撮影・録画・肖像・配信の同意

写真や動画は、撮影・共有・公開の3段階に分け、公開は別の任意の同意にするところから整理します。

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「動画はプロモーションに利用することがあります」の一文だけでは、写りたくない人がどうすればよいかが分かりません。

このページの要点

  • 公開は申込みの一括の同意とは別の、いつでも撤回できる任意の同意にする。子どもの写真は可・不可を選んでもらう。
  • 録画は同意制にし、保存の期間を数字で、見られる人と研修への使い方を具体的に書く。
  • 生徒の撮影は、復習のための手元・仕上がりの写真など撮れる範囲を示し、共有と投稿を制限する。
  • 技術を教える講座は、撮影の禁止だけでなく、秘密情報と利用の制限を契約で決める。

結論:撮影・共有・公開の3段階に分け、公開は別の任意の同意にし、保存期間と見る人を書く

教室のレッスン風景、発表会、オンラインレッスンの録画、イベントの記録写真、出演者の写真。写真や動画は、広報にも記録にも欠かせない一方で、写る人の同意をめぐる争いの種にもなります。「動画はプロモーションに利用することがあります」という一文だけの規約では、誰が写るものを、どこに、どう公開するのか、写りたくない人はどうすればよいのかが分かりません。

整理のしかたは、撮影(記録のために撮る)、共有(参加者や保護者の間で見る)、公開(ホームページ・SNS・広告に載せる)の3段階に分け、公開は申込みの時の一括の同意とは別の、いつでも撤回できる任意の同意にすることです。録画は、保存の期間と、見られる人、研修などに使う範囲を書きます。生徒や参加者が自分で撮る・投稿する場合のルールも、教室が撮る場合とは別に決めます。このページでは、教室・オンラインレッスン・海外プログラム・技術を公開するワークショップ・会員制の店舗・体験ショーの書類から整理します。

レッスン風景・発表会の掲載:同意の取り方を比べる

人には、みだりに自分の容ぼうを撮影され、公表されない人格的な利益があります(最判平成17年11月10日)。教室の写真や動画を公開するときは、この利益を前提に同意の取り方を決めます。資料の中でも、同意の取り方は教室によって正反対でした。

掲載の同意の取り方の比較
書類取り方特徴
英会話教室の入会申込書ホームページへの写真・動画の投稿を「可・不可」で選んでもらう入会の時に意思を確かめる。不可の生徒を写さない・加工する運用が必要
ダンス・体操のスタジオの会員規約レッスン風景や発表会をSNSで配信することがあり、支障がある場合は入会時又は撮影の前に不許可の意思を示してもらう申出がなければ同意として扱う方式。申出の機会を逃した人が後から争う余地が残る
アスリート向け英語コーチングの規約氏名・肖像・音声・体験談を広告に使うときは、目的・方法・媒体を示して同意を得る。同意はいつでも撤回できる使う場面ごとに同意を得る方式。何に使うかを具体的に示す

子どもの写真や動画を公開する教室では、申出がなければ同意として扱う方式より、入会の時に可・不可を選んでもらう方式のほうが、後から同意の有無で争いになりにくくなります。どちらの方式でも、可・不可の意思を後から変えられること、変えた後は新しい撮影から外し、公開済みのものはどうするのか(削除するのか、相当の期間内に公開をやめるのか)を書いておきます。子どもの受講で契約者と受講者が分かれる場合は、誰の同意をとるのか(保護者か、本人か)も決めておきます(未成年・保護者・家族受講と健康の申告)。

写真や動画で本人が分かる場合、それは個人情報でもあります。個人情報を扱う事業者は、何に使うのかをなるべく具体的に決めておく必要があり(個人情報保護法17条1項)、申込書やフォームで本人から直接書面(電磁的記録を含む)に書いてもらう形で集めるときは、その前に使い道を本人に示します(同法21条2項)。

オンライン個別レッスンの録画:同意・保存期間・見る人・研修への使い方

オンラインの日本語レッスンの案件の報告書では、規約の録画の定めが、方法と目的の点でプライバシーポリシーと食い違っていること、レッスンに同席する家族や、文字起こしのツールの扱いがないことを指摘しました。修正版では、録画の条を次のように作り直しています。

事務所の改訂例 オンラインレッスンの録画の条

録画の定め

改訂前録画の方法・目的がプライバシーポリシーと食い違い、同席する家族や文字起こしのツールの扱いもない。(依頼者のドラフト)
改訂後録画の条件・保存の期間・研修への使い方・見られる人を一つの条にまとめて定める(下の表)。

