発表会・行事の写真・動画の販売

契約の相手と代金を払う人が違う三者の構造を整理し、著作権の条は絞って書き、子どもの写真は個人情報として扱います。発表会の動画には曲と生徒の実演の権利も重なります。

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撮影者に報酬を払わない契約に、業務委託のひな型の報酬条が残っていると、読んだ教室の担当者は「撮影料を払うのか」と混乱します。

このページの要点

  • 教室が代金に関与しない型では報酬の条を置かず、販売価格の協議、改定の手続、年度単位の期間を書く。販売者が誰かを保護者に分かるようにする。
  • 写真の著作権は撮影者に生じる。先生が撮った写真は著作者が教室になる場合があり、入口ごとに権利を分ける。書くなら三点(私的利用の範囲、集合写真の転用、教室のHP利用)。
  • 発表会の動画は、曲の利用許諾、振付、生徒の実演の同意が別に要る。録画の許諾の場面で、販売・配信まで含めて同意を取る。
  • 顔の写った写真は個人情報。利用目的の明示、名簿の渡し方、データの管理、写りたくない家庭の申出の手順を契約に書く。

結論:契約の相手と代金を払う人が違う三者の構造を先に整理し、著作権の条は絞り、子どもの写真は個人情報として扱う

発表会、運動会、卒業式、遠足などの行事の写真や動画を、撮影者が撮り、ネットの販売ページに並べ、保護者が選んで買う。教室や園、学校は、撮影を認めて行事を記録してもらい、保護者は自分の子の写真を手に入れる。この形の事業の契約書は、普通の「撮影を依頼する契約」とは組み立てが違います。契約を結ぶのは教室(主催者)と撮影者ですが、写真を買ってお金を払うのは、その契約の当事者ではない保護者だからです。さらに、商品に写っているのは子どもで、デジタルの写真は買った人が簡単にコピーして配れます。

先に結論を五つ挙げます。①教室が写真の代金を受け取らない型では、報酬の条を置かない。代わりに、販売価格の決め方、改定の手続、契約期間を書きます。②写真の著作権は、契約書に書かなくても撮影した人に生じる。教室の先生が撮った写真は別の系統になることがあり、権利の出どころを入口ごとに確かめます。③著作権の条は「あえて書かない」選択もあるが、書くなら三点に絞る。購入者の私的な利用の範囲、集合写真の転用、教室のホームページでの利用です。④発表会の動画には、写真にない権利が重なる。演奏や踊りの曲、振付、生徒の実演です。⑤子どもの写真は個人情報であり、写りたくない家庭の手順を先に決める。

このページは、教室の側と撮影者の側の両方が使えるように、契約の組み方を整理します。素材は、ダンス・体操のスタジオの会員規約の発表会の配信・掲載の条、子ども向け英会話教室の入会申込書の写真・動画の掲載の可否欄のほか、行事の撮影・販売を事業にする撮影者を想定した契約書の設計の検討です。教室の写真の掲載同意の取り方そのものは撮影・録画・肖像・配信の同意で扱っており、ここは「販売」という事業の契約に絞ります。

三者の構造:教室・撮影者・保護者の契約と、お金の流れ

最初に決めるのは、誰が販売者か、お金が誰の手を通るか、です。型は三つに分けて考えられます。

行事の写真・動画の販売の三つの型
型契約とお金の流れ販売者と窓口教室が決めること
1. 撮影者が販売し、教室は代金に関与しない教室と撮影者が、撮影の許可と協力の契約を結ぶ。保護者は撮影者の販売ページで購入し、代金は撮影者に入る。教室は撮影料を払わない。販売者は撮影者。購入後の返品・不具合の窓口も撮影者。撮影の日程と範囲、保護者への案内、同意の取得、販売価格の協議の方法、契約期間。
2. 教室が撮影者に撮影を発注する教室が撮影者に撮影料を払う。写真は教室のものとして保護者に配布する、または教室が保護者に有償で頒布する。有償で頒布するなら、教室が販売者になる。撮影の仕様、撮影料、権利の帰属と利用の範囲、教室が販売者として行う表示。
3. 撮影者が販売し、売上の一部を教室に還元する型1と同じ流れで、売上の一定割合を教室に支払う(協力金、謝礼など)。販売者は撮影者。教室は還元の受領者。還元の算定の基準、報告と支払の時期、売上の確認の方法。教室が宣伝に関わりすぎないこと。

