このページの要点
- 1回受講扱いにするなら、締切の時刻と理由を条文に書く。事業者の側の事由は列挙する。
- 講師の遅刻・途中の切断は時間単位で精算し、振替の期限と、期限内に日時を出せなかったときの返金を決める。
- 最少催行人数は、判断日の数え方・数える単位・通知・振替か返金かの選択権まで書く。
- 悪天候の中止は判断の主体と数字の基準で決め、不可抗力の範囲を広げすぎない。
結論:欠席・休講・中止は「誰の事情か」を条文で定義し、時間単位・判断日・選択権で書く
レッスンの欠席と振替、講師の都合による休講、イベントの人数不足や悪天候による中止は、どれも「予定どおりに提供されなかったとき、お金と日程をどうするか」の問題です。規約で決めておくことは三つあります。第一に、どの事情を受講者・参加者の側のものとし、どの事情を教室・主催者の側のものとするかを、条文で定義すること。第二に、講師の遅刻や通信の途切れのように一部だけ提供できなかった場合を、時間単位で精算する書き方。第三に、イベントの中止では、判断する日と判断の基準を決め、振替か返金かを参加者が選べるようにすることです。
このページでは、オンラインの日本語レッスン、英語コーチング、英会話伴走プログラム、ボイストレーニングのスタジオの振替の条と、ワークショップ・海外プログラム・大会の開催契約・音楽スタジオ・会員規約の中止の条から、具体的な書き方を整理します。
受講者の側の欠席と当日の取消し:1回受講扱いの理由を書く
オンラインの日本語レッスンの修正版では、前日の20時(日本時間)までに連絡すれば振替・取消しができ、それより後の取消し、無断欠席、開始から15分を過ぎても入室しない場合は、受講者の病気などの事情を問わず1回受講したものとして扱う、と定めました。そのうえで、なぜ1回受講扱いにするのかを条文に書いています。予約の日時に講師の時間を確保していて、直前に他の受講者を入れることができないため、という理由です。1回受講扱いは実質的に違約金に近い性質を持つため、理由を書いておくと、平均的な損害の範囲内であることを説明しやすくなります。
事業者の側の事由は、講師の体調不良など、事業者の設備・通信の障害、不可抗力の3つに列挙し、受講者の側の端末・通信の不具合や病気は含めないと明記しました。どちらの側の事情かが条文で決まっていれば、通信が切れたときに誰の責任かで揉める余地が小さくなります。
| 教室・講座 | 締切 | 締切後・例外 |
|---|---|---|
| オンラインの日本語レッスン | 前日20時(日本時間) | 締切後の取消し・無断欠席・15分経過で1回受講扱い |
| アスリート向け英語コーチング | 前日21時 | 締切後は1回消化。ただし急な公式戦の日程変更・報道対応・負傷・チームの招集などは無償で振替 |
| 英会話伴走プログラム | 前日まで | 当日の連絡による変更も妨げない |
| ボイストレーニングのスタジオ | 8日前まで(1回まで振替) | 7日前以降はスタジオ費用相当の定額、5日前以降は50%、3日前以降は100%のキャンセル料 |
スタジオの例では、キャンセル料の割合を掛ける基準の額を「レッスン料金」として定義していました。基準の額を定義しないと、割合だけ決めても額が決まりません。
競技の日程のように、受講者の側の事情でも本人ではどうにもならないものを例外にする書き方は、アスリート向けの講座ならではです。英語コーチングの規約では、急な公式戦の日程変更や負傷などは無償で振り替えられるとし、長期の入院や負傷は協議で受講期間を延ばせるとしました。提供者の責めによって消化できなかった分は、受講期間を無償で延長します。
締切は、資料の中でも前日の17時・20時・21時など教室ごとにさまざまでした。どの時刻にするかより、日付だけでなく時刻まで書くこと、海外に住む受講者がいるなら「日本時間」と書くこと、連絡の手段(LINE、メール、予約システム)と、どの時点で連絡が届いたとみるかを書くことが大切です。締切の直前に送ったメッセージが既読にならなかった場合に、締切に間に合ったかどうかで揉めるのを防げます。
連絡のない欠席が続く人への対応を、お金ではなく会員の資格で定める例もあります。会員制のバーの会員規約は、度重なる無断のキャンセルを除名の事由の一つに挙げていました。席の数が限られ、予約した人のために枠を空けておく場では、1回ごとのキャンセル料よりも、繰り返す人に利用を続けてもらわない手段のほうが実情に合う場合があります。除名まで進む前に注意や一時的な利用の停止を挟む段階は、休会・退会・除名と会員どうしのルールで扱います。