理由規約とプライバシーポリシーで書き方が違うと、どちらに同意したのかが分からなくなります。

修正版の録画の条で定めたこと
項目定め
録画の条件録画・録音は受講者の同意を得た場合に限る。同意はいつでも撤回でき、拒否しても不利益はない
保存の期間契約期間中と、終了後6か月まで。無料体験だけを受けた人は、実施日から6か月まで
研修・教材づくり記録から得た気付きを参考にするだけで、記録そのものや、受講者が分かる情報は使わない
見られる人受講者、講師、契約者(保護者)。子どものレッスンの録画・録音は保護者の同意がある場合に限る。成年の家族の録画を契約者が見るには、その家族の同意が要る

保存の期間を書いておけば、削除の求めにも保存の理由にも答えられます。「研修に使う」の範囲を絞っておかないと、他の講師に録画を見せることまで含まれると受け取られます。家族で受講する設計では、見る人の範囲が争点になりやすいところです。

アスリート向けの英語コーチングの規約は、録画は原則として行わず、品質の向上や広報のために行う場合は事前に同意を得る(未成年者は法定代理人の同意)、氏名・肖像・音声・体験談を広告に使うときは、目的・方法・媒体を示して同意を得て、いつでも撤回できる、と定めていました。録画をする前提のサービスか、原則しないサービスかで、条の出発点が変わります。会議ツールや文字起こしのツールが外国の事業者のサービスなら、個人情報の取扱いの説明も、それに合わせて書きます。

レッスンに家族が同席して映り込む場合や、会話を文字起こしのツールに入力する場合も、録画と同じく、目的・保存の期間・見る人を決めておく必要があります。保存の期間を「合理的な期間」とだけ書く規約や、記録を第三者に提供する場面に「当社が必要と判断した場合」のような広い例外を置く規約もありますが、期間は数字で書き、第三者への提供は法令に基づく場合など具体的な場面に限って書くほうが、受講者に説明できる規約になります。

撮影・共有・公開の3段階:海外団体プログラムの同意

10代向けの海外団体プログラムでは、依頼者は「写真はLPやSNSで使い、保存は半永久」と考えていました。事務所は、撮影・共有と公開を分け、公開は別の任意の同意で、いつでも撤回でき、保存は撤回まで、という形を提案しました。

海外団体プログラムの写真の3段階

  1. 1 撮影(必須の同意)活動の記録のために、主催者が写真・動画を撮る。
  2. 2 共有(必須の同意)連絡用のグループや公式LINEで、参加者とその保護者だけが見られるように共有する。他の参加者の写真を外に出さないことを約束してもらう。
  3. 3 公開(任意の同意・いつでも撤回できる)募集のページ・SNS・ブログに載せる。申込みのフォームとは別の画面で同意をとる。

保存の期間は、公開の同意がある写真は撤回まで、ない写真は帰国から1年としました。

共有の段階では、連絡用のグループの作り方にも注意しました。オープンチャットは、URLが広まると関係のない人も入れてしまうため、主催者が承認した後に個別に案内する形にし、表示名は氏名以外にしてもらいます。共有と公開を分けておけば、公開には同意しない保護者も、子どもの様子を共有のグループで見ることはできます。撮影に必須の同意を求める部分と、任意の同意の部分を、申込みの画面で混ぜないことが要点です。

生徒・参加者が撮る、投稿する:技能の教室と技術を公開するワークショップ

生徒の側の撮影は、教室の側の撮影とは別に決めます。着付け教室の入会申込兼受講契約書では、撮影・録音は原則として禁止し、復習のための手元の写真と仕上がりの写真だけは撮れるが、講師・他の生徒・お客様の顔や教室の内部の情報が入るものは撮れない、とし、教室が承認していないLINEのグループなどでの共有を禁じ、削除を求められたら直ちに従う、と定めていました。技能を身に付ける教室では、復習のための記録を全部禁じると学ぶ側の負担が大きいため、撮れる範囲を具体的に示しています。ダンス・体操のスタジオの会員規約でも、会員が撮影したものを公開するには、事前にスタジオの承諾を得ることとしていました。発表会で保護者の撮影を認める場合は、撮るのは自分の子どもを中心にすること、他の生徒が写ったものをSNSなどに公開しないことを、発表会の案内に書いておくと、投稿の後の苦情を減らせます。月謝制のボイストレーニングのスタジオでは、オンラインのレッスンの録画は受講者本人だけが見られるものとし、第三者との共有を禁じていました。共有の禁止に違反したときの定額の損害賠償金を置く場合は、賠償額の予定(民法420条)として扱われ、額が実際の損害に比べて過大であれば、消費者との契約では消費者契約法10条などの審査を受けます。額の根拠を説明できるようにしておきます。