教室が保護者から代金を集めて撮影者に渡す集金代行型もありますが、返金や不具合の苦情の窓口が教室にもなり、預かった代金の管理も必要になるため、設計が重くなります。

型1の契約は、普通の業務委託の契約書のひな型にそのまま当てはめると、実態に合わなくなります。撮影者は教室から報酬を受け取らず、収入は保護者の購入代金から生まれるからです。業務委託のひな型にある報酬の条を残したままにすると、読んだ教室の担当者が「撮影料を払うのか」と混乱します。組み替えると、次のようになります。

組み替えの例 教室と撮影者の契約(型1)

報酬

改訂前教室は、撮影者に対し、本件撮影の対価として、別紙の委託料を支払う。
改訂後教室は、撮影者に対し、本件撮影の対価を支払わない。撮影者の収入は、保護者等への販売代金によるものとする。

理由お金を受け取らない契約では、実態に合わない報酬の条を残さない。

販売価格

改訂前(定めなし)
改訂後保護者等に販売する商品の種類と価格は、撮影者が教室と協議して定める。原材料や社会情勢の変動で改定する必要が生じたときも、協議して定める。

理由写真販売は保護者サービスの一部で、価格は教室の評判にもかかわる。撮影者が一方的に決める形にしない。

期間

改訂前契約期間は1回の撮影の日から納品まで。
改訂後契約期間は1年とし、更新しない旨の申出が期間満了前の所定の期限までにないときは、さらに1年更新する。申出の期限は、翌年度の行事の準備に間に合う日とする。

理由行事は年間のカレンダーに沿って巡る。年度単位で続く事業には年度単位の期間が合う。

型1の契約書で、報酬の条の代わりに置く条は、このあたりです。

条文例教室と撮影者の協力の契約(型1)の骨組み

  1. 撮影者は、教室の行事(別紙の行事)について、教室の許可を得て、会場内の所定の範囲で撮影し、撮影した写真及び動画(以下「撮影データ」という。)を、保護者等に販売することができる。
  2. 教室は、撮影者に対し、本契約に基づく報酬を支払わない。撮影者は、教室に対し、会場の使用料その他の費用を請求しない。
  3. 保護者等に販売する商品の種類及び価格は、撮影者が教室と協議して定める。改定するときも同様とする。
  4. 教室は、保護者等に対し、撮影者による撮影及び販売の旨、販売に関する撮影者の連絡先、購入した撮影データの利用についての注意を、別に定める文面により通知する。
  5. 教室は、保護者等から撮影データの掲載を望まない旨の申出があったときは、撮影者にその旨を通知し、撮影者は、該当する撮影データの販売ページへの掲載を停止する。
  6. 本契約の期間は1年とし、いずれの当事者も期間満了の◯日前までに更新しない旨を申し出ないときは、さらに1年更新する。

保護者への通知と、掲載を望まない申出の手順は、契約書本体の条と、教室の入会書類の両方に置きます。◯の日数は、教室の翌年度の行事の準備に合わせて決めます。

写真の著作権:誰に生じ、契約書にどこまで書くか

写真は著作物の一つです(著作権法10条1項8号)。著作物を創作した人が著作者で(同法2条1項2号)、著作者は著作権と著作者人格権を享有し(同法17条1項)、その享有には登録などのいかなる方式も要りません(同条2項)。つまり、撮影者が撮った写真の著作権は、契約書に何も書かなくても、原則として撮影者にあります。「契約書に書いていないと権利がないのでは」という心配は、出発点が逆です。問題は、持っている権利を契約書でどう扱うか、あるいは扱わないか、のほうにあります。著作者人格権(公表する、氏名を表示する、勝手に改変されないといった権利)は、譲渡できません(同法59条)。

ここで見落としやすいのは、写真の入口が一つではないことです。事業として派遣された撮影者が撮る写真のほかに、教室の先生が日常のレッスンや行事の中で撮りためた写真の提供を受けて販売する、というルートがあります。先生が撮った写真は、著作者が、撮った人ではなく教室(使用者)になる場合があります。法人その他の使用者の発意に基づき、その業務に従事する者が職務上作成し、使用者が自己の名義で公表する著作物は、契約や勤務規則に別段の定めがなければ、使用者が著作者になるからです(同法15条1項)。ただし、これは四つの要件がそろったときの話です。業務委託で来ている講師が撮った写真は、教室との関係の実態によって、この規定に当たるかが変わります。保護者が撮った写真は、撮った保護者のものです。

