| 個人ガイドのマッチング | 48時間前・24時間前の段階 | 当日の取消しが多いサービスで、短い時間の単位で段階を置く |
| 写真館の撮影サービス | 撮影日を基準にした段階に、外注した分の実費を加える | 衣装やヘアメイクなど外注の費用を、撮影の費用と分けて扱う |
| 同行型の体験サービス | 5日前から50%、当日は100% | 少人数で日程を押さえるサービスで、直前の段階を厚くする |
どの型でも共通するのは、提携先(現地の学校、宿泊施設、ガイド)のキャンセル料をそのまま参加者に回すのではなく、主催者の取消料の中のどの部分が提携先の費用なのかを説明できるようにしておくことです。提携先の取消規定を書面で確かめ、その割合と時期に合わせて区分を決めておけば、提携先から請求された額と参加者から受け取る額の差が、説明のつかない上乗せになることを防げます。留学・ホームステイの手配の規約のように、手配料と滞在費を分ける場合は、手配料が何の役務の対価か(滞在先の選定、連絡、書類の準備など)を書いておくと、手配料を返さない理由を説明できます。途中で退去する場合の「通知から2週間分」のように、期間で区切る取消料は、通知の日を基準にすることと、通知の方法を書いておきます。同行型の体験サービスのように、同行中の交通費や宿泊費を事業者が立て替えて後で精算する運用では、取消しのときに立替え済みの費用をどう扱うかも書いておきます。立替えに手数料などを上乗せして利益を得る形にすると、運送・宿泊の手配の対価を受け取っているとみられないかの検討も必要になります(旅行業法との線引き)。共通の規約と回ごとの募集要項に分ける場合、取消料の表は募集要項に置き、規約の側には算定の考え方と精算の手順を置くと整理しやすくなります(書類一式と契約の成立)。
個人ガイドのマッチングサービスのキャンセルポリシーのレビューでは、取消料の割合だけでなく、誰が返金するのか(運営者を通じて、決済の手段に応じて返金する)、いつ返金するのか(取消しの確定から7営業日以内など)を書くよう勧めました。段階の区切りの日数も、「◯日前」とだけ書くと起算日を含めるかで1日ずれる余地があるため、「出発日(体験日)の前日から起算してさかのぼって◯日目に当たる日」のように数え方まで書いておくと、境目の日の取消しで揉めません。
事務所の条文例:取消料と精算
ヒヤリングで確かめること 取消料の設計
- 提携先(現地の学校、宿泊施設、ガイド)の取消規定は書面で確かめられますか。区分ごとの割合を提携先の規定に合わせる根拠になります。確かめられない区分は割合を下げます。
- 取消しても戻らない固定の費用は、何がいくらかかりますか。申請・手配の実費など、固定の費用の中身を説明できるようにします。
- 催行の判断日と、入金の期限はいつですか。判断日までは取消料をかけない設計にし、入金の期限を判断日から逆算します。
- 途中帰国や規律違反の場合を、どう精算しますか。取消料の区分の一つとして精算し、別の「返金しない」規定を並べないようにします。
- 返金は誰が、いつまでに、どの方法で行いますか。返金の主体・期限・手数料の負担を書きます。
- 保険の加入を参加の条件にしますか。保険会社を案内しますか。保険の募集に当たらない案内のしかたにします。
条文例参加者による取消し(海外団体プログラムの参加規約の例)
- 参加者は、いつでも参加契約を取り消すことができます。この場合、参加者は、取消しの時期に応じて募集要項に定める取消料を支払うものとします。取消料は、取消しにより払戻しを受けられない固定の費用と、実施の費用に時期ごとの割合を乗じた変動の費用の合計とします。
- 変動の費用は、当社が現地の提供機関から払戻しを受けた額(補欠の参加者の繰上げにより負担を免れた額を含みます。)を限度として減額します。当社は、取消しの日から60日以内に暫定の精算を行い、出発日から90日以内に精算を確定します。
- 参加者が出発後に参加を中止し、又は第◯条により帰国することとなったときは、出発日の取消しとみなして前二項を適用します。
- 当社は、参加者から求められたときは、取消料の算定の根拠の概要を、書面又は電子メールにより説明します。
起きがちなこと
よくあるご質問
申込金を返金不可にしてもよいですか?
費用がまだ生じていない時期の取消しでも全額を取る定めは、主催者に生ずべき平均的な損害を上回る部分が無効になり得ます(消費者契約法9条1項1号)。取消しで戻らない固定の費用と、出発が近づくほど増える変動の費用に分け、時期ごとの区分で取消料を決めるほうが、説明できる取消料になります。
取消料の割合は、どう決めればよいですか?
提携先(現地の学校、宿泊施設など)の取消規定を書面で確かめ、主催者が実際に負う費用に合わせて時期ごとの割合を決めます。標準旅行業約款の取消料も比較の材料になります。確かめられない区分は割合を下げるなど、根拠のない取消料を置かないようにします。
途中で帰国した参加者には、返金しなくてもよいですか?
「返金しない」と定めるより、出発日の取消しとして取消料の規定で精算する形のほうが、二つの規定の並置による争いや、全額を取り上げる違約金との評価を避けられます。返金できない部分を、一定の期間内に別のプログラムに充当できるようにした例もあります。
提携先のキャンセル料を、そのまま参加者に請求してもよいですか?
提携先の費用が取消料のどの部分に当たるかを説明できるようにしておくことが前提です。提携先から払戻しを受けた額や、補欠の繰上げで負担を免れた額を差し引いて精算し直す仕組みを置くと、二重取りの疑いを避けられます。
参加者に海外旅行保険を案内してもよいですか?
加入を勧めること自体はできますが、主催者が申込みの取りまとめや保険料の収受をしたり、特定の保険商品を勧めたりすると、保険の募集に当たるおそれがあります。提携先の名前を規約に書かず、保険会社は参加者が自由に選ぶ整理にした例があります。
あわせて読みたい、関連する別のガイド
- 返金規定・中途解約の精算オンライン講座開業の法務ガイド
- 撮影の料金とキャンセル料動画制作・撮影の契約書ガイド
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。法令の運用や行政の解釈は、改正や個別の事情によって変わることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた教室の会員規約・受講規約・受講契約書・入会申込書、語学教室の概要書面・契約書面、ワークショップ・海外プログラム・大会の参加規約、講師・スタッフとの業務委託契約書、スタジオの利用規約・利用契約書、予約プラットフォームの規約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月17日)。参考: e-Gov法令検索 / 特定商取引法ガイド(消費者庁) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 観光庁