条文例撮影・録音の制限(着付け教室の入会申込兼受講契約書の例)

  1. 会員は、レッスン及び現場活動において、撮影及び録音をしてはなりません。ただし、復習のために、自らの手元及び仕上がりを撮影する場合は、この限りではありません。
  2. 前項ただし書の場合であっても、講師、他の会員若しくは顧客の顔又は当教室の内部の情報が写り込むものは撮影してはなりません。
  3. 会員は、撮影したものを、当教室が承認していないLINEのグループその他の方法で共有してはなりません。当教室から削除を求められたときは、直ちに削除するものとします。

伝統工芸の研究所が独自の技術を全5回のワークショップで公開する案件では、依頼者の利用規約とキャンセルポリシーをレビューしました。事務所は、この講座の本質は「イベントの運営」ではなく、技術の流出と模倣の防止、ブランドの防衛にあると指摘しました。冒頭で、開示する情報が研究所の知的な資産であり、限定的に開示するものであることを位置付けないと、「普通の文化講座だと思った」と主張されます。販売の禁止や教室の運営の禁止が、応用した作品、受注による制作、ネットでの販売、海外での活動、オンライン講座、SNSのライブ配信、企業向けの講座のどこまで及ぶのかも、決めておく必要があります。

事務所の改訂例 技術を公開するワークショップの規約

規約の性格

改訂前一般的なイベントの運営の規約。(依頼者の利用規約)
改訂後受講契約と秘密保持契約と知的財産の利用制限の契約を兼ねる書類として、全面的に設計し直す。

理由技法や手順は著作物として保護されにくいので、契約で範囲を決めて守ります。

秘密の情報

改訂前定めがない。
改訂後秘密情報の定義、目的外の利用の禁止、資料の返還・削除、違反したときの差止めなどを置く。

理由撮影・投稿の禁止だけでは、口頭や手書きで広まる技法を守れません。

補講

改訂前「可能な限り補講します」と書く。(依頼者のキャンセルポリシー)
改訂後補講を実施する義務は負わず、方法は運営の側で決めると書く。

理由「可能な限り」は、補講を受けられるという期待を生みます。

同じ案件のキャンセルポリシーは、20日前から前日までは50%、当日は100%、初回を受講した後の途中の返金はしない、としていました。レビューでは、この割合と返金しない扱いが合理的である理由(少人数制で席を確保していること、講師を拘束していること、特殊な材料を用意すること、段階を追うカリキュラムであること)が書かれていないこと、キャンセルポリシーに解除の条がないことも指摘しました。技術を守る条と、お金の条は、同じ講座の書類の中で一緒に設計します。

撮影を制限する範囲は、何を守りたいのかで決まります。着付け教室の教室利用規約は、一般的な着付けの技能や経験は本人のものとし、補整の方法・帯結び・仕上がりの基準・教える順序といった教室独自の技術体系は教室に帰属する、と分けていました。復習用の手元の写真は認めながら教室の内部の情報が写るものを禁じる前の節の定めも、この区別に沿ったものと読めます。守りたいものが技術体系なら、撮影の禁止だけでなく、帰属の定めと退会後の扱いまでを一組で書いておきます(講師・出演者・スタッフとの業務委託)。

店舗・施設のルールとしての撮影の禁止と、出演者の肖像

撮影は、写る人の同意の問題であると同時に、場所の持ち主や運営者が決めるルールの問題でもあります。会員制のバーの会員規約では、店内の撮影を、その場で退場してもらう事由の一つに挙げていました。会員どうしが顔を合わせる場所では、誰がいつ来ていたかが写真から分かること自体が、他の会員にとって知られたくない情報になり得るためと見られます。入場が制限された施設の中で開かれる催事への出店の契約でも、施設の中での撮影とSNSへの投稿を出店者に禁じていました。商業施設内のレンタルスタジオの利用契約のレビューでは、施設の中での撮影、他の利用者の映り込み、子どもの撮影の扱いを決めるよう勧めています(施設との契約はスタジオ・教室スペース・予約プラットフォーム・出店)。施設を借りて教室やイベントを開くなら、施設側の撮影のルールを先に確かめ、生徒・参加者向けの規約にも同じ制限を書いておかないと、参加者の投稿が施設との契約違反になりかねません。違反したときに、削除を求めるのか、退場してもらうのか、次回からの利用を止めるのかも、段階を分けて書いておきます。