契約書では、この入口ごとの権利の流れを分けて書きます。撮影者が撮影・編集した素材は、撮影者に帰属すると確認する。教室から提供を受ける素材は、販売とそれに必要な複製・加工について、教室の許諾を受ける。提供を受けた素材を「撮影者のもの」と書いてしまうと、実態と合いませんし、許諾の整理がないまま売ると、足元の権利関係があいまいなまま商売が走ります。

この事業では、著作権を譲渡する設計にしないのが基本です。納品物の権利を発注者に渡す受託の契約では、著作権を譲渡する条(翻案権等が特掲されていないと、これらの権利は譲渡した人に留保されたと推定されます。著作権法61条2項)や、著作者人格権を行使しない特約が定番ですが、同じ写真を多数の保護者に売り続けることで成り立つ事業は、権利を手放せば商売の土台がなくなります。他の業界のひな型から条文を借りるときに、最も事故が起きやすい部分です。

次に、著作権の条を書くかどうかです。「著作権についての条項も入れてほしい」という希望は、ほぼ毎回出ますが、書けば守りが厚くなるとは限りません。

著作権の条を書くか、書かないか
選択利点弱点
書かない法律上の原則(撮影者に帰属)のまま置ける。条項を書いたことをきっかけに、教室側から「権利をこちらに渡してほしい」「元データも全部ほしい」という要望が出るのを避けられる。コピーが利く商品の購入後の扱いについて、教室にも保護者にも何のメッセージも届かない。権利が侵されたときに、何も言っていなかったという弱みになる。
書く(絞って書く)購入者の利用の線を先に示せる。教室が保護者へ周知する根拠になる。書き方を誤ると、交渉の論点を自分から出すことになる。譲渡と読める書き方をすると、事業の土台を失う。

書く場合は、次の三点に絞ります。

  • 購入者の私的な利用の範囲。個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使うために複製することは、著作権法30条1項が認めています。自宅のパソコンに保存する、バックアップを取る、プリントして飾る、は範囲内です。SNSなど誰でも見られる場所への投稿は公衆送信にあたり(同法23条1項)、私的使用の範囲を出ます。配る相手が広がるほど、「限られた範囲」を出る場合が増えます。保存もプリントも自由に、ただし配る・売る・公開するは超えない線、と先に許される範囲を示すと、守られやすくなります。
  • 集合写真の転用。30人のクラスの集合写真を、保護者の一人が買って全員に配れば、残りの購入は消えます。悪気のない配布が積み重なると、写真が売れない構造ができます。第三者への頒布や転送の禁止を、購入の条件として書きます。
  • 教室のホームページや広報誌での利用。教室が、プロの撮った行事の写真を、ホームページや園便り、入会案内に使いたくなる場面があります。無償で公開されると、販売している商品が無料で見られることになり、ウェブに載った写真は、そこから先の複製を止められません。禁止ではなく、「使うときは事前に協議して決める」とすると、撮影者にとっても自分の仕事が世に出る機会として条件を整えて応じる道が残ります。引用(同法32条1項)の例外は、公正な慣行に合致し、報道・批評・研究その他の引用の目的上正当な範囲内に限られるため、行事の紹介記事に写真を載せる使い方が当てはまるかは個別に分かれます。毎回の議論を避けるために、協議の入口を契約書に作ります。

契約を結ぶ教室に定めを置いても、写真を買う保護者はこの契約の当事者ではないので、直接の義務は生じません。そこで、保護者に届く経路を三つ用意します。

購入者の利用ルールを保護者に届ける経路
経路誰が内容の例
教室からの周知教室(契約書で周知の役割を負う)お便り、連絡アプリ、配布物で、購入した写真は家庭内での利用をお願いする旨を知らせる。撮影者が保護者がそのまま読める短い文面を用意して教室に渡すと、実際に動く。
販売ページの規約撮影者購入の手続の中で、転載・転売・第三者への頒布の禁止に同意してもらう。ルールが最も確実に届く場面。
購入画面の注意書き撮影者購入の直前に、短い一文で利用の線を示す。知らずに線を越える人を出さないことが狙い。

