教室の月謝の値上げ(料金改定)の進め方

月謝を上げるときは、金額より先に変更の道筋を決め、周知・同意・記録を一組で回します。前納した月謝やチケットの扱いと、同意しない人の退会の道まで、規約に書いておきます。

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規約に「通知した日から効力を生じる」「受講を続けたら同意したとみなす」とだけ書いてあると、予告期間のない値上げになり、変更の合理性も疑われます。

このページの要点

  • 道筋は二つ。規約(定型約款)の変更の制度で一斉に変えるか、一人ひとりと合意し直すか。前者は民法548条の4の要件と周知の手順が条件になる。
  • 変更の条には、理由の例、効力発生日、不利益な変更の予告期間、同意しない人の退会を書く。みなし同意の文言は置かない。
  • 前納した月謝と購入済みのチケットは旧料金のまま、新料金は更新日以後から。期間と総額を決めたコースは途中で上げない。
  • 未成年の生徒本人だけの署名は保護者の同意にならない。お知らせは理由・日付・変更点の一覧・退会の道を同じ文面に書く。

結論:値上げは金額より先に「変更の道筋」を決め、周知・同意・記録を一組で回す

教室の月謝を上げると決めたとき、最初に考えるのは新しい金額ですが、後の揉めごとを左右するのは金額ではなく、変更の道筋です。道筋は二つあります。ひとつは、規約(法律の言葉では定型約款)の変更の制度を使って、会員全員の契約の内容を一斉に変える道。もうひとつは、会員一人ひとりに新しい条件を示して合意し直してもらう道です。前者は個別の同意が要らない代わりに、変更の内容に合理性があることと、決められた手順での周知が条件になります(民法548条の4)。後者は確実ですが、同意しない人が出たときに、元の条件で続けるのか、契約を終えるのかを決めておく必要があります。

どちらの道を通る場合も、実務で外せないのは次の四つです。①新しい料金と適用開始日を、誰が読んでも一つの意味になるように日付で書くこと。②すでに前納した月謝や購入済みのチケットを、新旧どちらの料金で扱うかを区分ごとに決めること。③同意しない人が、値上げの前に不利益なく退会できる機会を用意すること。④いつ・どの方法で・どの版を知らせたかを記録に残すこと。値上げのついでに他の規約の条も変える場合は、変える点を一覧にして示します。

このページは、対面の教室や子どもが通う教室を中心に、値上げの進め方と、規約のどこをどう書いておけば値上げが通りやすくなるかを整理します。事務所が作成した日本語レッスンの規約の変更条、入会金だけで月額が無料の会員制サロンの契約書、経営者向けワークショップの参加規約の変更条の例を使います。月謝・チケットの返金の考え方は月謝・会費・入会金・チケットの返金設計で扱っており、ここでは「料金を後から変える」場面に絞ります。税金の扱いには触れず、表示価格が税込か税別かを書類のすべてでそろえて明記することだけを前提にします。

変える道筋は二つ:規約の変更で変えるか、一人ひとりと合意し直すか

規約の変更の制度が使えるのは、その規約が「定型約款」に当たる場合です。定型約款とは、ある事業者が不特定多数の相手に行う取引で、内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なもの、について、契約の内容にするために準備した条項の総体をいいます(民法548条の2第1項)。料金表と会員規約を全員に共通で使っている教室の入会契約は、これに当たる場合が多いと考えられます。一方で、一人ひとりと条件を個別に決めている部分(個別に決めた特別料金、期間を区切った特別なコース、兄弟姉妹の優遇の個別の取り決めなど)は、規約と別の個別の合意にあたり、規約の変更の仕組みでは変えられない可能性があります。

規約の変更で変えられるのは、次のどちらかに当たるときです(同法548条の4第1項)。

  • 変更が、相手方(会員)の一般の利益に適合するとき(値下げ、特典の追加など)。
  • 変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により変更をすることがある旨の定めの有無とその内容、その他の変更に係る事情に照らして合理的なとき。値上げは多くがこちらで判断されます。