講師の側の休講・遅刻・途中の切断:時間単位で精算する
講師が休んだら振替で対応し、返金はしない、とだけ書く規約は少なくありません。振替の日時に受講者が都合をつけられなかった場合や、期限までに振替の日時が出せなかった場合にどうなるかが書かれていないと、結局は返金の争いになります。オンラインの日本語レッスンの修正版では、講師の側の事情を時間単位で扱う条を置きました。
講師の側の事情による短縮・休講の扱い(オンラインレッスンの例)
- 講師が遅れて入室した予定の終了時刻まで実施し、遅れた時間の分を別の日に行う。
- 15分を過ぎても講師が入室しない受講者は退出でき、1回分を振り替える。
- 途中で通信が切れた(事業者の側の事由)切れた時間の分を別の日に行う。
- 振替の期限翌月の末日まで。契約が終わった後も、振替分は期限まで受けられる。
- 期限までに日時が出せない受講者が期限の7日前までに申し出たのに、事業者が期限内の日時を出せなかった回は、事業者の側の事由とみなして返金する。
予約は、講師がLINEで確定の返信をした時に成立する、とも定めています。予約の成立の時点が決まっていないと、遅刻か欠席かの判断ができません。
英会話伴走プログラムの受講契約書では、講師の都合による回は消化扱いにせず、繰越の回数の上限にも算入しないと定めました。受講者が遅刻した場合は、予定の終了時刻まで実施して1回消化とします。講師の遅刻と受講者の遅刻で扱いを分けて書くのが要点です。会員制の音楽スタジオの利用規約も、予約は確認の通知で成立するとしており、予約の成立の時点をはっきりさせておくことは、レッスンでも施設の時間貸しでも、取消しや遅れの扱いの出発点になります。
講師の都合で休む回を、別の講師が担当する代講で実施する教室もあります。講師の都合による休講・代講は返金の対象外とだけ書く例も見かけますが、代講で実施した回は提供済みと扱うのか、担当の講師を指名して申し込むコースでも同じ扱いにするのかを書いておかないと、「指名した講師のレッスンを受けていない」という申出に答えられません。指名の有無で扱いを分けるか、代講を受けるかどうかを受講者が選べるようにしておきます。
対面のレッスンを原則としてキャンセルできないものとし、オンラインへの振替を事業者の判断に任せる規約もあります。対面とオンラインで受講者の受け取る価値が同じとは限らないため、オンラインに振り替えるのは受講者が選んだ場合に限るか、少なくとも受講者が断ったときの扱い(別の日の対面での振替、又は返金)を書いておきます。契約期間の末日の7日前までに予約を申し出たのに事業者が日時を出せなかった回数は、次の契約期間の末日まで繰り越せる、とした例もあります。繰越と返金の関係は月謝・会費・入会金・チケットの返金設計で扱います。
講師の側の休講を振替だけで済ませる書き方は、資料の中にも複数ありました。ボイストレーニング・歌唱指導の講座の利用規約の修正版は、講師が欠席したときは振替で対応するとし、3か月の英語コーチングの受講契約書も、講師の都合の回を振替で済ませる定めでした。振替だけで終える定めは、休講が続いて振替の枠が足りなくなったときに行き詰まります。アスリート向けの英語コーチングのように受講期間を無償で延ばす形か、オンラインの日本語レッスンのように期限内に日時を出せなければ返金する形を、振替の後ろに置いておきます。遅刻については、ボイストレーニングのスタジオの規約が、遅れてもレッスンの時間は延長しないと定めていました。講師の遅刻と受講者の遅刻をそれぞれどう扱うかを並べて書いておくと、どちらの遅れかで扱いが変わることが一目で分かります。
主催者の側でやめるとき:人数不足・講師の休講・教室の閉鎖
人数が集まらないときに中止できる規定を置かないまま中止すると、債務不履行と評価され、遠方の参加者が手配した航空券や宿泊のキャンセル料まで請求される余地が生じます(民法416条2項)。経営者向けのワークショップの参加規約でも、判断の時点を「初日の前日から起算してさかのぼって◯日目に当たる日」と数え方まで定め、数える単位と、中止のときに振替か返金かを参加者が選べることを条文にしました。