訪日客向けの体験ショーの出演者との業務委託契約の改訂では、出演者の肖像などを広告やSNSで使う場合は事前に承諾を得ることとし、出演者が承諾を留保し又は拒否しても不利益を与えないよう配慮する、と定めました。仕事として出演する人でも、肖像の利用は報酬とは別に承諾を得る対象です(出演者との契約は講師・出演者・スタッフとの業務委託)。有料の会員制コミュニティの約款のレビューでも、会員の写真・動画を広報に使う場合の同意と、会員が投稿した文章や写真を事業者が利用できる範囲(利用の許諾)を、条文に置くよう勧めました。会員の投稿の扱いは、会員どうしのルールとあわせて休会・退会・除名と会員どうしのルールで扱います。個人で同行型の体験を提供するサービスの規約でも、同行中の撮影は事前に同意を得ることにしていました。

事務所の条文例:録画と公開の同意

ヒヤリングで確かめること 撮影・録画・配信の同意

  1. 誰が撮りますか(教室、講師、生徒、保護者、外部のカメラマン)。撮る人ごとにルールを分けます。
  2. 何に使いますか(記録、参加者の間での共有、ホームページ・SNS・広告)。撮影・共有・公開の段階ごとに同意の取り方を変えます。
  3. 子どもが写りますか。保護者の同意をとり、公開は可・不可を選んでもらう形を検討します。
  4. 録画はいつまで保存し、誰が見られますか。保存の期間を数字で書き、見られる人を列挙します。
  5. 生徒が復習のために撮ることを認めますか。撮れる範囲と、共有の禁止、削除の求めへの対応を書きます。
  6. 配信や、技術を公開する講座ですか。配信の範囲、教材・技法の利用の制限を、参加の条件として示します。

条文例レッスンの録画(オンラインレッスンの規約の例)

  1. 当事業者は、受講者(受講者が未成年者であるときは、その親権者その他の法定代理人)の同意を得た場合に限り、レッスンを録画し、又は録音します。受講者は、いつでも同意を撤回することができ、同意しないこと又は撤回したことを理由として不利益を受けることはありません。
  2. 録画及び録音(以下「記録」といいます。)は、契約期間中及び契約の終了後6か月を経過する日まで保存し、その後速やかに削除します。
  3. 記録を閲覧することができるのは、受講者、担当の講師及び利用者に限ります。当事業者は、講師の研修又は教材の作成に当たり、記録から得た気付きを参考にすることがありますが、記録そのもの及び受講者を識別することができる情報を用いることはありません。

条文例写真・動画の公開(イベントの参加規約の例)

  1. 主催者は、活動の記録のため、本プログラムの様子を撮影し、参加者及びその保護者に限って閲覧できる方法で共有します。
  2. 主催者は、参加者又はその保護者が別に同意した場合に限り、前項の写真又は動画をウェブサイト、SNSその他の広報に掲載します。この同意は、いつでも撤回することができます。
  3. 参加者は、他の参加者が写った写真又は動画を、主催者が定める共有の方法以外の方法で第三者に提供し、又は公開してはなりません。

起きがちなこと

よくあるご質問

レッスン風景をSNSに載せるには、同意が必要ですか?

本人が分かる写真や動画を公開するなら、同意を得ておくのが基本です。入会の時に可・不可を選んでもらう方式と、申出がなければ同意として扱う方式がありますが、子どもの写真を公開する教室では、可・不可を選んでもらう方式のほうが、後から同意の有無で争いになりにくくなります。

申込みの時の一括の同意だけで足りますか?

撮影(記録)と、参加者の間での共有と、ホームページやSNSへの公開は分けて考えます。公開は、申込みの同意とは別の任意の同意にし、いつでも撤回できるようにしておくと、撤回の申出にも対応できます。

生徒が自分で録画・撮影するのを禁止できますか?

規約で定めれば禁止できます。技能を身に付ける教室では、復習のための手元の写真や仕上がりの写真だけは認め、講師・他の生徒の顔や教室の内部の情報が入るもの、承認していないグループでの共有を禁じる、と範囲を具体的に書く方法があります。

発表会の写真・動画を保護者が投稿するのは、止められますか?

発表会の案内や規約で、撮影してよい範囲と、他の生徒が写ったものをSNSなどに公開しないことを示しておくことはできます。教室が撮る写真の扱いと、保護者が撮る写真のルールを分けて示しておきます。

写りたくない参加者には、どう対応すればよいですか?

申出があれば撮影の範囲から外す、識別できないよう加工する、公開済みのものは相当の期間内に公開をやめる、と規約に書いておく方法があります。申出の方法(どこに、いつまでに伝えるか)も書いておきます。

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