値上げは、会員から見れば不利益な変更なので、後者の「合理的」といえるかが問われます。物価や外部の費用の上昇といった必要性、上げ幅の相当性、変更をすることがある旨と理由の例が規約に書かれていたか、通知の時期と、同意しない人が退会できる道があったか、といった事情を合わせて見られます。規約に「いつでも変更できる」と書いてあることは、判断の事情の一つにすぎず、それだけで足りるわけではありません。

値上げの道筋を決める順番

  1. 値上げの対象は、全員に共通の料金表と規約で契約している会員ですか。

    はい規約の変更の制度(民法548条の4)で一斉に変えられるか検討する。規約に変更の条があるかを確かめる。

    いいえ個別の合意が必要。新しい条件を示して同意書をもらう。

  2. 規約に、変更の条(理由の例・周知の方法・効力発生日・不利益な変更の予告期間)が書かれていますか。

    はいその条の手順どおりに進める。書かれた日数は教室自身を拘束する。

    いいえ今回の改定で変更の条を置く。条の有無は合理性の判断の事情の一つにとどまるが、定めがないことは不利に働くため、今回の値上げは一人ひとりの同意で行う方が確実。

  3. 対象の中に、無料から有料になる人、期間と総額を決めたコースの途中の人、購入済みのチケットを持つ人がいますか。

    はい区分ごとに適用の時期と扱いを決める(後の節の表)。

    いいえ全員に更新日から適用でよい。

規約の変更の制度で足りるときも、同意書をもらう運用にしておくと、後から「聞いていない」と言われる場面が減ります。同意書は、制度が使えるかどうかの判断を補強する資料にもなります。

規約の変更の条には、何を書いておくか

値上げの場面で規約の変更の条が働くかどうかは、条文の書き方で大きく変わります。教室の規約には、「当教室は、必要に応じて本規約を変更できる。変更後に受講を続けた場合は、変更に同意したものとみなす」「通知した日から効力を生じる」といった短い書き方が少なくありません。この書き方には、三つの弱さがあります。

  • 効力が通知の日に生じる定めは、会員が内容を知り、受け入れるか退会するかを考える時間を残しません。民法は、変更をするときに効力発生時期を定めて周知することを求め(548条の4第2項)、合理性が要件となる変更は、効力発生時期が来るまでに周知しなければ効力を生じないとしています(同条3項)。
  • 「受講を続けたら同意したとみなす」は、消費者(会員)の何もしないことを意思表示とみなす条項にあたり得ます。消費者契約法10条は、消費者の不作為をもって新たな申込みや承諾の意思表示をしたものとみなす条項で、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としています。
  • 変更で会員に損害が出ても一切責任を負わない旨を重ねて書くと、全部免責として消費者契約法8条1項1号に触れるおそれがあります。変更の条に責任の話を混ぜず、免責の条で別に整理します(事故・けが・危険の引受けと免責)。

事務所が作成した、オンラインの日本語レッスンの規約の変更の条は、次の組み立てでした。通常の教室の規約にも、そのまま応用できます。

条文例規約の変更の条(日本語レッスンの規約の例を整理)

  1. 当教室は、次のいずれかに該当するときは、民法第548条の4の定めにより、本規約を変更することができる。(1)変更が利用者の一般の利益に適合するとき。(2)変更が利用契約の目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、本条の定めの内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
  2. 前項第2号の変更に当たり得る事由には、次のものがある。法令の制定又は改廃/物価、外部のサービスの利用料その他の経済事情の変動に伴う料金の改定/本サービスの内容、提供の方法又は用いるツールの見直し/講師の増員その他の運営の体制の変更。
  3. 当教室は、本規約を変更するときは、変更後の内容及び効力発生日を、効力発生日までに本サイトに掲載するとともに、連絡アプリ及び電子メールにより利用者に通知する。利用者に不利益となる変更(料金の値上げを含む。)は、効力発生日の30日前までに掲載及び通知を行う。
  4. 料金を値上げする変更は、効力発生日以後に最初に到来する更新日から適用し、既に購入されたレッスンチケットの料金には適用しない。利用者は、不利益となる変更に同意しないときは、月額プランは解約し、レッスンチケットは利用をやめることができる。