10代向けの海外団体プログラムでは、判断日の時点で全額の入金を終えた参加者の数で催行を判断することにし、承諾・請求・入金を判断日までに終えられるよう、申込期間の末日を募集ページの日付より前に倒しました。追加の募集では、航空券の条件が最初の募集と違うことを承諾の前に示します。人数で判断する日から逆算して申込みの締切を決める、という順番です。取消料の設計はツアー・遠征・海外プログラムの取消料と旅費で扱います。
| 場面 | 資料での扱い | 規約で決めておくこと |
|---|---|---|
| 人数不足(海外団体プログラム) | 判断日の時点で全額の入金を終えた人数で判断する。不催行なら全額を返す | 判断日と、そこから逆算した申込み・入金の締切 |
| 講師の都合(オンラインの日本語レッスン、英会話伴走プログラム) | 時間単位で振り替え、期限内に日時を出せなければ返金する。講師の都合の回は消化扱いにせず、繰越の上限にも数えない | 振替の期限と、その後の返金又は期間の延長 |
| 悪天候・災害(会員制の音楽スタジオ) | 暴風警報・特別警報の発表や震度5強以上の地震で施設が運営の停止を判断したら、キャンセル料を取らない | 判断する人と、数字の基準 |
| 不可抗力が長引く(カードゲームの大会の開催契約) | 不可抗力の状態が1か月を超えて続いたら、契約を解除できる | 解除できる時点と、それまでの費用の扱い |
| 教室の閉鎖・サービスの終了(ダンス・体操のスタジオ、オンラインの日本語レッスン) | 終了したときは、まだ提供していない期間の料金を返す。終了や事業の譲渡に同意しない利用者は解除でき、未提供分相当額を返す | 通知の時期と、返す範囲(前払いの月謝・繰越分) |
表の下の二つは、資料の中でも条文の例が少ない場面です。教室を閉じる、サービスを終える、事業を他の人に譲るといった判断は、生徒の側から見れば、続けるつもりで払った前払いの月謝や、振替・繰越で残っている回数が宙に浮く場面です。ダンス・体操のスタジオの会員規約は、サービスを終えるときは未提供の期間の料金を返すと定め、オンラインの日本語レッスンの修正版は、終了や譲渡に同意しない利用者に解除の道を残していました。終了の通知をいつまでに出すか、通知から終了までの間の月謝の引落しを止めるのか、繰越分を返すのか使い切ってもらうのかまで書いておくと、閉鎖の前後の問い合わせに同じ答えを返せます。
悪天候・不可抗力・安全上の中止:判断の主体と数字の基準
中止の条でよく見かけるのは、判断の主体と基準が「当社が判断した場合」としか書かれていない形です。個人ガイドのマッチングサービスのキャンセルポリシーのレビューでは、不可抗力の場面の「当社が判断」を「当社が合理的に判断」に改めるよう勧めました。判断の基準を数字で書けるなら、さらに争いは減ります。会員制の音楽スタジオの利用規約では、暴風警報・特別警報の発表や震度5強以上の地震で施設が運営の停止を判断した場合は、キャンセル料を免除すると定めていました。安全のための中止と事故の責任の関係は事故・けが・危険の引受けと免責で扱います。
不可抗力の範囲を広げすぎないことも大切です。カードゲームの大会の開催契約では、不可抗力の定義から「通常の天候不順」を除いていました。少しの雨や風で開催できないことまで不可抗力に含めると、主催者の都合による中止との境目がなくなるためと見られます。不可抗力は外部の大きな出来事に限り、発注者や参加者の側の事情による中止は、その都合によるキャンセル料の対象として分けて書きます。
中止のあとの精算も決めます。海外団体プログラムでは、不可抗力で中止するときは、まず代替の案を提案し、できないときは、参加費から提供済みの部分、払戻しを受けられない支払済みの費用、回収できない募集・同行の費用(申請手配料が上限)を差し引いて返し、90日で確定するとしました。体験・アクティビティの予約サービスでは、悪天候・災害・安全の確保が難しい場合などの変更・中止・延期の権限は体験の提供元にあり、返金は体験ごとのキャンセルポリシーによる、と運営者の立場を書き分けています(予約サービスの規約はスタジオ・教室スペース・予約プラットフォーム・出店)。写真館の規約では、体調不良(受診の記録の提示を求めることがある)、公共交通機関の大幅な遅れ・運休、悪天候で来店が難しい場合に、キャンセル料を免除・減額し、日程の変更は1回限りとしていました。中止の代わりに別の内容(代替のプランや別の日)を提案する場合も、受けるかキャンセルするかは参加者が選べる形にしておくと、代替の案を押し付けたという不満を避けられます。