契約書だけで保護者を縛ることはできません。どの書面がどの人に届くかを地図にして、ルールの通り道を設計します。

発表会の動画には、写真にない権利が重なる

発表会の動画を販売するときは、写真の著作権の整理に加えて、舞台で演じられているものの権利を確かめます。動画は、映画の効果に類似する視覚的または視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、物に固定されている著作物として、映画の著作物に含まれます(著作権法2条3項)。映画の著作物は、複製物による頒布の権利(同法26条)が認められ、ネットでの配信は公衆送信(同法23条)にあたります。この動画に映っているものについて、次の権利者がいます。

発表会の動画で確かめる権利
対象権利者確かめること
演奏・歌・音楽に使う曲曲の作詞者・作曲者などの著作権者(管理団体に委ねていることが多い)録画して販売・配信するには、曲の利用の許諾が要る場合が多い。発表会を営利を目的とせず観客から料金を受けず出演者に報酬を払わないで行うときは、公に演奏することが認められる場合がある(同法38条1項)が、この規定は上演・演奏・上映・口述について定めたもので、録画して複製し販売することまでは含まない。
踊りの振付振付を創作した人(舞踊の著作物。同法10条1項3号)講師の創作した振付を販売する動画に残すときは、講師との間で利用の範囲を決める。
生徒・講師の演技・演奏実演を行った生徒・講師(実演家。同法2条1項3号・4号)実演を録画するには実演家の許諾が要る(同法91条1項)。生徒が未成年なら、保護者の同意を得る。
会場・舞台施設の管理者撮影・販売の許可、撮影禁止のルール、撮影者の立入りの範囲。
映り込む人他の生徒、観客、保護者目立つ映り込みの扱い(外す、ぼかす)、観客席の撮影の可否。

実演家の権利には、確認しておきたい仕組みがあります。実演家の許諾を得て映画の著作物に録音・録画された実演には、その後の録音権・録画権が及ばないとされ(著作権法91条2項。映像を伴わない録音物に録音する場合を除く)、許諾を得て録画された実演には、ネット配信(送信可能化権。同法92条の2第2項1号)や、複製物を売る権利(譲渡権。同法95条の2第2項1号)も及びません。この仕組みのもとでは、最初に録画する場面での許諾が実質的な分かれ目になります。録画の許諾を求めるときに、撮影だけでなく、保護者への販売や配信まで含めて説明し、同意を得ておかないと、後から保護者との間で「販売することは聞いていない」という行き違いが生じます。法律上の権利が及ぶかどうかとは別に、契約と入会書類の側で同意の範囲を明確にしておくことが、トラブルを防ぎます。

実務では、入会のときの書類に、発表会の撮影・販売・配信について、写真の掲載の同意とは別の欄を置き、発表会の募集のたびに、今回の撮影者、販売の方法、販売ページを見られる人の範囲を知らせます。同意しない場合も発表会には参加できるようにし、動画に映らない位置で出演してもらう、販売する動画から該当の場面を外す、といった対応を案内に書きます。ダンス・体操のスタジオの会員規約には、発表会のSNS配信について、申出がない限り同意があったものとみなす形がありました。申出方式は同意の有無で争いになりやすく、販売する写真・動画には、可否を選んでもらう方式のほうが向いています(詳しくは撮影・録画・肖像・配信の同意)。発表会の参加費・衣装代の扱いは、発表会・ライブ・大会・コンテストの参加規約で扱います。

子どもの写真は個人情報:同意、データの管理、写りたくない家庭

顔が写った写真や動画は、特定の個人を識別できる情報として、個人情報にあたります(個人情報保護法2条1項1号)。氏名やクラス、持ち物の名前と結びつくなら、なおさらです。行事の撮影・販売では、教室、撮影者、販売システムの運営会社、編集や印刷を請け負う会社が、それぞれこの情報を扱うため、次の点を契約書と入会書類に反映させます。

  • 利用目的を特定して明示する。個人情報の取得にあたっては、利用の目的をできる限り特定し(同法17条1項)、契約書その他の書面で本人から直接取得するときは、あらかじめ利用目的を明示します(同法21条2項)。入会申込書や同意書に、「行事の撮影、保護者への写真・動画の販売の案内」を書きます。
  • 教室から撮影者に名簿を渡すか。氏名とクラスの名簿を撮影者に渡す場合、撮影者がそれを自分の販売のために使うなら、委託とは言いにくく、個人データの第三者への提供として、あらかじめ本人の同意が必要かを検討します(同法27条1項)。名簿を渡さず、写真に名前を付けない運用にすれば、この論点を小さくできます。撮影者が教室のために編集や整理だけをする委託なら、教室は委託先に対する必要かつ適切な監督を行います(同法25条)。
  • データを安全に管理する。個人データの安全管理のための措置は、事業者の義務です(同法23条)。撮影データは厳重に保管し、業務に必要な範囲でだけ複製し、従業員に扱わせる場合は必要のある者に限ります。編集や印刷・製本の外部委託では、再委託先にも同じ義務を守らせ、再委託先の行為について撮影者が責任を持つと書きます。契約が終わったときは、複製を含めてすべて消去することも書いておきます。