第2項の事由の例示は、変更をすることがある旨とその内容を規約に書いておくという意味で、合理性を支える事情になります。例示した事由に当たれば自動的に有効になるという意味ではありません。第3項の30日は例です。教室の月謝の締め日や引落し日と合わせて決めます。

組み替えの例 規約の変更の条

効力発生

改訂前通知した日から効力を生じる。
改訂後効力発生日を定め、その日までに掲載・通知する。不利益な変更(値上げを含む)は30日前までに行う。

理由会員が受け入れるか退会するかを選ぶ時間を確保する。周知を効力発生時期までに行うこと(民法548条の4第2項・3項)を、教室自身の予告期間で裏づける。

同意の扱い

改訂前変更後も受講を続けたときは、変更に同意したものとみなす。
改訂後同意しない人は、月額プランは解約、チケットは利用をやめられる。みなし同意の文言は置かない。

理由何もしないことを同意とみなす条項は、消費者契約法10条で無効とされるおそれがある。退会の道を示すほうが合理性を支える。

適用の時期

改訂前変更の時期の定めなし。
改訂後値上げは、効力発生日以後に最初に来る更新日から適用し、購入済みのチケットには適用しない。

理由前納した期間と購入済みのチケットを旧料金のままにしておけば、すでに支払った人の期待を損なわずに済む。

経営者向けの2日間のワークショップの参加規約でも、変更の条は同じ骨組みで置きました。個別の同意を得ることなく参加契約の内容を変更できる場合を、会員の一般の利益に適合するときと、合理的なときに限り、変更するときは効力発生日を定めて、変更の旨・変更後の内容・効力発生日を、ウェブサイトまたは申込みフォームへの掲載と、メールの送信で周知する、という定めです。期間の長い会員制の教室でなく、単発の講座でも、すでに申し込んだ人がいるときに内容や条件を直す場面はあるため、同じ条を置いてあります。

既存の会員、前納した月謝、購入済みのチケットをどう扱うか

値上げの案内で一番聞かれるのは、「いつの分から新しい料金になるのか」「もう払った分はどうなるのか」です。会員の区分ごとに、適用の時期を先に決めておきます。

会員の区分ごとの適用の考え方(設計の例)
区分新料金の適用同意しない人
月額で自動更新の会員効力発生日以後、最初に来る更新日から。更新日の前日までに解約すれば新料金は適用されない。更新日の前日までに解約。違約金や手数料は取らない。
月謝を前納した月前納済みの月は旧料金のまま。次の月から新料金。前納済みの月の末まで受講できる。
購入済みのレッスンチケット・回数券購入時の料金のまま、有効期限まで使える。新料金は、値上げ後に購入する分から。未使用分は、規約のとおり単価で返金して利用をやめられる(日本語レッスンの規約の例)。
期間と総額が決まったコース(語学など特定継続的役務提供の対象)期間の途中では上げない。契約書面に役務の対価の額を記載しているため、書面と実際の料金が食い違わないようにする(特定商取引法42条2項2号)。次の契約から新料金。中途解約の定めのとおり(語学教室の法定書面・クーリング・オフ・中途解約)。
年額の会費・運営管理費期間の途中では上げない。更新時から。更新しない選択ができるよう、更新の案内を早めに出す。
入会金・事務手数料新しく入会する人から。すでに入会した人には関係しない。—
個別に決めた特別料金・優遇個別の合意の内容による。変えるなら、その人と合意し直す。合意が得られなければ、従前の条件の期間満了まで。