事務所の条文例:振替と中止
振替と中止の条を作るときは、まず次の問いで運用を確かめ、そのうえで条文に落とします。
ヒヤリングで確かめること 振替・休講・中止のルール
- 受講者の欠席・取消しの締切は、何日の何時ですか。連絡の手段は何ですか。時刻と、海外の受講者がいるなら日本時間であることまで書きます。
- 締切を過ぎた取消しを1回受講扱いにする理由は何ですか。講師の時間の確保、直前に他の受講者を入れられないことなど、理由を条文に書きます。
- 事業者の側の事由に含めるもの・含めないものは何ですか。講師の体調、設備・通信の障害、不可抗力は含め、受講者の端末・通信・病気は含めない、などと列挙します。
- 講師の遅刻・途中の切断は、時間で精算しますか、1回で精算しますか。遅れた時間の分を別の日に行うのか、一定の時間を過ぎたら1回分を振り替えるのかを決めます。
- 振替の期限はいつで、期限までに日時を出せなかったらどうしますか。返金か、次の期間への繰越かを決めます。
- イベントの最少の数・判断日・通知の方法、悪天候の判断の基準は何ですか。判断日から逆算して申込みの締切を決め、数字の基準で中止を判断できるようにします。
条文例講師の側の事由による振替と返金(レッスンの規約の例)
- 次の各号に掲げる事由(以下「当方の事由」といいます。)によりレッスンの全部又は一部を実施できなかったときは、当方は、実施できなかった時間に相当するレッスンを別の日時に行います。(1)講師の体調不良その他講師の側の事情 (2)当方の設備又は通信の障害 (3)天災その他の不可抗力
- 受講者の端末若しくは通信環境の不具合又は受講者の病気その他の受講者の側の事情は、当方の事由に含みません。
- 第1項の振替は、当該レッスンの属する月の翌月末日までに行います。受講者がその7日前までに振替を申し出たにもかかわらず、当方が期限内の日時を示せなかったときは、当該レッスンの受講料に相当する額を返金します。
条文例サービスの終了と返金(会員規約の条を整理した例)
- 当スタジオは、やむを得ない事情によりサービスの全部又は一部を終了するときは、終了の日の◯日前までに、その旨を会員に通知します。
- 前項の場合、当スタジオは、受領した月謝その他の料金のうち終了の日の後の期間に相当する額を返還します。振替又は繰越により未受講となっている回についても、同様とします。
通知の日数は例です。返す範囲は、料金が何の対価かの定めと合わせて決めます。
起きがちなこと
よくあるご質問
当日のキャンセルを1回消化にしてもよいですか?
予約の締切と、1回消化にする理由(講師の時間を確保していて直前に他の受講者を入れられない、など)を規約に書いておけば、合理的な扱いとして説明しやすくなります。1回消化は違約金に近い性質があるため、平均的な損害を超えない範囲にとどめます。
講師が休んだら、振替だけで足りますか?
振替の期限と、期限までに教室が日時を示せなかった回をどうするかまで、規約に書いておきます。受講者が期限の前に申し出たのに教室が日時を示せなかった回は返金する、などの定めを置きます。
講師が遅刻したときは、どう扱えばよいですか?
予定の終了時刻まで実施し、遅れた時間の分を別の日に行う、一定の時間を過ぎても講師が来なければ受講者は退出でき1回分を振り替える、と時間単位で書く方法があります。受講者が遅刻した場合とは分けて定めます。
人数が集まらないときの中止は、どう書けばよいですか?
最少の数と数え方(申込みの単位か人数か)、判断する日時、通知の方法を定め、中止のときは振替か返金かを参加者が選べるようにします。規定がないまま中止すると、債務不履行として参加者の旅費などを請求される余地があります。
台風の日のレッスンやイベントは、どう扱えばよいですか?
暴風警報や特別警報の発表、一定以上の震度の地震などの数字の基準で中止を判断し、その場合はキャンセル料を取らない、と書いておくと迷いません。判断の主体と、合理的に判断することも明記します。
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