被写体の側の手当ても必要です。著作権は撮影者の権利ですが、写った子どもと家族には、肖像と私生活の利益があります。肖像権という名前の条文はなく、判断は個別の事情によりますが、事業としては「載せてほしくない」という申出に応じる手順を先に決めておきます。事情があって、子どもの写真を販売ページに載せたくない家庭は、どの教室にも一定数あります。申出の窓口(教室)、該当の子が写った写真を販売から外すこと、販売ページの閲覧をその教室の保護者に限ること、掲載の前に教室の確認を挟むこと、のうち、どこまでやるかを決めておきます。申出があってから協議するより、契約の段階で手順を共有しておくほうが、保護者への説明も安定します。すでに購入された写真は回収できないため、その点も案内に書いておきます。

購入者のSNS投稿の禁止は、著作権の問題であると同時に、写っている他の子と家族の問題でもあります。何を許して何を止めるかの正解はひとつではありませんが、「写っているのは自分の子だけではない」を軸に決めると、保護者にも説明のつく線が引けます。

撮影者に委託するときの契約:子どもに近づく撮影の約束と報酬

教室が撮影者に撮影を発注し、撮影料を払う型(型2)や、還元を受ける型(型3)では、教室と撮影者の関係が業務委託になります。個人のカメラマンに委託するときは、フリーランス法も確かめます。従業員を使用しない個人は、特定受託事業者にあたります(フリーランス法2条1項)。業務委託をした事業者は、給付の内容、報酬の額、支払期日などを、書面または電磁的方法で直ちに明示しなければなりません(同法3条1項)。これは、教室に従業員がいなくても対象になります(同法2条5項)。報酬の支払期日を給付を受領した日から60日以内に定める義務(同法4条1項)は、従業員を使用する個人、または二以上の役員がある、もしくは従業員を使用する法人(特定業務委託事業者。同法2条6項)が対象です。カメラマン・動画の外注の一般論は他の解説に譲り、ここでは行事の撮影に固有の条を挙げます。

撮影者との契約に置く条
条書くこと
撮影の範囲と立入り撮影する行事・日時・場所・人数。立入りを認める区域(更衣・トイレ・控室は撮影・立入りを禁止)。控室の出入りは教室の許可制。
子どもへの接し方個別に声をかけて撮影しない、連絡先の交換をしない、撮影者の同行者を事前に届け出る、名札を着用する。保護者や生徒が不安を感じたとき、教室が撮影を止められること。
撮影データの管理保管の方法、複製の範囲、持出しの禁止、再委託先の管理、契約終了時の消去。紛失・流出が起きたときの報告の期限。
権利の帰属と利用撮影者が撮影・編集した素材は撮影者に帰属。教室が使える範囲(教室内の掲示、広報誌、ホームページなど)と、使うときの手順。教室の提供素材は教室の許諾の範囲で使う。
天候・中止・欠席行事の中止・延期のときの扱い、撮影者が当日に撮影できなくなったときの代替、再撮影の可否。
事故・損害撮影中の機材の破損や、会場の設備の損傷の責任。賠償の上限を置く場合は、故意または重大な過失による場合を除くと明示する(事故・けが・危険の引受けと免責)。
再委託編集・印刷・アルバム制作を外部に出す場合の同意、再委託先への同じ義務の適用。

撮影者の名前と所属、当日の連絡先は、保護者に事前に知らせます。知らない大人が子どもにカメラを向けているという状況は、保護者の不安の最大の原因だからです。講師・スタッフとの契約一般は講師・出演者・スタッフとの業務委託と退任後の名称、行事の会場のルールはスタジオ・教室スペース・予約プラットフォーム・出店で扱っています。