表は設計の例です。実際の扱いは、規約の定めと、会員ごとの契約の内容で決まります。

退会の機会に費用をかけないことも大切です。値上げに同意しない人の退会について、違約金や手数料を取る定めは、解除に伴う違約金として、同種の契約の解除に伴い事業者に生じる平均的な損害を超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。値上げを理由とする退会は、会員の側に落ち度のない退会なので、通常の退会の予告期間(たとえば前月の何日まで)を適用すると、値上げの案内から実際に退会できるまでの間に、新料金の引落しが先に来てしまうことがあります。値上げを理由とする退会は、新料金の初回の引落しの前日までに申し出れば足りる、と特別に書いておくと、このずれをなくせます(退会の締め日の考え方は休会・退会・除名と会員どうしのルール)。

表示も同時に直します。通信販売の形で申込みを受けている教室は、特定商取引法に基づく表記の「役務の対価」の欄(同法11条1号)と、申込みの直前の確認画面の表示(同法12条の6第1項)を、新料金の適用開始日に合わせて更新します。旧料金のページが残っていると、新旧の料金のどちらが契約の内容かが争いになります。

無料から有料に切り替える場合は、値上げと別に考えます。入会金だけで月額は無料の会員制サロンの利用契約書には、「将来、料金体系を変更する場合は、変更の内容と施行日を事前に通知し、異議のある会員は施行日前に退会することでこれを拒否できる」という定めがありました。通知と退会の道を置いた点は評価できますが、無料の契約をした会員にとって、有料化は契約をした目的や前提を変える大きな変更です。規約の変更の制度(民法548条の4第1項2号)で合理的と認められるかは、無料だった期間の長さ、有料化の理由、会員が受ける内容の変化によって分かれます。確実なのは、既存の会員には個別に新しい条件を示して同意をもらい、同意しない会員には従前の無料の範囲で続けるか、退会してもらうかを選んでもらう方法です。新規の入会者には、最初から有料の条件で申し込んでもらいます。

値上げと同時に見直す7つの項目

値上げは、規約全体を読み直すきっかけになります。ただし、料金に加えて他の条件も変えるときは、変える点を隠さず、一覧にして示します。値上げの案内と同じ書面で、キャンセルの締め切りや退会の条件を黙って変えると、「値上げと同時に不利益を重ねられた」という受け取り方になり、変更の合理性の判断でも不利に働くおそれがあります。見直す項目の目安は次の7つです。

値上げのときに規約で見直す項目
項目見直すこと詳しく書いたページ
1. 料金と適用開始日新料金を別表に切り出して、規約本文は「別表のとおり」とする。適用開始日は日付で書く。税込か税別かを書類のすべてで統一する。このページ
2. 支払・前納・滞納支払の時期と方法、前納の月数、引落しができなかったときの扱い。遅延損害金を置くなら年14.6%以内(消費者契約法9条1項2号)。月謝・会費・入会金・チケットの返金設計
3. キャンセル・振替締め切りの時刻、1回受講扱いにする場合とその理由、振替の期限と回数。振替・休講と、最少催行人数・中止
4. 休会・退会・長期欠席届出の方法と締め日、休会の上限と費用、長く予約がない会員を退会扱いにする定め。休会・退会・除名と会員どうしのルール
5. 送迎・教室内の安全お迎えの場所、待機の場所、到着・帰宅の連絡。安全のためのお願いとして書く。事故・けが・危険の引受けと免責
6. 写真・個人情報掲載の可否を選ぶ欄、利用目的、撤回の方法。撮影・録画・肖像・配信の同意
7. 守りの条項反社会的勢力の排除、合意管轄、定めのない事項の協議。事業者に偏った条は、消費者との関係で効力が認められないことがある。教室・イベントの書類一式と契約の成立

子ども向けの英会話教室の受講規約(新料金を記載した版)と入会申込書を整える場合は、料金表を規約本文に埋め込まず、別表にして版数と施行日を付ける方法が使いやすくなります。次の改定のときに、規約本文を触らず別表だけを差し替えれば済み、変更の条の手順も、別表の差替えに絞って回せます。

周知・同意・記録:値上げの手順と、ヒヤリングで確かめること

手順は、「決める→知らせる→聞く→受け付ける→記録する」の順に、日付を逆算して組みます。規約に書いた予告期間(たとえば30日前)は、教室自身を拘束します。掲載や通知が遅れて予告期間を守れなくなったときは、適用開始日を後ろにずらします。

値上げの手順(適用開始日から逆算する例)

  1. 決める新料金・適用開始日・変更する条の一覧を決める。適用開始日は、更新日または月初めに合わせる。
  2. 知らせる(予告期間の前まで)規約に書いた日数以上前に、掲示・メール・連絡アプリなど複数の方法で、変更後の内容と効力発生日を知らせる。同じ文面を残す。
  3. 聞く質問の受付の期間を決める。変更の理由、値上げの幅、同意しない場合の退会の方法を、同じ答えで返せるよう文面にする。
  4. 退会の受付を締め切る新料金の初回の引落しや集金の前の日を、値上げを理由とする退会の最終日にする。
  5. 同意書を回収する新規約の同意書に署名をもらう。回収期限を決め、未回収の人には期限の前に再度案内する。
  6. 記録する知らせた日・方法・文面、同意を得た日と版、退会した人の日付を、会員ごとに残す。

期限を切らない同意書の回収は、集まりきらずに終わりがちです。回収の期限は、案内と同じタイミングで知らせます。

個別の同意をもらう場合の連絡(同意する旨、退会する旨など)は、相手に届いた時点で効力が生じます(民法97条1項)。連絡を受ける窓口と方法を、案内に一つに絞って書いておくと、「送ったのに届いていない」という行き違いを避けられます。

ヒヤリングで確かめること 料金を改定するとき

  1. 今回の改定で、料金のほかに変える条はありますか(キャンセル、退会、送迎、写真など)。料金以外も変えるなら、変更点の一覧を作り、同意書に添付します。
  2. 規約に、変更の条はありますか。通知の日数と方法はどう書かれていますか。書かれた日数を守れる日程を組みます。変更の条がなければ、個別の同意を中心に進めます。
  3. 会員の中に、前納している人、チケットを持つ人、期間を決めたコースの人、無料の会員はいますか。区分ごとに適用の時期と扱いを決めます。
  4. 会員の契約者は誰ですか(本人、保護者)。18歳未満の生徒本人が署名する運用はありますか。同意書の署名者を決めます(後の節)。
  5. 同意しない人が出たとき、続けてもらう条件がありますか。退会の受付はどの方法ですか。新料金の前の日までに退会できる道を用意します。
  6. 値上げの理由は、どのように説明しますか。理由は変更の必要性の説明になり、会員への案内文の中心になります。

子どもが通う教室:保護者へのお知らせと、署名をもらう人

子どもが通う教室では、契約の相手は保護者であることが多く、値上げの説明も同意書の署名も、保護者に向けて行います。年齢は18歳で成年になります(民法4条)。未成年の生徒本人が単独でした契約は、法定代理人の同意がなければ取り消すことができるため(同法5条1項・2項)、生徒本人だけが署名した同意書を、保護者の同意の代わりに扱うのは避けます。成年(18歳以上)の生徒が自分で契約している場合は、本人に説明して署名をもらいます。契約者をどちらにしているかは、入会のときの書類で確かめます(未成年・保護者・家族受講と健康の申告)。

お知らせは、理由、新しい料金と適用開始日、今回変える他の点、新しい規約の同意書の提出期限、同意しない場合の退会の方法、の順に書くと、保護者が読んで必要なことが一度に分かります。次は、骨組みの例です。

文例保護者へのお知らせ文(骨組みの例)