販売の画面と表示、ヒヤリングで確かめること

保護者への販売は、通信販売にあたります。販売する撮影者(または教室)は、広告に、販売価格、代金の支払の時期と方法、引渡しの時期、申込みの撤回や解除に関する事項などを表示します(特定商取引法11条)。申込みの直前の画面には、分量と、これらの事項を表示し、申込みであることを誤認させる表示はしてはなりません(同法12条の6第1項・2項)。プリントやアルバムなどの物の商品は、返品を受けない旨の特約を広告に表示していないと、受け取ってから8日以内は返品できます(同法15条の3第1項)。データの販売でも、返品やキャンセルの扱いを購入画面にはっきり示します。

ここで大切なのは、販売者はだれか、が保護者に分かることです。型1では、販売者は撮影者で、教室ではありません。教室の案内に、販売者の名称と連絡先を書き、「購入や写真の不具合のお問い合わせは販売者へ」と書いておくと、教室が不具合の一次窓口になるのを避けられます。ただし、写りたくない家庭の申出や、行事の中の事故に関する問い合わせは、教室が受けます。窓口をどう分けるかは、契約書と案内の両方に書きます。

ヒヤリングで確かめること 行事の写真・動画を販売するとき

  1. 販売する人は誰ですか。保護者が払う代金は、誰の口座に入りますか。教室が受け取るお金(還元など)はありますか。型1〜3のどれかを決め、報酬の条を置くか、売上の還元の条を置くかが決まります。
  2. 撮るのは、事業として来る撮影者だけですか。先生が撮った写真を販売に出すことはありますか。権利の入口を分け、教室の許諾の条を置くかを決めます。
  3. 発表会の動画も販売しますか。曲は誰が作ったもので、振付は誰が付けていますか。曲の利用許諾、振付の利用の範囲、生徒の実演の同意の手順を決めます。
  4. 生徒・保護者の同意は、入会時に取っていますか。撮影・販売・公開の同意は、分けて取っていますか。同意の取り方を見直し、写りたくない家庭の申出の手順を書きます。
  5. 教室から撮影者に、氏名・クラスの名簿を渡しますか。第三者提供か委託か、名簿を渡さない運用にできるかを検討します。
  6. 販売ページは、誰でも見られますか。教室の保護者だけに限れますか。閲覧の範囲とパスワードなど、安全管理の方法を決めます。
  7. 購入者へのルール(SNS投稿・配布の禁止)は、どの経路で伝えますか。教室の周知、販売ページの規約、購入画面の注意書きの三つを整えます。

起きがちなこと

よくあるご質問

行事の写真を保護者に販売するとき、教室は撮影者からお金をもらえますか?

もらえますが、型によって扱いが変わります。撮影者が保護者に直接販売し、売上の一部を教室に還元する型(型3)は、還元の算定の基準、報告、支払の時期を契約書に書きます。還元を受ける場合も、販売者は撮影者であることを保護者に分かるようにしておきます。

カメラマンが撮った写真の著作権は、教室に渡してもらうべきですか?

同じ写真を多数の保護者に販売し続ける事業では、撮影者が権利を手放すと事業の土台がなくなります。教室が使いたい範囲(教室内の掲示、広報誌、ホームページなど)を定めて、利用を許諾する形が現実的です。教室が撮影料を払って作品として納品を受ける型は別で、その場合は譲渡か許諾かを、報酬との関係で決めます。

購入した写真を、保護者がSNSに載せるのを止められますか?

保護者は契約の当事者ではないため、契約書だけで直接止めることはできません。販売ページの規約への同意、購入画面の注意書き、教室からの周知の三つで伝え、違反があったときは、投稿の削除をお願いする運用にします。個人的な保存やプリントは認められる範囲であることを先に示すと、守られやすくなります。

発表会の動画を販売するのに、曲の許諾は必要ですか?

録画して複製し、販売・配信するには、曲の権利者の許諾が必要な場合が多くあります。営利を目的とせず、観客から料金を受けず、出演者に報酬を払わない発表会で演奏すること(著作権法38条1項)と、その演奏を録画して販売することは別の問題です。曲を管理している団体や権利者に、利用の区分に応じた許諾の手続を確認します。

写真に写りたくない子がいたら、どうすればよいですか?

入会時または行事ごとに、掲載の可否を選んでもらい、申出の窓口を教室に一本化します。該当の子が写った写真を販売から外す、販売ページの閲覧を教室の保護者に限る、掲載前に教室の確認を挟む、といった手順を、教室と撮影者の契約に書いておきます。すでに購入された写真は回収できないことも、案内に書いておきます。

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