  1. いつもお世話になっております。◯◯教室です。教室の運営にかかる費用が上がっており、これまで工夫を重ねてまいりましたが、◯月◯日のレッスンから、月謝を改定させていただくことになりました。
  2. 新しい月謝は、クラスごとに別紙の料金表のとおりです。◯月分までにお支払い済みの月謝は、そのままお使いいただけます。購入済みの回数券は、有効期限まで現在の料金でお使いいただけます。
  3. あわせて、レッスンの前日のキャンセルのご連絡の締め切りを◯時までに変更します。変更する点は、別紙の新旧対照表にまとめました。
  4. 新しい規約にご同意いただける場合は、同意書にご署名のうえ、◯月◯日までにご提出ください。ご同意いただけない場合は、◯月◯日までにご連絡いただければ、退会のお手続きをいたします。退会に手数料はかかりません。
  5. ご不明な点は、レッスンの後にお声がけいただくか、◯◯までご連絡ください。

理由を一言そえ、日付で書き、同意しない場合の道を同じ文面の中で示します。説明は、変更点を口頭でもひとこと伝えたうえで署名をもらうと、読まずに押印する形を避けられます。

ご相談と回答 値上げの案内で聞かれること

長く通っている会員にも、同じ新料金を適用してよいですか。

適用してかまいません。規約の変更の条にもとづく場合は、合理性の判断で、必要性と上げ幅の相当性、予告期間、退会の道が見られます。長く通う会員だけを据え置く、期間を区切って段階的に上げるといった方法を、教室の方針として選ぶこともできます。その場合も、扱いを区分ごとに文書で示します。

同意書を出してもらえない会員がいます。

規約の変更の制度で変える場合は、同意書がなくても変更は有効になり得ますが、記録としては弱くなります。回収期限の後に再度案内し、それでも出ないときは、案内を送った日と方法の記録を残します。個別の合意で変える対象の会員は、同意がなければ新料金を適用できず、従前の条件で続けるか、契約を終えるかを選んでもらいます。

値上げを理由に退会する会員に、最後の月の月謝を請求できますか。

新料金の前の日までに申し出た退会は、新料金の月の月謝を請求しない扱いにします。規約に、値上げを理由とする退会の最終日を書いておきます。

起きがちなこと

よくあるご質問

規約に変更の条がなくても、月謝を値上げできますか?

できますが、方法が変わります。変更の条がなければ、規約の変更の制度(民法548条の4)で変える際に、変更をすることがある旨の定めがないことが合理性の判断で不利に働くため、一人ひとりに新しい条件を示して同意をもらう方法を中心にします。今回の改定で変更の条を置いておくと、次の改定から手順を使えます。

値上げは、どれくらい前に知らせればよいですか?

法律に日数の決まりはありませんが、民法は効力発生時期を定めて周知することを求めています(548条の4第2項)。教室の規約に30日前などと書いたら、その日数を守る必要があります。月謝の締め日や引落し日と合わせて、会員が退会するかどうかを考える時間が残る日程を組みます。

前納した月謝や、買ったチケットにも新料金を適用できますか?

適用しない設計が安全です。前納した月の分は旧料金のままにし、購入済みのチケットは購入時の料金のまま有効期限まで使えるようにしておくと、すでに支払った会員の不満を避けられます。新料金は、更新日以後の期間と、値上げ後に購入する分から適用します。

無料だったサービスを有料にするときは、値上げと同じ手順でよいですか?

同じにはできません。無料の契約をした会員にとって、有料化は契約の前提が変わる大きな変更なので、規約の変更の制度で合理的と認められるかは慎重に見ます。既存の会員には個別に条件を示して同意をもらい、同意しない会員は従前の範囲で続けるか退会するかを選んでもらう方法が確実です。

子どもの生徒が自分で同意書に署名しても、有効ですか?

未成年の生徒が単独でした契約は、法定代理人の同意がなければ取り消すことができます(民法5条1項・2項)。保護者が契約者の教室では、保護者に説明して署名をもらいます。18歳以上の生徒が自分で契約している場合は、本人の署名で足ります。

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